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伊藤博文の憲法義解〜第二十一条〜

 第二十一条になります。

 

第二十一条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ納税の義務を有す
(日本臣民は、法律の定める所により、納税の義務がある)

 

口語訳
 納税は一国共同生存の必要に供応する者にして、兵役と均く、臣民の国家に対する義務の一たり。
 租税は古言に『ちから』という。民力を輸(いた)すの義なり。税を課するを『おふす』という。各人に負はしむるの義なり。祖宗既に統治の義をもって国に臨みたまい、国庫の費はこれを全国の正供に取る。租税の法由て来るところ久し。孝徳天皇租・庸・調の制を行い、維新の後地租の改正を行う。これを税法の二大変革とす。その詳なるは志籍に備わるをもって?(ここ)にこれを註明せず。けだし租税は臣民国家の公費を分担するものにして、徴求に供給する献饋(けんき)の類に非ざるなり。又承諾に起因する徳澤(とくたく)の報酬に非ざるなり。
 (附記)仏国の学者はその偏理の見をもって租税の義を論じたり。千七百八十九年ミラボー氏が仏国人民に向て国費を募るの公文に曰く。租税は享る所の利益に酬(むく)ゆる代価なり、公共安寧の保護を得むが為の前払なり、と。エミル・ド・ジラルディン氏は又説を為して曰く。租税は権利の享受、利益の保護を得るの目的の為に国と名けたる一会社の社員より納むるところの保険料なりと。これ皆民約の主義に淵源し、納税をもって政府の職務と人民の義務と互相(たがいに)交換するの物とする者にして、その説巧なりといえども、実に千里の謬(あやまり)たることを免れず。けだし租税は一国の公費にして、一国の分子たる者は均くその共同義務を負うべきなり。故に臣民は独り現在の政府の為に納税すべきのみならず、又前世過去の負債の為にも納税せざることを得ず。独り得るところの利益の為に供給すべきのみならず、その利益を享受せざるもまた、これを供給せざることを得ず。抑々(そもそも)経費はところ及倹省ならむことを欲し、租税は所及薄からむことを欲す。これ固(もと)より政府の本務にして、而して議会の財政を監督し租税を議定するにおける、立憲の要義またこれに外ならず。然るに若(もし)租税の義務をもってこれを上下相酬の市道なりとし、納税の諾否は専ら享くる所の利益と乗除相関(かかわ)る者とせば、人々自らその胸臆に断定してもって年租を拒むことを得む。而して国家の成立危始ならざらむことを欲するも得べからざるべし。近時の論者既に前説の非を弁じて余蘊(ようん、余った部分)なからしめ、而して租税の定義僅(わずか)に帰着するところを得たり。今その一二を挙ぐるに、曰く。租税は国家を保持する為に設くる者なり。政府の職務に酬ゆるの代償に非ず。何となれば政府と国民との間に契約ありて存せざればなり(仏国フォスタン・エリー氏)。曰く。国家は租税を賦課するの権あり。而して臣民はこれを納むるの義務あり。租税の法律上の理由は臣民の純然たる義務に在り。国家の本分とその目的とにおいて欠くべからざるの費用あるに従い、国の分子たる臣民はこれを供納せざるべからず。国民は無形の一体として国家なる自個の職分の為に資需を給すべく、而して各人は従てこれを納めざるべからず。何となれば、各人は国民の一個分子なればなり。彼の国民及各個の臣民は国家の外に立ちその財産の保護を受くる為の報酬なりとして租税の義を解釈するは極めて不是なる謬説なりと(独国スタール氏)。これに記してもって参考に充つ。

 

現代語訳
 納税は、一国において共同し生存するための必要に応じて供出するものであり、兵役と同じく臣民の国家に対する義務の一つである。
租税は古い言葉で「ちから」と言う。民が力を運ぶという意味である。税を課すことを「おふす」と言う。各人に負わせるという意味である。歴代天皇は、すでに統治の意義をもって国にお臨みになり、国庫の費用は全国の正しい供出により取る。租税の法律の由来は久しい。孝徳天皇が祖・庸・調の制度を行い、維新の後に地租改正を行う。これが税法の二大変革である。その詳細は書籍にあるので、詳らかに注釈することはしない。思うに、租税は臣民が国家の公費を分担するものであり、求めに応じて供給する献上物の類ではない。また承諾に起因する恩沢を受ける報酬でもない。
(附記)フランスの学者は、その偏った道理の見方で租税の意味を論じている。千七百八十九年にミラボー氏がフランス人民に向けて国費を募る公的文書にはこうある。「租税は、受けた利益に報いる代価である。公共の安寧の保護を得るための前払いである」と。エミル・ド・ジラルディン氏の説にはこうある。「租税は権利の享受、利益の保護を得る目的のために国と名づけられた一会社の社員より納める保険料である」と。これはすべて社会契約説に淵源しており、納税を政府の職務と人民の義務とを相互交換するものとしており、その説は巧みであるといえども、実に大いなる誤りである。思うに、租税は、一国の公費であり、一国の構成員である者は等しくその共同義務を負うべきである。ゆえに、臣民は現在の政府のために納税するべきものではなく、前世過去の負債のためにも納税せざるを得ない。得られた利益のためにのみ供給すべきだけではなく、利益を享受しなくても供給せざるを得ない。そもそも、経費はできる限り倹約してほしいと思い、租税はできる限り少なくしてほしいと思う。これはもとより政府の務めであり、議会が財政を監督し、租税を議定することは立憲政治の意義にほかならない。それなのに、もし租税の義務を上下が互いに提供し合う取引であるとして、納税の諾否はもっぱら受ける利益との損得勘定によるとするなら、人々は自ら断定して、租税を拒否することができてしまう。そうなれば、国家の成立が危うくならないようにと思っても叶わない。近頃の論者は、前説の非を批判して、そうして租税の定義はようやく落ち着くべきところになった。今、その一つ二つを挙げると、「租税は国家を保持するために設けるものである。政府の職務に報いる代償ではない。なぜならば政府と国民との間に、契約は存在しないからである」(フランスのフォスタン・エリー氏)と。また、「国家は租税を賦課する権限がある。そして、臣民はこれを納める義務がある。租税の法律上の理由は、臣民の純然たる義務である。国家の本分とその目的に欠かせない費用があるのだから、国の構成員たる臣民はこれを供出しなければならない。国民は無形の一体として、国家という自己の職分のために資本を供出しなければならず、そして各人はこれを納めなければならない。なぜならば、各人は国民という国家の構成員であるからである。国民及び各個の臣民は、国家の外にあり、財産の保護を受けるための報酬であるとして、租税の意義を解釈するのは、極めて誤った説である」(ドイツのスタール氏)と。ここに記載して、参考に当てる。

 

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