象徴天皇に関する見解
吉國元長官は、現在の天皇についての見解として以下のように述べています。
参 - 内閣委員会 - 16号
昭和48年06月28日
○政府委員(吉國一郎君) 外国からわれわれに対しまして、ときどきこういうことがございますが、私も数年前、二、三年前でございますか、アフリカの某国の法務総裁の訪問を受けまして、日本国憲法について概要を説明してくれないかということで、つたない外国語をあやつって説明をしたことがございます。
そのときに、日本の憲法のまず特徴としては、主権在民であって、しかも天皇をいただいておる。この第一章について説明をいたしたわけでございます。そこで、天皇が象徴である。この象徴ということにつきましては、シンボルということを使っても非常によくわかるわけでございます。象徴と申しますのは、いまさら申し上げるまでもなく、一つのものごとを理解するために、Aという事柄をあらわすためにBという事象をもってする。ハトが平和の象徴であると言えば、平和という、Aという事項をあらわすためには、ハトを見ることによっておのずから万人の心の中に平和という観念が浮かび上がってくるというものを申すということは、これはいまさら申し上げるまでもございませんが、そのような説明をいたしますと非常によくわかって、なるほど日本のエンペラーはそういう地位にあられるのかということを言ったことを記憶いたしております。もちろん、さらに第二章の「戦争の放棄」以下、あの規定についても説明をいたしますけれども、日本のエンペラーの存立の基礎というものについて、そのような説明をいたしますと、非常に日本の国柄について理解をしてくれております。
その際、また、たとえば、いまはイギリス連邦とは申しておりませんが、コモンウエルス・オブ・ネーションズという昔のいわゆる英連邦の象徴としてイギリスのキングなりクイーンなりがあられるということも、これはウエストミンスター条令というものに規定をされておりますが、その説明をいたしまして、これと同様なものである、シンボルという意味においては同様なものであるということを申したようなことがございます。
イギリスのウェストミンスターモデルの象徴ということを言っています。ウェストミンスターモデルの象徴とは、帝国憲法で想定していたものと同様になります。それに対して、以下のことも別の人ですが述べています。
参 - 予算委員会第一分科会 - 4号
昭和47年04月26日
○政府委員(瓜生順良君) これは憲法第一条の解釈の問題でございますが、憲法第一条に、天皇は日本国の象徴であり国民統合の象徴である、そのことは主権を有する国民の総意に基づくというような規定がございますが、そのことだと思いまするが、象徴という形は、これは、終戦前の明治憲法では、天皇は元首にして統治権を総攬する、というようにありました。しかし、そういう表現ではなくなっております。しかし、日本の長い歴史を見ますると、いわゆる権力をお持ちでなくて、その国の最高の地位におられて、国民の中心におられたというような時代のほうが長いわけであります。藤原摂関政治のとき、あるいは幕府政治とか、そういう時代が非常に長いわけでありますから、したがって、この象徴というこの表現は戦後初めて出てきた新しいことではなくて、長い歴史の上で、いわゆる統治権を総攬されるというような権力の中心にはおなりでなかった、そういう時代のことが、そのことがここに表現されているものと思います。しかし、これは国民の総意に基づくということでありますので、そういうようなことで、われわれは、一般の国民もそういう天皇をいただいて進みたいという気持ちを持っておられる点を十分考えて、日本国における天皇のそうしたお立場を考えながら奉仕を進めていきたいと、こう思っております。
「天皇は元首にして統治権の総攬」とあり、現在の天皇とは異なることを述べています。つまりウェストミンスターモデルの象徴の意味を理解していないで述べている答弁であり、そもそもGHQの案が出された時もウェストミンスターモデルと言っていました。つまり、帝国憲法の天皇について理解をしていないことになります。
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