日考塾〜憲法とは即ち歴史である

このエントリーをはてなブックマークに追加

カエサル派の結束

 ではアウグストゥス帝はどのようにして権威と権力を手中に収めたのか。
まずこの紀元前27年から始まる時代をローマ帝政あるいはローマ元首政と呼ばれています。
 これは単純に帝冠を戴いたわけではなく、あくまでローマ内の第一人者(princeps)プリンケプスとして認められ、アウグストゥスの尊称を得たところにあります。
 元々第一人者とは、元老院第一人者からきている言葉で、元老院において一番初めの発言権を持っている者になります。
しかしカエサル暗殺後に臨時大権を得てローマを平定すること、そして元老院に臨時大権を返すことで「権威」の上での第一人者になりました。これが元首政と言われる所以になります。

 

 ただローマ内は安定しましたが、広大なローマ領内を統治していく上で、元老院主導による体制で維持していくのが難しいこと、今のドイツのライン川を境にして、ゲルマン人が侵攻することも多くなっていました。
 そのため一部の属州をアウグストゥスの管轄にすること、ローマ軍が配備されることにもなりますので、本来は個々の属州内や執政官であれば1年任期の軍事指揮権を保有できましたが、全軍を統率できる軍事指揮権を元老院決議によって保有することになりました。
 その他にもローマ内の制度改革や公共事業を行うため、他の執政官などが反対されてもそれを覆すことができる護民官職権というものも保有することで、ローマにおいて他社を圧倒することになりました。

 

 別の所でお話をしていますが、貴族(patricii)と平民(plebis)から官職貴族(nobires)になり、元老院に「新参者」が入ってくることになりましたが、
その元老院内の親族や婚姻、利害関係、さらに保護者(patronus)と庇護者(clientes)関係によって元老院を超えて同様の関係が網目上に張り巡らされている中、
アウグストゥス帝はそれら有力貴族を抑えていくことで、巧みに権威と権力をもつことにより、忠誠心を集めることになりました、
つまりその社会の穴をかいくぐっていくことで、民主政治がいつのまにか独裁政治へと変貌していることがあります。

 

 紀元前44年3月15日イドゥス・マルティアエ
 ポンペイウス劇場においてカエサル派、元老院派の人達でカエサルが暗殺されました。
カエサルとは、ガイウス・ユリウス・カエサルであり、現在のフランスであるガリアの地を10年足らずで平定し、その後『賽は投げられた』で有名なルビコン川を渡り、
ポンペイウスを中心とした元老院派との内乱が始まります。
 2年程で内乱が落ち着き紀元前45年には今後の政治においてカエサルが中心となって政治を行う体制を作り、終身独裁官に就任しました。
 しかし、ローマ共和政においては王を打倒したところから始まったという経緯があるため、カエサルが「王」になるのではないかと思ったカエサル派や元老院派が危機感を持ち、
紀元前44年3月15日に暗殺へと踏み切りました。

 

 カエサルが暗殺されたのち、カエサルの遺言が発表されその内容に誰もが驚きました。
 その当時ではまったく無名のオクタウィウスを養子と定めていました。
 養子縁組自体は個人的な事柄であり政治的なものではありませんが、
重要なことは「カエサル」という名前と、自分のクリエンテス、即ちカエサルに恩義を感じる数十万の人々を遺しました。

 

 オクタウィウスはカエサルの養子となり、ガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌスとなり、父であるカエサルを殺害した者達を打倒し、カエサルの後継者として継承しようと考えていました。
しかし未だ年齢は18歳であり、政治家で雄弁家のキケロは、オクタウィアヌスをプエル(puer)と呼んで、つまり「少年」という意味ですが、子供扱いされていました。
オクタウィアヌスの性格は、生まれつき用心深いと言われていますが、この時の他者に対しての態度としては、冷静で控えめであると同時に非常に誠実に接していました。

 

 紀元前43年1月1日にキケロは元老院で演説を行いました。
演説においてオクタウィアヌスの話題を取り上げ、法務官格の軍事指揮権を持つことと元老院議員とする動議を提出して採択しました。
キケロはオクタウィアヌスに共和政の支持者としてまた父親のように振る舞うことで、後押しをする形になり、またそのようなキケロに対しオクタウィアヌスは「父」と呼びその期待に応えるようにしていました。
しかし、いずれの側も、相手の誠実さに幻想を抱いてはいなかったため、駆け引きが繰り広げられていました。

 

 オクタウィアヌス自身、決して自分の「本当の目的」を漏らすことはしませんでした。

 

この記事はお役に立ちましたでしょうか。
この記事が誰かの役に立ちそうだと感じて頂けましたら、下のボタンから共有をお願い致します。


日考塾 所信 日考塾概要 お問い合わせ 参考文献