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伊藤博文の憲法義解〜第三十七条〜

 第三十七条になります。

 

第三十七条 凡て法律は帝国議会の協賛を経るを要す
(すべての法律は、帝国議会の協賛を経る必要がある)

 

口語訳
 法律は国家主権より出る軌範にして、而して、必ず議会の協賛を経るを要するは之を立憲の大別とする。故に、議会の議を経ざる者は之を法律とすることを得ざるなり。一院の可とする所にして、他の一院の否とする所は亦、之を法律とすることを得ざるなり。
(附記)何等の事物は法律を以て定めるを要する。乎の問題に至っては、蓋し、一の例言を以て之を概括し難し。普国の普通法を公布せる勅令に「本法は別段の法律に依って定めざる国民の権利義務を判明すべき條規を包指すと云えり。」又、巴威倫(バイエルン)千八百十八年五月二十六日憲法の第七章第二条に「人身の自由又は国民の財産に関わる普通の法を発し、或いは現行法を変更し解釈し廃止するには国会の協同を要す。」と一事えり。然るに学者多くは法律の区域は権利義務、若しくは自由財産に止まるべからざることを駁(はく〉し、且つ事物を以て法律と命令との区域を分割せんとするは憲法上及び学問上の試験に於いて、一も其の結果を得ざることを論じたり。蓋し、法律及び命令の区域は専ら各国政治発達の程度に従う。而して、唯、憲法史を以て之を論断すべきのみ。但し、憲法の明文に依り、特に法律を要する者は之を第一の限界とし既に法律を以て制定したる者は法律に非ざれは之を変更することを得ざるは之を第二の限界とする。此れ乃ち立憲各国の同じ所なり。

 

現代語訳
 法律は国家主権を根拠とする規範であり、そして必ず議会の協力と賛成を経る必要があるのは、立憲制度の大原則である。ゆえに議会の審議を経ないものは、法律とすることができない。一院が可決しても、他の一院が否決するときは、法律とすることができない。
(附記)どういうことを法律で定める必要があるのかについては、思うに、一例を挙げるだけでは要約するのは難しい。プロイセンの普通法を公布させる勅令に「本法は別段の法律で定めていない国民の権利義務を明らかにする条規を包括する」という。また、バイエルン千八百十八年五月二十六日憲法の第七章第二条に「人身の自由又は国民の財産に関する普通法を発布し、あるいは現行法を変更したり、解釈したり、廃止したりするには、国会の協同を必要とする」という。しかるに学者の多くは、法律の範囲は権利義務や自由財産にとどまるべきでないと反対し、具体的に法律と命令との範囲を分割しようとするのは、憲法上及び学問上の試験において、一つもその結果を得られないことを論じた。思うに、法律及び命令の範囲は、もっぱら各国の政治の発達度合いによって決まる。そして憲政史によって論断するべきである。ただし、憲法の明文によりとくに法律が必要とされるものは、これを第一の限界として、すでに法律によって制定されたものは、法律でなければ変更することができないのは、第二の限界とする。これは、立憲各国において同じである。

 

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