大日本帝国憲法改正案

 

大日本帝国憲法

はじめに

 

日本の敗戦後にマッカーサーによって憲法改正を示唆されたのち、政府と内大臣府のそれぞれで大日本帝国憲法の改正案が作られました。
ここでは、大日本帝国憲法改正案をご紹介します。

 

 


 

帝国憲法改正条項

 

昭和二十年十一月二十三日

 

内大臣府御用掛 佐々木惣一奉答

 

第一章 天皇

 

第一条 大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す

 

第二条 皇位は皇室典範の定むる所に依り皇男子孫之を継承す

 

第三条 天皇は神聖にして侵すへからす

 

第四条 天皇は国の元首にして統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ

 

第五条 天皇統治権を行うは万民の翼賛を以てす
2 万民の翼賛は此の憲法の定むる所の方法に依る

 

第六条 天皇は帝国議会の協賛を以て立法権を行ふ

 

第七条 天皇は法律を裁可し其の公布を命す

 

第八条 天皇は帝国議会を召集し其の開会閉会停会及衆議院の解散を命す
2 憲法事項審議会奏請するときは帝国議会を召集すへし
3 同一の理由に依り命する衆議院の解散は一回を超ゆることを得す
4 衆議院に於て政府に解散の奏請を求むへしとするの動議あり議員三分の一以上の賛成あるときは衆議院議長之を政府に報告し政府の奏請に依り解散せらるへし
5 帝国議会閉会の間憲法事項審議会は衆議院議員三十名以上の連名を以てする請求に基き衆議院の解散を奏請することあるへし

 

第九条 天皇は帝国議会の召集在らさる場合に於て公共の安全を保持し又は其の災厄を避くる為緊急の必要に由り憲法事項審議会の議決を経て法律に代るへき勅令を発す
2 此の勅令は次の会期の初に帝国議会に提出すへし若議会に於て承諾せさるときは政府は将来に向て其の効力を失ふことを公布すへし

 

第十条 天皇は法律を以て規定すとせられたる事項に付法律の委任に依り命令を以て規定することを得
2 当該事項全般を規定したる法律か其の事項に付其の法律自ら定むるに適せすとするものを命令を以て定むと規定する場合に於て前項の委任あるものとす

 

第十一条 天皇は法律を執行する為に公共の安寧秩序を保持する為に又は臣民の幸福を増進する為に必要なる命令を発し又は発せしむ

 

第十二条 天皇は行政各部の官制及官吏の俸給を定め及官吏を任免す但し此の憲法又は他の法律に特例を掲けたるものは各々其の条項に依る
2 官吏の勤務に関しては別に規程を設け其の本分を尽さしめ又其の身分を保持せしむ

 

第十三条 天皇は軍を統帥す

 

第十四条 天皇は軍の編制及常備兵額を定む

 

第十五条 天皇は戦を宣し和を講し及諸般の条約を締結す
2 前項の作用は帝国議会開会中なるときは其の協賛を経て之を行ひ閉会中なるときは憲法事項審議会の議決を経て之を行ふ後の場合に於て宣戦講和に付ては直に条約締結に付ては次の会期の初に帝国議会に之を報告す
3 条約の内容か法律を要する事項を含む場合に於ては其の事項に付別に法律を制定するの手続を要す

 

第十六条 天皇は戒厳を宣告す
2 戒厳の要件及効力は法律を以て之を定む
3 戒厳を宣告したるときは直に之を帝国議会に報告すへし
4 天皇は前項の報告ありたる場合に於て及其の後に於て帝国議会の議決に依り戒厳の終了を宣告す
5 天皇は公共の安寧秩序を保持する為非常の措置を為すの必要あるときは憲法事項審議会の議決を経て勅令を以て戒厳法の一部の適用を為すことを得此の場合に於ては第三項及前項を準用し戒厳法の適用を停止す

 

第十七条 天皇は爵位勲章及其の他の栄典を授与す

 

第十八条 天皇は大赦特赦減刑及復権を命す

 

第十九条 天皇は帝国議会の協賛を以て第十三条第十四条第十七条及第十八条の作用を行ふことを得憲法事項審議会の奏請あるときは帝国議会の協賛を以て行ふことを要す

 

第二十条 命令を以て法律を変更することを得す法律を以て命令を変更することを得但し此の憲法に特例を認めたる場合は此の限に在らす
2 命令は此の憲法に特例を認めたる場合を除く外第二章に於て法律を要すと定むる事項を規定することを得す

 

第二十一条 摂政を置くは皇室典範の定むる所に依る
2 摂政は天皇の名に於て大権を行ふ

 

第二章 臣民

 

第二十二条 日本臣民たるの要件は法律の定むる所に依る

 

第二十三条 日本臣民は法律の定むる所に依り其の能力に応し公益の為必要なる勤労を為すの義務を有す

 

第二十四条 日本臣民は法律の定むる所に依り人間必需の生活を享受するの権利を有す

 

第二十五条 日本臣民は法律命令の定むる所の資格に応し均く官吏に任せられ及其の他の公務に就くの権利を有す
2 前項の資格に付ては人の能力に関する事実に着目して適否を判断すへきものとす

 

第二十六条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ兵役の義務を有す

 

第二十七条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ租税其の他の公課を納むるの義務を有す

 

第二十八条 日本臣民は居住移転及職業の自由を有す
2 公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第二十九条 日本臣民は故なく逮捕監禁審問処罰を受くることなし
2 公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第三十条 日本臣民は法律に定めたる裁判所及行政裁判所の裁判及行政裁判を受くるの権利を有す

 

第三十一条 日本臣民は其の許諾なくして住所に侵入せられ及捜索せらるることなし
2 公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第三十二条 日本臣民は信書及之に準すへきものの秘密を侵さるることなし
2 公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第三十三条 日本臣民は其の財産権を侵さるることなし
2 公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依り且特別の自由なき限相当の補償を以てす

 

第三十四条 日本臣民は信教の自由を有す
2 安寧秩序を妨くる者臣民たるの義務に背く者及保護奨励を望む者に対し加ふる制限は法律の定むる所に依る
3 宗教上の団体は宗教に関せさる行動を為す範囲に於て第三十六条に基く制限に従ふ

 

第三十五条 日本臣民は学問芸術及教育受授の自由を有す
2 保護奨励其の他公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第三十六条 日本臣民は言論著作印行集会及結社の自由を有す
2 公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第三十七条 日本臣民は別に定むる所の規程に従ひ請願を為すの権利を有す

 

第三十八条 日本臣民は国の違法の行為又は官吏の違法の職務行為に因り損害を受けたるときは国に対して賠償を求むるの権利を有す
2 前項の場合に於て賠償を求むる手続及国と官吏との関係は法律に依り之を定む

 

第三十九条 本章に示したるものの外日本臣民の自由を制限するは法律又は命令に依る

 

第四十条 天皇は戦時又は国家事変の場合に於て本章に掲けたる条規に拘らす大権に依り必要なる処置を為すことを得其の処置に付ては直に帝国議会に報告すへし
2 天皇は前項の報告ありたる場合に於て及其の後に於て帝国議会の議決に依り其の処置を停止す

 

第四十一条 第二十八条乃至第三十九条は法律に別段の定なき限日本臣民に非さる者に付之を準用す

 

第三章 帝国議会

 

第四十二条 帝国議会は衆議院特議院の両院を以て成立す

 

第四十三条 貴族院は貴族院令の定むる所に依り皇族華族及勅任せられたる議員を以て組織す

 

第四十四条 特議院は特議院法の定むる所に依り皇族及特別の手続を経て選任せられたる議員を以て組織す

 

第四十五条 何人も同時に両議院の議員たることを得す

 

第四十六条 凡て帝国議会の協賛に依り成立したる国の行為を法律とす但し此の憲法に依り別段の形式を定めたるものは此の限に在らす

 

第四十七条 両議院は政府の提出する法律案を議決し及各々法律案を提出することを得

 

第四十八条 両議院の一に於て否決したる法律案は同会期中に於て再ひ提出することを得す

 

第四十九条 両議院は法律又は其の他の事件に付各々其の意見を政府に建議することを得但し其の採納を得さるものは同会期中に於て再ひ建議することを得す

 

第五十条 帝国議会は毎年之を召集す

 

第五十一条 帝国議会は三箇月を以て会期とす必要ある場合に於ては勅命を以て之を延長す議院奏請したる場合亦同し

 

第五十二条 臨時緊急のある場合に於て常会の外臨時会を召集すへし
2 臨時会の会期を定むるは勅令に依る

 

第五十三条 帝国議会の開会閉会会期の延長及停会は両院同時に之を行ふへし
2 衆議院解散を命せられたるときは特議院は同時に停会せらるへし

 

第五十四条 衆議院解散を命せられたるときは勅命を以て新に議員を選挙せしめ解散の日より三箇月以内に之を召集すへし

 

第五十五条 両議院は各々其の総議員三分の一以上出席するに非されは議事を開き議決を為すことを得す

 

第五十六条 両議院の議事は過半数を以て決す可否同数なるときは議長の決する所に依る

 

第五十七条 両議院の会議は公開す但し政府の要求又は其の院の決議に依り秘密会と為すことを得
2 政府の要求に依り秘密会と為したる後議院の決議あるときは公開に復す
3 公開の会議の議事を真実に伝ふることを目的とする報道は責任を生することなし

 

第五十八条 両議院は各々天皇に上奏することを得

 

第五十九条 両議院は臣民より呈出する請願書を受くることを得

 

第六十条 両議院は此の憲法及議院法に掲くるものの外内部の整理に必要なる諸規則を定むることを得

 

第六十一条 両議院は各々総議員十分の一以上の賛成を以てする動議に基く決議あるときは特定の国務大臣及其の院の議員の職務に付不当の事項存するや否やを審査する為査問委員会を設く
2 査問委員会は当該国務大臣又は当該議員の出席陳述を求むることを得当該国務大臣又は当該議員は出席陳述を為すことを得
3 査問委員会は証拠の取調に付諸官府に委託することを得
4 前二項に示したるものの外査問委員会の審理に必要なる事項は法律を以て之を定む

 

第六十二条 両議院の議員は議院に於て発言したる意見及表決に付院外に於て責を負ふことなし但し議員自ら其の言論を演説刊行筆記又は其の他の方法を以て公布したるときは一般の法律に依り処分せらるへし

 

第六十三条 両議院の議員は現行犯罪又は内乱外患に関る罪を除く外会期中其の院の許諾なくして引続き逮捕せられ及新に逮捕せらるることなし

 

第六十四条 国務大臣及政府委員は何時たりとも各議院に出席し及発することを得

 

第六十五条 此の憲法の定むる所に依り特定の事項を審議する為両議院議員を委員とする憲法事項審議会を置く
2 両議院は各会期毎に憲法事項審議会の委員及委員に故障を生したる場合の補充員を選挙す委員及補充員は各々三十人以内両院同数とす
3 憲法事項審議会の委員は次の会期に於て新に委員の選挙せらるる迄其の職務を行ふものとす
4 衆議院議員又は特議院議員総て存せさるに至りたる場合に於ては衆議院議員又は特議院議員にして憲法事項審議会の委員たりしもの引続き委員たるものとす其の者に故障あるときは第二項の補充員たりし者を以て之に充つ
5 各議院に於ける憲法事項審議会の委員の数議事規則其の他必要なる事項は法律を以て之を定む

 

第四章 国務大臣及枢密院

 

第五十五条 国務各大臣は天皇を輔弼し其の責に任す
2 凡て法律勅令其の他国務に関る詔勅は国務大臣の副署を要す

 

第六十七条 天皇及帝国議会か国務大臣の責任を問ふは此の憲法の範囲内に於て適宜の措置を以てす

 

第六十八条 国務大臣は官制の定むる所に依り内閣を組織す

 

第六十九条 天皇は国務大臣中一人を以て内閣総理大臣に任す
2 内閣総理大臣は内閣の統一を保ち国務の全般に付上奏し之を宣示す統帥の国務其の他特別の説明を必要とする事項に関しては内閣総理大臣当該官府をして内閣に於て説明を為さしむ
3 内閣総理大臣の選任は別に定むる所の規程に依り一定の手続を経て之を行ふ此の場合に於て現任の内閣総理大臣は其の意見を上奏することを得

 

第七十条 枢密院は官制の定むる所に依り天皇の諮詢に応へ其の意見を上奏す
2 天皇は重要の国務に付枢密院に諮詢することあるへし

 

第五章 司法検察行政裁判及憲法裁判

 

第七十一条 司法権は天皇の名に於て法律に依り裁判所之を行ふ
2 裁判所の構成は法律を以て之を定む

 

第七十二条 裁判官は法律に定めたる資格を具ふる者を以て之に任す
2 裁判官は刑法の宣告又は懲戒の処分に由るの外其の官を免せらるることなし
3 懲戒の条規は法律を以て之を定む

 

第七十三条 裁判の対審判決は之を公開す但し安寧秩序又は風俗の害するの虞あるときは法律に依り又は裁判所の決議を以て対審の公開を停むることを得
2 前項裁判所の決議に対し法律の定むる所に依り当事者弁護人及傍聴人異議を申立てたるときは裁判所は再議することあるへし

 

第七十四条 特別裁判所の管轄に属すへきものは別に法律を以て之を定む

 

第七十五条 犯罪の検察は法律に依り検事之を行ふ
2 裁判官に任せらるる資格其の身分の保障及其の懲戒に関する此の憲法の条項は検事に付之を準用す但し必要あるときは法律を以て別段の規定を設くることを得

 

第七十六条 裁判官及検事は公正の態度に付社会の信頼を保持すへし
2 裁判官及検事は相互独立して共に司法権の適正なる運営を期し両者職域の混淆なきことを要す

 

第七十七条 行政庁の処分に付利害関係を有する者か其の処分を違法なりとして其の効力に関し提起する訴訟の裁判は法律を以て定めたる行政裁判所法律に依り之を行ふ
2 前項の関係以外の行政上の関係に関する訴訟の裁判は法律に依り特に司法裁判所の権限に属せしめたるものを除く外総て行政裁判所の権限に属す
3 第七十二条及第七十三条は行政裁判官及行政裁判に付之を準用す

 

第七十八条 帝国憲法の条規に関する疑義に付ては法律に定めたる憲法裁判所法律に依り之を裁判す
2 憲法裁判所は皇室典範皇室典範に基く諸規則及法律命令か帝国憲法に違反するや否やに付宮内大臣政府及帝国議会の請求ありたる場合に於て憲法裁判を行ふ但し現に憲法裁判所に繋属する事件の判決に付本文に示したる諸法に関する憲法上の疑義を決定することを必要とする場合に於ては憲法裁判所職権に依り之を決定す
3 憲法裁判所は前項の事項以外の事項に関し政府又は帝国議会の行動か帝国憲法に違反するや否やに付帝国議会又は政府の請求ありたる場合に於て憲法裁判を行ふ衆議院又は特議院の請求あるときは政府は此の請求を為すことを要す
4 憲法裁判所は最高の司法裁判所又は最高の行政裁判所か現に繋属する事件の判決に付憲法上の疑義を決定することを必要とし之を請求したる場合及其の訴訟の当事者か之を申立てたる場合に於て憲法裁判を行ふ
5 憲法裁判所は第二項第三項及前項の事項以外の事項に付法律を以て其の裁判に属せしめたる場合に於て憲法裁判を行ふ
6 第七十二条及第七十三条は憲法裁判官及憲法裁判に付之を準用す

 

第六章 会計

 

第七十九条 新に租税其の他の公課を課し及課率を変更するは法律を以て之を定むへし但し報償に属する行政上の手数料及其の他の収納金は此の限に在らす
2 国債を起し及予算に定めたるものを除く外国庫の負担となるへき契約を為すは帝国議会の協賛を経へし

 

第八十条 現行の租税其の他の公課は更に法律を以て之を改めさる限は旧に依り之を徴収す

 

第八十一条 国家の歳出歳入は毎年予算を以て帝国議会の協賛を経へし
2 予算の款項に超過し又は予算の外に生したる支出あるときは後日帝国議会の承諾を求むるを要す

 

第八十二条 予算案は前に衆議院に提出すへし
2 予算案に付特議院に於て衆議院と異なる議決を為したる場合には政府は衆議院の請求に依り特議院の再議を求むることを要す

 

第八十三条 皇室経費は現在の定額に依り毎年国庫より之を支出す
2 帝国議会は皇室経費に付新に考慮を為すことを政府に求むることを得
3 前項の場合に於て政府同意するときは定額の増減を計上し帝国議会の協賛を求むへし

 

第八十四条 憲法上の大権に基つける既定の歳出法律の結果に由る歳出及法律上政府の義務に属する歳出は政府の同意なくして帝国議会之を廃除し又は削減することを得す

 

第八十五条 特別の須要に因り政府は予め年限を定め継続費として帝国議会の協賛を求むることを得

 

第八十六条 避くへからさる予算の不足を補ふ為に又は予算の外に生したる必要の費用に充つる為に予備費を設くへし
2 政府は予備費を支出して尚必要ありと認むる場合に於ては憲法事項審議会の議決を経て歳計剰余金を支出することを得第八十一条第二項は此の場合にも適用あるものとす

 

第八十七条 公共の安全を保持する為緊急の需用ある場合に於て内外の情形に因り帝国議会を召集すること能はさるときは政府は勅令に依り財政上必要の処分を為すことを得但し此の勅令は憲法事項審議会の議決を経て之を発す
2 前項の場合に於ては次の会期の初に帝国議会に提出し其の承諾を求むるを要す

 

第八十八条 帝国議会に於て予算を議定せす又は予算成立に至らさるときは政府は前年度の予算を施行すへし
2 前年度予算の施行せらるる場合に於ては帝国議会は其の予算中の臨時費に付更に審査し之か廃除削減を為すことを得
3 施行せらるへき前年度予算に対する追加予算存する場合又は之に対する追加予算提出せられたる場合に於ては帝国議会は前年度予算中の款項にして追加予算中の款項と同一なるものに付更に審査し之か廃除削減を為すことを得
4 前項の規定は特別会計予算成立せさる場合に於て之に対する追加予算に付之を準用す

 

第八十九条 国家の歳出歳入の決算は会計検査院之を検査確定し政府は其の検査報告と倶に之を帝国議会に提出すへし
2 会計検査院は天皇に直隷し国務大臣に対し独立して其の職務を行ひ其の意見を上奏するものとす
3 会計検査院の組織及職権は法律を以て之を定む
4 会計検査官の資格其の身分の保障に付ては第七十二条を準用す

 

第七章 自治

 

第九十条 国必要を認むるときは法律の定めたる地方団体其の他の団体をして其の名に於て統治に任せしむることを得
2 前項の自治団体は国の監督を受く

 

第九十一条 自治団体の事務を決定する者及之を執行する者の選任は当該自治団体を構成する者之を行ふ但し法律に別段の定ある場合は此の限に在らす

 

第九十二条 自治団体の構成組織権能責務其の他必要なる事項は法律を以て之を定む

 

第八章 補則

 

第九十三条 将来此の憲法を改正するの必要あるときは勅命を以て議案を帝国議会の議に付すへし
2 此の場合に於て両議院は各々其の総員三分の二以上出席するに非されは議事を開くことを得す出席議員三分の二以上の多数を得るに非されは改正の議決を為すことを得す

 

第九十四条 政府命を奉し帝国憲法の改正に関する調査を為す場合に於ては特別の審議機関を設くるものとす
2 政府帝国憲法の全体又は其の一定の条項の改正の必要を認むるときは之を上奏し勅旨に依り其の必要の有無に付帝国議会の議決を求むへし
3 帝国議会は政府か帝国憲法改正の必要の有無に関し調査を為すことを奏請すへしとする決議を為すことを得此の決議ありたる場合には政府は議会に於て之に関する意見を表明すへし

 

第九十五条 帝国議会帝国憲法全体の改正の必要を議決したる場合に於ては勅旨に依り国民投票を行ひ国民投票の結果其の改正の必要可決せられたるときは政府は前条第一項の特別審議機関の審議を経て改正の議案を作り第九十三条第一項の手続を奏請す
2 国民投票を行ふの方法は法律を以て之を定む

 

第九十六条 帝国議会帝国憲法の一定の条項の改正の必要を議決したる場合に於ては政府は勅旨に依り第九十四条第一項の特別審議機関の審議を経て改正の議案を作り第九十三条第一項の手続を奏請す

 

第九十七条 帝国議会に於て憲法議案を可決したる場合に於ては政府は其の議案に基き憲法の改正を奏請す
2 帝国議会に於て憲法議案を修正して議決したる場合に於ては勅旨に依り国民投票を行ひ国民投票の結果其の修正可決せられたるときは政府は其の修正の議案に基き憲法の改正を奏請す

 

第九十八条 皇室典範の改正は帝国議会の議を経るを要せす
2 皇室典範を以て此の憲法の条規を変更することを得す

 

第九十九条 帝国憲法及皇室典範は摂政を置くの間其の全体に付及皇位継承の事項に付之を改正することを得す

 

第百条 法律規則命令又は何等の名称を用いたるに拘らす此の憲法に矛盾せさる現行の法令は総て遵由の効力を有す
2 歳出上政府の義務に係る現在の契約又は命令は総て第八十四条の例に依る

 

憲法改正要綱(甲案)

 

昭和二十一年一月二十六日

 

松本委員会

 

第一章 天皇

 

一 第三条に「天皇は神聖にして侵すへからす」とあるを「天皇は至尊にして侵すへからす」と改むること

 

二 第七条所定の衆議院の解散は同一事由に基つき重ねて之を命することを得さるものとすること

 

三 第八条所定の緊急勅令を発するには議院法の定むる所に依り帝国議会常置委員の諮詢を経るを要するものとすること

 

四 第九条中に「公共の安寧秩序を保持し及臣民の幸福を増進する為に必要なる命令」とあるを「行政の目的を達する為に必要なる命令」と改むること(要綱十参照)

 

五 第十一条中に「陸海軍」とあるを「軍」と改め且第十二条の規定を改め軍の編制及常備兵額は法律を以て之を定むるものとすること(要綱二十一参照)

 

六 第十三条の規定を改め戦を宣し和を講し又は法律を以て定むるを要する事項に関る条約若は国庫に重大なる負担を生すへき条約を締結するには帝国議会の協賛を経るを要するものとすること但し内外の情形に因り帝国議会の召集を待つこと能はさる緊急の必要あるときは帝国議会常置委員の諮詢を経るを以て足るものとし此の場合に於ては次の会期に於て帝国議会に報告し其の承諾を求むへきものとすること

 

七 第十五条に「天皇は爵位勲章及其の他の栄典を授与す」とあるを「天皇は栄典を授与す」と改むること

 

第二章 臣民権利義務

 

八 第二十条中に「兵役の義務」とあるを「役務に服する義務」と改むること

 

九 第二十八条の規定を改め日本臣民は安寧秩序を妨けさる限に於て信教の自由を有するものとすること

 

十 日本臣民は本章各条に掲けたる場合の外凡て法律に依るに非すして其の自由及権利を侵さるることなき旨の規定を設くること

 

十一 非常大権に関する第三十一条の規定を削除すること

 

十二 軍人の特例に関する第三十二条の規定を削除すること

 

第三章 帝国議会

 

十三 第三十三条以下に「貴族院」とあるを「参議院」と改むること

 

十四 第三十四条の規定を改め参議院は参議院法の定むる所に依り選挙又は勅任せられたる議員を以て組織するものとすること

 

十五 衆議院に於て引続き三回其の総員三分の二以上の多数を以て可決して参議院に移したる法律案は参議院の議決あると否とを問はす帝国議会の協賛を経たるものとする旨の規定を設くること

 

十六 第四十二条所定の帝国議会の会期「三箇月」を改め「三箇月以上に於て議院法の定めたる期間」とすること

 

十七 両議院の議員は各々其の院の総員三分の一以上の賛成を得て臨時会の召集を求むることを得る旨の規定を設くること

 

十八 第四十五条所定の衆議院解散後に於ける帝国議会を召集すへき期限「五箇月以内」を「三箇月以内」と改むること

 

十九 第四十八条但書の規定を改め両議院の会議を秘密会と為すは専ら其の院の決議に依るものとすること

 

二十 会期前に逮捕せられたる議員は其の院の要求あるときは会期中之を釈放すへき旨の規定を設くること

 

第四章 国務大臣及枢密顧問

 

二十一 第五十五条第一項の規定を改め国務各大臣は天皇を輔弼し一切の国務に付帝国議会に対して其の責に任するものとし且同条第二項中に軍の統帥に関る詔勅にも亦国務大臣の副署を要する旨を明記すること

 

二十二 衆議院に於て国務各大臣に対する不信任を議決したるときは解散ありたる場合を除く外其の職に留ることを得さる旨の規定を設くること(要綱二参照)

 

二十三 国務各大臣を以て内閣を組織する旨及内閣の官制は法律を以て之を定むる旨の規定を設くること

 

二十四 枢密院の官制は法律を以て之を定むる旨の規定を設くること

 

第五章 司法

 

二十五 第六十一条の規定を改め行政事件に関る訴訟は別に法律の定むる所に依り司法裁判所の管轄に属するものとすること

 

第六章 会計

 

二十六 参議院は衆議院の議決したる予算に付増額の修正を為すことを得さる旨の規定を設くること

 

二十七 第六十六条の規定を改め皇室経費中其の内廷の経費に限り定額に依り毎年国庫より之を支出し増額を要する場合を除く外帝国議会の協賛を要せさるものとすること

 

二十八 第六十七条の規定を改め憲法上の大権に基つける既定の歳出は政府の同意なくして帝国議会之を廃除し又は削減することを得るものとすること

 

二十九 予備費を以て予算の外に生したる必要の費用に充つるとき及予備費外に於て避くへからさる予算の不足を補ふ為に又は予算の外に生したる必要の費用に充つる為に支出を為すときは帝国議会常置委員の諮詢を得へき旨の規定を設くること

 

三十 第七十条所定の財政上の緊急処分を為すには帝国議会常置委員の諮詢を経るを要するものとすること

 

三十一 第七十一条の規定を改め予算不成立の場合には政府は会計法の定むる所に依り暫定予算を作成し予算成立に至るまての間之を施行すへきものとし此の場合に於ては会計年度開始後に於て其の年度の予算と共に暫定予算を帝国議会に提出し其の承諾を求むるを要するものとすること

 

第七章 補則

 

三十二 両議院の議員は各々其の院の総員三分の一以上の賛成を得て憲法改正の議案を発議することを得る旨の規定を設くること

 

三十三 天皇は帝国議会の議決したる憲法改正を裁可し其の公布及執行を命する旨の規定を設くること

 

三十四 憲法及皇室典範変更の制限に関する第七十五条の規定を削除すること

 

三十五 以上憲法改正の各規定の施行に関し必要なる規定を設くること

 

憲法改正案(乙案)

 

昭和二十一年二月二日

 

松本委員会

 

「大日本帝国憲法」を「日本国憲法」に改む
「臣民」を「国民」に改む
「帝国議会」を「国会」に改む

 

第一章 天皇

 

第一条
(A案)(第一条) 日本国は万世一系の天皇統治権を総攬此の憲法の条規に依り之を行ふ
(第四条) 削除

 

(B案)(第一条) 日本国の統治権は万世一系の天皇之を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ
(第四条) 削除

 

(C案)(第一条) 日本国は君主国とし万世一系の天皇を以て君主とす
(第○条) 天皇は統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ

 

(D案)(第一条) 日本国は万世一系の天皇之に君臨す
(第○条) 天皇は此の憲法の条規に依り統治権を行ふ

 

第二条 削除

 

第三条
(A案) 天皇は統治権を行ふに付責に任することなし
(第二項) 天皇の一身は侵すへからす

 

(B案) 天皇は国の元首にして侵すへからす

 

(C案) 天皇の一身は侵すへからす

 

第四条 (前掲第一条参照)

 

第五条 現状

 

第六条 天皇は法律を裁可し其の公布を命す

 

第七条 天皇は国会を召集し其の開会閉会及停会を命す
天皇は衆議院の解散を命す但し同一事由に基づき重ねて解散を命することを得す

 

第八条 天皇は公共の安全を保持し又は其の災厄を避くる為緊急の必要に由り国会閉会の場合に於て国会常置委員会に諮詢し法律に代るへき勅令を発す
此の勅令は次の会期に於て国会に提出すへし若国会に於て承諾せさるときは政府は将来に向て其の効力を失ふことを公布すへし

 

第九条 天皇は法律を執行する為に又は此の憲法に於て法律を以て定むへきものとしたる事項に関る場合を除く外行政の目的を達する為に必要なる命令を発し又は発せしむ但し命令を以て法律を変更することを得す

 

第一〇条 天皇は官吏を任免す

 

第一一条 削除

 

第一二条 削除

 

第一三条 天皇は諸般の条約を締結す但し此の憲法に於て法律を以て定むへきものとしたる事項に関る条約又は国に重大なる義務を負はしむる条約の締結は国会の協賛を経るを要す
前項の場合に於て国会の召集を待つこと能はさる緊急の必要あるときは国会常置委員会の諮詢を経るを以て足る此の場合に於ては次の国会に報告し其の承諾を求むるを要す
条約は公布に依り法律の効力を有す

 

第一四条 削除

 

第一五条 天皇は栄典を授与す

 

第一六条 現状

 

第一七条 現状

 

第二章 国民権利義務

 

第一八条 現状

 

第一九条 日本国民は法律命令の定むる所の資格に応し均く公務に参与することを得

 

第二〇条 削除

 

第二一条 現状

 

第二二条 日本国民は居住及移転の自由を有す
公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第二三条 現状

 

第二四条 現状

 

第二五条 日本国民は其の住所を侵さるることなし
公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第二六条 日本国民は信書の秘密を侵さるることなし
公安を保持する為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第二七条 現状

 

第二八条 日本国民は信教の自由を有す
公安を保持する為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第二九条 日本国民は言論出版集会及結社の自由を有す
公安を保持する為必要なる制限は法律の定むる所に依る

 

第三〇条 日本国民は法律の定むる所に従ひ請願を為すことを得

 

第三〇条の二 日本国民は法律の定むる所に従ひ教育を受くるの権利及義務を有す

 

第三〇条の三 日本国民は法律の定むる所に従ひ勤労の権利及義務を有す

 

第三〇条の四 日本国民は本章に掲けたるものの外凡て法律に依らすして其の自由及権利を侵さるることなし

 

第三一条 削除

 

第三二条 削除

 

第三章 国会

 

第三三条 国会は衆議院参議院の両院を以て成立す

 

第三四条
(A案) 衆議院は法律の定むる所に依り普通平等直接及秘密の原則に従ひ選挙せられたる議員を以て組織す

 

(B案) 衆議院は法律の定むる所に依り公選せられたる議員を以て組織す

 

第三五条
(A案) 参議院は法律の定むる所に依り職域地域及学識経験に拠り選挙又は勅任せられたる議員を以て組織す

 

(B案) 参議院は法律の定むる所に依り職域及地域を代表する者並に学識経験ある者より選挙又は勅任せられたる議員を以て組織す

 

(C案) 参議院は法律の定むる所に依り選挙又は勅任せられたる議員を以て組織す

 

第三六条 現状

 

第三七条 現状

 

第三八条 現状

 

第三九条 現状

 

第三九条の二 衆議院に於て引続き三回其の総議員三分の二以上の多数を以て可決して参議院に移したる法律案は参議院の議決あると否とを問はす国会の協賛を経たるものとす

 

第四〇条 現状

 

第四一条 現状

 

第四二条 国会の会期は三箇月以上とし勅命を以て之を定む
必要ある場合に於ては勅命又は国会の議決を以て之を延長することを得

 

第四三条 臨時の必要ある場合に於て常会の外臨時会を召集すへし
両議院の議員は各々其の院の総議員三分の一以上の賛成を得て臨時会の召集を求むることを得
臨時会の会期を定むるは勅命に依る必要ある場合に於ては勅命又は国会の議決を以て之を延長することを得

 

第四四条 国会の開会閉会会期の延長及停会は両院同時に之を行ふへし
国会開会中に衆議院解散を命せられたるときは参議院は同時に閉会す

 

第四五条 衆議院解散を命せられたるときは勅命を以て新に議員を選挙せしめ解散の日より三箇月以内に臨時会を召集すへし但し其の期間内に常会を召集する場合は此の限に在らす

 

第四六条 現状

 

第四七条 現状

 

第四八条 両議院の会議は公開す但し其の院の決議に依り秘密会と為すことを得

 

第四九条 現状

 

第五〇条 現状

 

第五一条 現状

 

第五二条 現状

 

第五三条 両議院の議員は現行犯罪又は内乱外患に関る罪を除く外会期中其の院の許諾なくして逮捕せらるることなし会期前に逮捕せられたる議員は其の院の要求あるときは会期中之を釈放すへし

 

第五四条 現状

 

第五四条の二 国会に議院法の定むる所に依り常置委員会を置く

 

第四章 国務大臣

 

第五五条 国務各大臣は天皇を輔弼し其の責に任す
凡て法律勅令其の他国務に関る詔勅は国務大臣の副署を要す
(第三項) 国務大臣は衆議院に於て不信任を議決せられたるときは解散ありたる場合を除く外其の職に留ることを得す

 

第五五条の二 国務各大臣を以て内閣を組織す
内閣の官制は法律を以て之を定む

 

第五六条 削除

 

第五章 司法

 

第五七条 現状

 

第五八条 現状

 

第五九条 現状

 

第六〇条 現状

 

第六一条
(A案) 行政事件に関る訴訟は別に法律の定むる所に依り司法裁判所の管轄に属す
(B案)(第五七条第二項) 行政事件に関る訴訟は別に法律の定むる所に依り裁判所の管轄に属す

 

第六章 会計

 

第六二条 現状

 

第六三条 現状

 

第六四条
(第一項) 現状
(第二項) 削除

 

第六五条
(第一項) 現状
(第二項) 参議院は衆議院より移したる予算に付増額の修正を為すことを得す

 

第六六条 皇室内廷の経費は定額に依り毎年国庫より之を支出し増額を要する場合を除く外国会の協賛を要せす

 

第六七条 「憲法上の大権に基つける既定の歳出及」を削る

 

第六八条 現状

 

第六九条
(第一項) 現状
(第二項) 予備費を以て予算の外に生したる必要の費用に充つるは国会常置委員会の諮詢を経へし
(第三項) 予備費を支出したるときは後日国会の承諾を求むるを要す

 

第七〇条
(第一項) 公共の安全を保持する為緊急の需用ある場合に於て内外の情形に因り政府は国会を召集すること能はさるときは国会常置委員会に諮詢し勅令に依り財政上必要の処分を為すことを得
(第二項) 現状

 

第七一条
(A案)
(第一項) 予算成立に至らさるときは政府は三箇月以内に限り一箇月に付前年度の予算の十二分の一の範囲内に於て暫定予算を調製し之を施行すへし此の場合に於ては速に暫定予算に定むるものを除き其の年度の予算を調製し国会の協賛を経へし
(第二項) 暫定予算は之を前項の国会に提出し其の承諾を求むるを要す
(B案)
(第一項) 会計年度開始前に予算成立に至らざるときは政府は会計法の定むる所に依り暫定予算を調製し予算成立に至る迄之を施行すべし
(第二項) 前項の場合に於て帝国議会閉会中なるときは速に之を召集し其の年度の予算を提出すべし

 

第七二条 現状

 

第七章 補則

 

第七三条
(第一項) 現状
(第二項) 両議院の議員は各々総議員三分の一以上の賛成を得て憲法改正の議案を発議することを得
(第三項) 前二項の場合に於て両議院は各々総議員三分の二以上出席するに非されは議事を開くことを得す出席議員三分の二以上上の多数を得るに非されは改正の議決を為すことを得す
(第四項) 天皇は国会の議決したる憲法改正を裁可し其の公布を命す

 

第七四条 現状

 

第七五条 削除

 

第七六条 現状

 
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