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伊藤博文の憲法義解〜第七十六条〜

 第七十六条になります。

 

口語訳
 維新の後、法令の頒布は御沙汰書(ごさたがき)又は布告及び布達と称える。明治元年八月十三日法令頒布の書式を定め、以後、被仰出御沙汰等の文字を用いたるは行政官に限り、其の他の五官(神祇官、会計官、軍務官、外国官、刑法官)及び府県は申達の字を以てする。五官府県に於いて重立たる布告は行政官に差し出し、議政官決議の上、行政官より達せしめる。五年正月八日達に、自今、布告に番号を附し、各省の布達亦同様たらしめる。此れより始めて布告、布達の名称に区別をなしたり。六年七月十八日達に、布令中掲示すべき者と然らざる者とを区別し、布令署の結文の例を定め、各庁及び官員に達するは此旨相違又は此旨相心得とし、全国一般に布告するは此旨布告とし、華族或いは社寺に達するは此旨華士族へ布告、又は此旨社寺へ布告とする。其の各庁及び官員に達する者は掲示を要せず。此れ人民に対する布告と官庁訓令とを区別したるの始なり。十四年十二月、布告布達式を定め、布告は太政大臣奉勅旨布告とし、布達は太政大臣より布達し、並びに主任の卿之に連署する。同月三日、「布告に法律規則は布告を以て発行する。従前諸省限布達せる条規の類は、自今、総て太政官より布達する。」此れ諸省布達の制を廃し、及び始めて諸省卿の連署の制を定めたるなり。十九年二月二十六日の勅令に、法律勅令は上諭を以て公布し、親署の後、御璽をツし、内閣総理大臣及び主任の大臣之に副署する。閣令は内閣総理大臣之を発し、省令は各省大臣之を発する。以上之を総ぶるに維新以来の官令に御沙汰書と云い、布達と云えるは其の文式に依って称呼したるなり。其の法と云い(戸籍法の類)律と云い(新律綱領の類)令と云い(徴兵令、戒厳令の類)条例と云い(新聞条例の類)律例と云い(改定律例の類)規則と云う(府県会規則の類)は総て皆人民に公布し、遵由の効力を有せしめるの条則を謂うの義にして、其の間に軽重する所あるに非ざるなり。而して、十九年二月二十六日の勅令に至って始めて法律勅令の名称を正したりしも、何をか法律とし何をか勅令とするに至っては、亦未だ一定の限界あるに非ざるなり。八年の元老院の章程に元老院は新法の設立、旧法の改定を議定す。と謂い、十九年二月二十六日の勅令に法律の元老院の議を経るを要する者は旧に依ると謂う。然るに八年以後布告の中、何をか指して法律とすべきや未だ明白ならず。従って元老院立法の権限亦明画ならず。(十一年二月二十二日元老院の上奏に依る)十九年以後勅令にして院議に付する者亦少しとせず。要するに憲法発布の前に当って法律と勅令とは其の名称を殊にして、其の事実を同じくする者たるに過ぎず。而して其の名称に依って以て効力の軽重を区別すべからざるは、十九年以前布告と布達と時ありて区別なきに異なることなきなり。
 故に、憲法の指定する所に従い、法律と命令との区別を明らかにせんとするは必ず立法議会解説の時期に於いて其の始を履むことを得べく、而して立法議会開設の前に当っては法律規則命令其の他何等の名称を用い、何らの文式を用いたるも此を以て其の効力の軽重を判断するの縄尺とすることを得ず。 前日の公布は何らの名称を用いたるも総て遵由の効力ありとする。但し、此の憲法に矛盾する者は憲法の施行の日より、其の法令の全文、或いは或る条章に限り効力を失うべきなり。
 前日の公布、今日に現行して将来に遵由の力ある者の中に就いて、更に憲法の定める所に依るときは必ず其の法律たることを望む者あり。(第二十条兵役 第二十一条租税の類)今、過去に沂りて一々之に法律の公式を与え以て憲法の文義に副わしめんとするは形式に拘り、徒に多事を為すに過ぎず。故に、本条は現行の法令条規をして総て皆遵由の力あらしめるのみならず、其の中憲法に於いて法律を以て之を望む者は即ち法律として遵由の力あらしめる者にして、若し将来に於いて改正を要するときは、其の前日に勅令布達を以て公布したるに拘らず、総て皆法律を以て挙行するを要すること知るべきなり。

 

現代語訳

 

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