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伊藤博文の憲法義解〜第四条〜

 第四条になります。

 

第四条 天皇は国の元首にして統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ
(天皇は国の元首であり、統治権をすべて掌握し、この憲法の条文により統治を行う)

 

現代語訳
 恭んで考えるには、統治の大権は天皇が歴代天皇から承継し、これを子孫に伝えていく。
立法や行政を統べることは、すべて国家を治め、臣民をいたわり安らかにするものであって、
至尊たる天皇のもと一つに、すべて綱領を集めるのは、
例えば人の身体には四肢と多くの骨があるが、精神の連絡経絡はすべてその源を脳に取ることと同じである。ゆえに大政の統一は、個人の心が二つや三つないのと同じである。
ただし、憲法を発布し君民がともに守る法典とし、その条文に従って誤らず忘れないような固い意志を明らかにされるのは、
すなわち、天皇自身天から命じられた職務であることを重く受け止め、世が変わっても永遠に受け継がれ大成する者である。
思うに、統治権を総攬するのは、主権の実体ある。「憲法の条規に依り之を行ふ」は運用である。実体があって運用がなければ、専制に陥って統治権は効力を失う。運用があって実体がなければ、散漫になってしまい効力を失う。
附記:ヨーロッパで最近政治理論を論ずる者の説が言うには、「国家の大権は大別して二つである。立法権と行政権である。それから司法権は行政権の支派である。この三権はそれぞれの機関の補佐によって行うことになるが、ひとえにすべて元首を源とする。
思うに、国家の大権は国家の意思を体現した元首が統べることがなければ、有効に機能することはできなくなる。憲法はすなわち国家の各部機関に向けて適当な役割を与え、その連絡機能を持たせるものであって、君主は憲法の条文によって、その天から命じられた職務を行う者である。
それゆえに古代ローマで行われた、無制限に権力を握っていることは、立憲主義ではない。それから西暦十八世紀末に行われた三権を分立して君主は行政権を行使するという説は、立憲国家の正当な解釈を誤るものである」と。
この説は我が憲法の主義と合致するものであるので、ここに附記して、参考に当てる。

 

口語訳
 恭て按ずるに、統治の大権は天皇これを祖宗に承け、これを子孫に伝う。
立法・行政百揆のこと、およそもって国家に臨御し、
臣民を綏撫(すいぶ、慰めいたわる)するところの者、
一に皆これを至尊に総べてその綱領を攬(と)らざることなきは、譬(たと)へば、人身の四支百骸ありて、
而して精神の経絡(けいらく)は総て皆その本源を首脳に取るが如きなり。
故に大政の統一ならざるべからざるは、宛も人心のニ三なるべからざるか如し。
ただし、憲法を親裁してもって君民共に守るの大典とし、
その条規に遵由して愆(あやま)らず遺(わす)れざるの盛意を明かにしたまふは、
即ち、自ら天職を重んじて世運と共に永遠の規模を大成する者なり。
けだし統治権を総攬するは主権の体なり。憲法の条規によりこれを行ふは主権の用なり。
体有りて用無けれはこれを専制に失う。用有りて体無けれはこれを散慢に失う。
 (附記)欧州輓近(ばんきん、近頃)政理を論する者の説に曰く、
国家の大権大別して二となす。曰く、立法権・行政権。
而して司法の権は実に行政権の支派たり。
三権各々その機関の補翼によりこれを行うこと一に皆元首に淵源す。

けだし国家の大権はこれを国家の覚性たる元首に総べざれば、
もってその生機を有(たも)つこと能はざるなり。
憲法は即ち国家の各部機関に向て適当なる定分を与へ、その経絡機能を有たしむる者にして、
君主は憲法の条規によりてその天職を行う者なり。
故に彼のローマに行はれたる無限権勢の説は固より立憲の主義に非ず。
而して西暦第十八世紀の末に行はれたる三権分立して君主はとくに行政権を執るの説の如きは、
また国家の正当なる解義を謬る者なり、と。
この説は我が憲法の主義と相発揮するに足る者あるを以て、
ここにこれを附記してもって参考に当つ。

 

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