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伊藤博文の憲法義解〜第二章〜

 第二章臣民権利義務になります。

 

第二章 臣民権利義務

 

口語訳
 第二章は第一章に次ぎ臣民の権利及義務を掲ぐ。けだし祖宗の政は専ら臣民を愛重して名くるに大賓(オオミタカラ)の称をもってしたり。非常赦の時検非違使佐(けびいしのすけ)、囚徒に仰するの詞に、「為公御財(おおみたからとなして)御調物(みつきもの)備進」といえり(江家次第)。歴世の天子即位の日は皇親以下天下の人民を集め大詔を宣(のり)たまうの詞に「集侍(うこなわれる)皇子等(みこたち)、王(おおきみ)、臣(おみたち)、百官人等(もものつかさひとたち)天下(あめのしたの)公民(おおみたから)諸々聞食(きこしめさへ)と詔(の)る」とあり。史臣用いるところの公民の字は即ち『おおみたから』の名称を訳したるなり。その臣民にあってまた自ら称えて御民という。天平六年海犬養宿禰岡麻呂(あまのいぬかいのすくねおかまろ)詔に応ずる歌に、「みたみわれ、いける、しるし、あり、あめつちの、さかゆるときに、あえらく、おもえば」といえるこれなり。けだし上にあっては愛重の意を致し、待つに邦国の賓をもってし、下にあっては大君に服従し自ら視てもって幸福の臣民とす。これ我が国の典故旧俗に存する者にして、本章に掲ぐるところの臣民の権利義務またこの義に源流するに外ならず。抑々(そもそも)中古、武門の政、士人と平民との間に等級を分かち、甲者公権を専有して乙者預からざるのみならず、その私権を併せて乙者その享有をまったくすること能(あた)わず。公民の義、これにおいて減絶して伸びざるに近し。維新の後、屡々(しばしば)大令を発し、士族の特権を廃し、日本臣民たる者始めて平等にその権利を有しその義務を尽すことを得せしめたり。本章の戴するところは実に中興の美果を培殖(ばいしょく)し、これを永久に保明する者なり。

 

現代語訳
 第二章は第一章に続いて臣民の権利及び義務を掲げる。思うに、歴代天皇の政治は、もっぱら臣民を愛し大切にし、「大宝(おおみたから)」と称していた。特赦のときに検非違使を使わして、囚人に申し渡した天皇の仰せの言葉に、「公御財(おおみたから)となし御調物(みつきもの)をたてまつれ」と言った(江家次第)。歴代天皇の即位の日には、皇親以下天下の人民を集めて、大詔を宣べられる言葉には、「集まり侍る皇子たち、王、臣たち、百官の人たち、天下の公民(おおみたから)たち、みな聞きなさいと詔をする」とある。文書を司る役人が用いる「公民」の字はすなわち「おおみたから」の名称を訳したものである。その臣民においては、自ら称えて御民(みたみ)という。天平六年に海犬養宿禰岡麻呂が詔に応えた歌に、「御民われ、生ける験(しるし)あり、天地(あめつち)の、栄ゆるときに、逢えらく念へば」と詠んだのはこれである。
思うに、天皇は上にあって、愛し大切にするという心で、民を国の宝として表し、民は下にあって大君に服従し自らみて幸福な臣民という。これは我が国の故事や風俗にあるもので、本章に掲げる臣民の権利義務もこれを源流とするにほかならない。
そもそも、中世、武門の政治は、武士と平民との間に身分を分け、武士が公権を専有し平民の預からないこととしたのみならず、私権も平民は生まれながら持つことができなかった。公民の意味は、これによってなくなり伸びることがなかった。維新の後に、しばしば大令を発し、士族の特権を廃し、日本臣民である者が初めて平等にその権利を有し、その義務を尽くすことができるようになった。本章に記載するところは、中興の成果を培い殖やして、永久に保ち明らかにするものである。

 

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