日本国憲法改正試案集

高度民主主義民定憲法草案

 

昭和三十六年一月一日 高度民主主義民定憲法草案
衆議院議員 中曽根康弘

 

 日本の政界においては、政変の度に次の総理大臣をきめるために大騒動を繰り返して、政治の空白が一ヵ月位続くのを常とする。岸内閣交替の場合もそうであるし、前の鳩山内閣、吉田内閣、芦田内閣の場合においても同様である。しかも通例この政変は、与党たる自民党内部における勢力交替という現象によって起こるのであるが、勢力交替は、党内派閥間における反逆あるいは連合という現象を通じて起こるので、派閥間の恩愛怨恨は長くあとを引き、それが政治の円滑な運営に常に障害となっている。党内において総裁を公選する場合においても、それは必ず重大なしこりを党内に残すと同時に、公選における第一回投票の第一位が必ずしも決選において一位として残ることなく、商議に成功した連合勢力がこれを圧倒しているのが例である。
 このようなことは、必ずしも民主主義の好ましい姿とはいえない。このような政変の前後には国政の機能は停止し、官僚はサボタージュし、恐るべき損害を国家国民は蒙っているのである。このような状態下に、国民は又常に後継首相の決定をめぐる派閥や政党間のかけひきを切歯扼腕して凝視しているのである。それというのも、首相の地位が国民の手の届かない場所において、国民の意識とはかけはなれた利害打算のうちに、談合の対象となっている場合が多いからだ。このような度々の政変において、国民の期待とは異なった首相が取引のうちに出現する場合が起こる。このような政変の姿は現憲法下では毎回起こりうるのである。それは、現在の議院内閣制が、日本において充分に機能を発揮しえない状態にあるからだ。そこで、これを打開する抜本策として、私は、首相の国民投票制を提唱したいのである。
 第一に、現在の日本の議院内閣制は、次の時代を切り開く原動力である科学と労働を中軸にする長期計画の推進力となっていなっていない。このことは、米国とソ連が、その政治体制は異なるとしても、いずれも大統領、首相の地位が全人民的基礎の上に直接立って、安定した政局下に強力に三ヵ年計画や五ヵ年計画の長期国策を断行しつつ国力発展のバックボーンとなって他国を遥かに引き離しているのに比べるとはっきりする。第二次大戦後の世界において、米ソが遥かに他国を引き離して優勝戦を競っている原因はここにあるのだ。
 由来、日本のような議院内閣制は、十九世紀英国の自由放任主義と予定調和の哲学に基づいており、資本主義順風満帆の時代、海外植民地からは膨大な収入が入り、階級対立も激化していない当時の英国では、充分適用できた。国富をもち、伝統と常識の国の英国の現実をみると、なおこの議院内閣制があてはまる余地がある。しかし日本の現実に果して通用するかどうか。労働と資本、老人と青年、都市と農村、大企業と中小企業等との間には深刻な背離関係が存在している。これらの利害は、政党内部にそのまま持ち込まれ、政党や更に国会の内部において乱反射し合い、この複雑な渦巻の中に、政党の総裁あるいは首相たるものは、党内の派閥の間を調整し、党を一本化するために全精力を使い、あるいは又国会が開会になれば国会乗り切りに全エネルギーをついやして、知力、体力を消耗し、国策を行なう余力は殆んどないといってよい。しかもこの議院内閣制は、本来政権争奪の制度なのである。
 したがって、政局は常に党内派閥間のバランスの上に立ち、噴火山上において踊っている。予算は各派闘の間でむしりとられ、神武景気のような好景気がくると思えば、たちまちデフレの淵に沈み、最大の被害者は常に農民や中小企業者であり弱い勤労者である。又、圧力団体の影響が大であることも周知の事実である。このことは、必然的に度々解散を誘発する。その解散は、国策を国民に問うということよりも、党内における他の派閥征服のための解散が多い。
 このような状態では、長期計画の推進による国力発展など到底期待されない。解散の前後少くとも二ヵ月は政治の空白があるので、四ヵ月間は国の前進は停止することになる。戦後十四年間で七回の解散があったが、そうすると二十八ヵ月の国の歩みの停止があったわけである。すなわち二年四ヵ月の政治の空白があったことになる。これに対し、アメリカは国民の直接選挙による大統領制で、任期四年、平均二回当選するから在任八年、三ヵ年計画は三回繰り返すことができる。ソ連においては、権力的強制により、スターリンもフルシチョフも任期はその葬式まで続く。そして五ヵ年計画を既に数回操り返している。このような国々が飛躍的に前進し、日本やイギリスやイタリー、フランスのような国が追い付けない原因はここに明らかであろう。
 第二に、積極的に首相の国民投票制を主張する根拠として、マスコミの驚異的な発達をあげることができる。テレビ、ラジオ、新聞の普及により、国民は直ちに政治の動向を知ることができる。現在の選挙制度は大正十四年の普通選挙より発するが、当時はラジオもテレビもなく、地方では新聞が二日遅れるという時代で、代議士に首相を選ばせる理由があった。しかし、今日では国民は市町村会議員よりも、岸(信介)、大野(伴睦)、河野(一郎)、池田(勇人)といった中央政治家のほうをはるかによく知っている。
 国民はこれらの政治家の良し悪しを皮膚で感じとる。その感覚は平凡ではあっても多数集まれば正しいものである。現在の議院内閣制においては、議院のプールは十九世紀にイギリスにおいて予想されたように、必ずしもしかく清浄なものではない。ややもすれば濁り、ボウフラがわいているのである。そして国民の心のごとく国会議員が動くものとは必ずしも保証されていない。それはあまりにも国民からくる乱反射や選挙区における圧力が大きいからである。したがって、国民の感覚と国会の感覚とは全く別のものであることもある。このことがおいおいひどくなれば、必ずファッショや暴力革命主義を誘発する。ドイツにおけるヒットラー出現の前夜がそうであったし、最近までのフランスはこの病状が著しく、かくてドゴールの出現によりフランスの病気は治癒しつつあるのである。
 もし国民が直接国民投票によって首相を選ぶならば、選ばれた首相は派閥の思惑や利害とは無縁に、常に政治と大衆の心のギャップを埋めて政治を安定させ、象徴天皇のもとに民主主義をたくましく前進させる力となりえよう。
 また、近来におけるマスコミや交通機関の発達は、指導者の直接投票を行なったギリシャのアテネやスパルタのような都市国家と同じ大きさに政治的に日本をしているのである。ソクラテスやアリストテレスが演説して廻った範囲は、歩いて二時間の範囲であった。今我々は東京から北海道まで、あるいは九州までいずれも飛行機では二時間の範囲である。テレビやラジオを使えば、その瞬間に主張や思想は伝達される。九百万人の東京都民が都知事を直接選んでいるのに、九千万人の国民が首相を直接選べないということはありえないはずだ。
 もちろん、国民投票制には首相の独裁化の恐れがあるとか、反対党が多数党になった場合、政治の運営に支障をきたすといったいろいろな批判があることは十分承知している。しかし、それを計算してもなお首相の国民投票制はわが国にとって意義あることだと思う。特に、全体主義体制の下に驀進する中共に対抗してゆく点から、果して現在のような体制でよいものであろうか。首相の独裁化を防ぐためには、その任期を四年とし、たとえば三選を禁止し、国会議員の任期を四年にして解散をなくし、議員は辞任する場合以外には大臣になれぬこととし、一方、国会の権限を強化するなど、方策は十分あろう。とにかく、この国民投票による首相の直接選挙によって、閣僚は、首相が国の各方面から人材を集めることができる。議員からも任命する場合は本人が辞職をすればなれるのであるから、人材の簡抜も可能であろう。農業界や労働界や中小企業界からも、国会議員でなくとも縦横に人材を引き抜くことができる。そのことは内閣を更に国民に密着させ、国民的内閣の成立を促進する。
 最後に、いまの制度の首相の下で、いざ国難という場合、自衛隊は喜んでその命令に服するであろうか。戦前においては、軍隊の最高指揮権(統帥権)は天皇にあった。現在においてはそれは首相にある。が、自分の妻や親たちが勝っても負けても自分とともに直接選んだ首相のもとでなら、自衛隊員も責任を感じ、勇気を持つ。戦前の天皇制では、天皇の伝統的権威により国民は無条件で防衛に任じた。しかし、派閥の利害を背景に、国民と遊離した首相が出たとき、無条件に命令に服するだろうか。また、政党政治が堕落したり、一党の専制的状態が出現すると、軍隊は政党やその総裁勢力の私兵化する危険性はないか。憲法改正の基本的な問題は第九条にあるのではなく、むしろ、この点にあることを認識する必要がある。首相の国民投票制は普選からさらに民主主義を前進させる現代的高度民主主義の制度である。

 

目次

勅語
前文
第一章 日本国及び天皇
第二章 国民の地位及び国家の責務
第三章 国会
第四章 内閣
第五章 憲法評議会
第六章 司法
第七章 財政
第八章 防衛
第九章 地方自治
第十章 改正
第十一章 補則

 

勅語

 朕は、日本国憲法第九十六条により、国会が、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で議決して発議した改正案が、国民投票において過半数をえたことをよろこび、ここにこれを公布する。

 

前文

 わが国日本は、主権が国民に存する民主主義共同体である。日本国のすべての国権は、その源を国民に発するものであつて、国民の信託に基づいて、その代表者を通じ、国民の幸福を目的として行使される。
 国民は、ひとしく人間としての尊厳を保障されるとともに、共同体の一員としての責務を負担する。
 日本国は、世界の恒久平和を念願する。科学の発達は、人類に偉大な恩恵をもたらすが、倫理がこれに伴わないときは、人類の文明に恐るべき危機を招く。今や、世界の諸国民は、共同してその恩恵を確保し、その惨禍を防止する責任をわかつものである。このために、われらは、世界の諸国民が友愛と信義のもとに平和に共存すべき新しい時代に入りつつあることを自覚し、諸国民とともに従来の偏狭な国家主義の観念を克服し、国際民主主義の諸原理を着実に確立しつつ、究極的には、国家間の一体的な平和的秩序を樹立することを目標とし、特に戦争の禁止及び軍備の完全な国際管理を達成するため、世界の諸国民と誠実に協力することを誓う。
 われらは、長期に亘り、独立の民族として、固有の文化と歴史を形成し、運命をともにしてきた。民族の存立の基礎は、その伝統と新しい創造に対する共同の自覚と自治にある。われらは、この見地に立って世界の新しい平和的秩序を希求するとともに、わが日本国の輝かしい文化と歴史の形成を決意し、ここに、大日本帝国憲法及び日本国憲法の歴史的意義を想起しつつ、その経験を生かして、新時代にふさわしいわが日本国の根本規範として、すべての国民の名で、この憲法を確定する。

 

高度民主主義民定憲法草案

第一章 日本国及び天皇

 

(日本国の基本的性格)
第一条 日本国は、天皇を国民統合の中心とし、その主権が国民にある民主主義国家である。

 

(天皇の地位)
第二条 天皇は、日本国の元首であり、日本国を代表する。

 

(皇位の継承)
第三条 皇位は、皇統にある者が、皇室典範の定めるところにより継承する。
2 皇室典範は、法律で定める。

 

(天皇の行為)
第四条 天皇の国務に関する行為は、この憲法の定めるものに限る。
2 天皇の行為には、内閣の助言を必要とする。内閣は、天皇の行為について責任を負う。
3 天皇の行為に関する文書には、内閣首相が、内閣を代表して副署する。

 

(天皇の権能)
第五条 天皇は、国民の選挙に基づいて内閣首相及び内閣副首相を任命し、内閣首相の指名に基づいて内閣委員を任命する。
2 天皇は、内閣首相の申出に基づいて内閣委員を解任する。

 

第六条 天皇は、参議院の指名に基づいて、最高裁判所長官その他の最高裁判所裁判官及び会計検査院長を任命する。

 

第七条 天皇は、この憲法の定めるところに従い、憲法評議会委員を任命する。

 

第八条 天皇は、内閣の指名に基づいて法律の定める公務員を任命し、内閣の申出に基づいてこれを解任する。

 

第九条 天皇は、憲法改正、法律、政令及び条約を公布する。

 

第十条 天皇は、内閣の決定に基づいて次の行為を行なう。
 一 国会を召集すること。
 二 内閣首相及び内閣副首相の公選の施行を公布すること。
 三 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公布すること。
 四 条約の批准、外交使節に対する全権の委任、大使及び公使に対する信任その他法律の定める外交関係の意思表示をすること。
 五 外国の外交使節を接受すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を行なうこと。
 七 文化及び芸術の奨励助長を行なうこと。
 八 栄典を授与すること。
 九 儀式を行なうこと。
 十 自衛力の発動につき、この憲法の定めるところにより国際法上の宣言を発すること。

 

(摂政)
第十一条 摂政を置く場合は、皇室典範の定めるところによる。
2 摂政は、天皇の名で、その国務に関する行為を行なう。

 

第二章 国民の地位及び国家の責務

 

(国民の要件)
第十二条 日本国の国民たる要件は、法律で定める。

 

(基本的人権)
第十三条 国民の基本的人権は、尊重する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。

 

(自由、権利の限界)
第十四条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを使用する責任を負う。

 

(個人の尊重と公共の福祉)
第十五条 すべての国民は個人として尊重される。公共の福祉に反しない限り、生命及び自由に対する国民の権利を保障することは、国の義務である。

 

(法のもとの平等)
第十六条 すべての国民は、法のもとに平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 貴族制度は、認めない。

 

(公務員の選定及び解任の権、公務員の本質、普通選挙の保障、秘密投票の保障)
第十七条 公務員を選定し、及びこれを解任することは、国民固有の権利である。
2 すべての公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべての選挙における投票の秘密は、侵してはならない。選挙人は、その選挙に関し公的にも私的にも責任を問われない。

 

(請願権)
第十八条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令、条例又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人もかかる請願をしたために、いかなる差別待遇も受けない。

 

(国及び公共団体の賠償責任)
第十九条 何人も、公務員の不法行為によつて損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

 

(思想及び良心の自由)
第二十条 思想及び良心の自由は、侵してはならない。

 

(信教の自由)
第二十一条 信教の自由は、何人に対しても保障する。いかなる宗教団体も、国家から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、儀式又は行事に参加すること、又はしないことを強制されることはない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他一切の宗教的活動をしてはならない。
4 公金その他の公の財産は、宗教上の組織の維持又は便宜のために支出し、又は提供してはならない。

 

(集会、結社、表現の自由、通信の秘密)
第二十二条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

 

(居住、移転、職業選択の自由)
第二十三条 何人も、居住、移転、職業選択の自由を侵されない。

 

(学問の自由)
第二十四条 学問の自由は、保障する。

 

(婚姻における個人の尊重と両性の平等)
第二十五条 婚姻は、両性の合意のみによつて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力によつて維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊重と両性の平等に立脚して、制定されなければならない。

 

(家族生活の保護)
第二十六条 国は、家族生活が社会の倫理的発展の健全な基礎となるように、これを保護する義務を負う。

 

(生存権、国の社会的使命)
第二十七条 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

(教育を受ける権利、教育の義務、最高教育の保障)
第二十八条 すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子供に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。
3 国は、法律の定めるところにより、国民がその能力を有する限り、最高の学校教育を受けることができるように措置しなければならない。

 

(教育の目標)
第二十九条 教育は、真理と正義を愛し、世界平和のための国際協力の理念並びにわが国の歴史と伝統を正しく尊重し、かつ、自主的で責任感をもつ創造的な国民を育成することを目標とする。
2 国は、学校教育が常に政治的中立を保つように努めなければならない。

 

(年少者、不具者の養護)
第三十条 すべての国民は、その子供が、心身の健全な成長を遂げるように、これを保護し、養育する権利を有し、義務を負う。
2 国は、児童及び不具者について、その養育及び保護が正しく行なわれるように意を用い、酷使その他不幸な状態に置かれることのないように努めなければならない。

 

(科学技術の助長)
第三十一条 国は、科学と技術の進歩が、文化の発展と福祉の増進の基本的条件であることに留意し、その育成助長に努めなければならない。

 

(文化財の保護)
第三十二条 国は、学芸の業績、歴史的遺跡、考古学的遺物及び風景その他この国土に特有の自然物の保存に努めなければならない。

 

(勤労の権利及び義務)
第三十三条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。

 

(勤労者の団結権)
第三十四条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動の権利は、保障する。
2 公務員及び公務員に準ずる者については、法律の定める範囲内で前項の権利を保障するものとする。

 

(順法の義務)
第三十五条 すべての国民は、憲法その他の法令を順守しなければならない。

 

(防衛義務)
第三十六条 すべての国民は、国を防衛する義務を負う。

 

(財産権)
第三十七条 財産権は、侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定める。
3 私有財産は、正当な補償をして、公共のために用いることができる。

 

(国民経済の基調)
第三十八条 国は、企業がその種類及び規模に応じ、それぞれ国民経済の発達に寄与するように、調和ある発達を図らなければならない。また、国は、国民経済について、急激な変動を避け、長期的安定を目途として、その発達を図るものとし、かつ、すべての国民の福祉の増進を目的として、自由かつ公正な事業活動の基礎の上に、富の公正な分配が行なわれるように努めなければならない。

 

(中小企業の保護)
第三十九条 国は、商業、工業、農業、漁業その他の産業における中小の企業が、国民経済の重要な基盤であることを認め、その自主的運営を確保するとともに、技術的改善の助長等により、その地位を安定するようにしなければならない。

 

(納税の義務)
第四十条 すべての国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 

(生命の不可侵及び強制労働の禁止)
第四十一条 何人も、犯罪に対する処罰のためにする場合を除いては、生命を奪われることがなく、また犯罪に対する処罰又は裁判所の裁判による保安処分のためにする場合を除いては、強制労働に服させられることはない。

 

(法定の手続の保障)
第四十二条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

(裁判を受ける権利)
第四十三条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。

 

(罪刑法定主義及び二重処罰の禁止)
第四十四条 何人も、行為前に施行されている法律で、これに対する処罰を定めている場合のほかは、その行為について刑罰を科せられることはない。
2 何人も、すでに裁判によつて無罪とされた行為について、改めて刑罰を科せられることなく、また、同一の行為について重ねて刑罰を科せられることはない。

 

(刑罰における人道主義)
第四十五条 刑罰は、人道に反する方法によつて苦痛を与えるものであつてはならない。

 

(人身の保護、公務員の権利濫用の禁止)
第四十六条 何人も、正当な理由がなくて人身を拘束されたと認める場合には、裁判又は第四十八条に規定する令状による拘束の場合を除いては、すみやかに自己及び弁護人の出席する公開の法廷でその理由を審査され、かつ、正当な理由のないことが明らかになつたときは、裁判所の命令によつて救済を与えられる権利を有する。
2 人身の拘束は、いかなる場合においても、人間の尊厳を傷つけるような方法で行なつてはならない。
3 公務員が権利の濫用によつて国民を圧迫することは、いかなる場合にも禁止する。

 

(人身拘束の際の理由の告知及び弁護の保障)
第四十七条 何人も、官憲によつて人身を拘束された場合には、直ちにその理由を告げられ、かつ、直ちに弁護人を依頼する機会を与えられる権利を有する。

 

(人身拘束の際の令状の保障)
第四十八条 何人も、現行犯の場合を除いては、司法官憲があらかじめ正当な理由に基づいて発する令状によらなければ、刑事手続のために人身を拘束されることはない。

 

(住居の不可侵)
第四十九条 何人も、現行犯人又は前条の令状にかかる者の逮捕に当つて必要な処分として行なわれるものを除いては、裁判官があらかじめ正当な理由に基づいて発し、かつ、捜査する場所及び押収する物を明示する令状によらなければ、その住居、身体又は書類その他の所持品について刑事手続のための侵入、捜査又は押収を受けることはない。
2 捜査又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により行なう。

 

(刑事被告人の権利)
第五十条 すべて刑事被告人は、公正な裁判所のすみやかな公開裁判を受ける権利を有する。刑事被告人を罪人として扱うことは、許されない。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与えられ、また、公費で自己のために、強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼できないときは、国がこれを附する。

 

(自己に不利益な供述、自白の証拠能力)
第五十一条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられることはない。

 

(裁判に関する国家補償)
第五十二条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 

(裁判の処理)
第五十三条 裁判所は、裁判を迅速かつ適確に行なうように努めなければならない。最高裁判所は、毎年一回、裁判事務の進捗状況を国会に報告しなければならない。

 

第三章 国会

 

(立法権)
第五十四条 立法権は、国会に属する。

 

(両院制)
第五十五条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

 

(衆議院の組織)
第五十六条 衆議院は、各選挙区から選挙され、全国民を代表する議員で組織する。
2 衆議院議員の被選挙権を有する者は、年齢満二十五年以上の者とする。
3 衆議院議員の任期は、四年とする。

 

(参議院の組織)
第五十七条 参議院は、広域別に比例代表制により選挙される議員及び推薦制により選任される議員で組織する。
2 広域別に選挙される議員の定数は、参議院議員の定員の五分の四以上とし、法律で定める。
3 内閣首相及び両議院の議長で構成する参議院議員推薦会議は、法律の定めるところにより、特定数の参議院議員を推薦によつて選任する。
4 参議院議員の被選挙権を有する者は、年齢満三十年以上の者とする。推薦によつて選任される議員の被選任権についても、同様とする。
5 参議院議員の任期は六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

 

(議員及び選挙人の資格、選挙に関する事項)
第五十八条 この憲法に定めるもののほか、両議院の議員及び選挙人の資格は、法律で定める。ただし、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別をしてはならない。
2 選挙区、議員の定数、投票の方法その他議員の選挙に関する事項は、法律で定める。

 

(両議院議員兼職の禁止)
第五十九条 何人も、同時に両議院の議員となることができない。

 

(両議院議員の宣誓)
第六十条 両議院の議員は、その就任の際に、次に掲げる宣誓をしなければ、議席につくことができない。
「私は、全国民の代表であることを自覚し、日本国憲法を守り、良心に従つて、世界の平和を守りつつ、もつぱら国民全体の幸福と公共の利益を目標として職務を行なうことを誓う。」

 

(議員の歳費)
第六十一条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

 

(議員の不逮捕特権)
第六十二条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

 

(議員の発言、表決の無責任)
第六十三条 両議院の議員は、議院で行なった演説又は表決について、院外で責任を問われない。

 

(常会)
第六十四条 国会の常会は、毎年一回召集する。

 

(臨時会)
第六十五条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

 

(資格争訟の裁判)
第六十六条 両議院は、おのおのその議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(定足数、表決)
第六十七条 両議院は、おのおのその総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

 

(会議の公開、会議録、表記の記載)
第六十八条 両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、おのおのその会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があるときは、各議院の表決における賛否の氏名は、会議録に記載しなければならない。

 

(役員の選任、議院規則、懲罰)
第六十九条 両議院は、おのおのその議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、おのおのその会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(法律案の議決、法律案議決に関する衆議院の優越、内閣首相の再議権)
第七十条 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、両議院の可決があったものとみなす。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会の休会中の期間を除いて五十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
5 両議院を通過した法律案について同意しがたいときは、内閣首相は、その送付を受けた日から国会の閉会中の期間を除いて十日以内に、理由を示して、これを再議に付することができる。両議院が、それぞれ出席議員の三分の二以上の多数で再び同じ議決をしたときは、その議決は、確定する。

 

(衆議院の予算先議、予算議決に関する衆議院の優越)
第七十一条 予算は、先に衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会の休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

(条約承認に関する衆議院の優越、自衛力発動宣言、外交使節選任に関する参議院の権能)
第七十二条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
2 自衛力の発動について、国際法上の宣言を発するには、国会の承認を経なければならない。
3 大使、公使、その他法律で定める外交使節の任命については、予め参議院の同意を経なければならない。

 

(閣僚の議院への出席)
第七十三条 内閣首相、内閣副首相又は内閣委員は、議案について発言するため議院に出席することを申し出ることができる。また、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

 

(国政調査、行政査察)
第七十四条 両議院は、おのおの国政に関する調査を行なうことができる。
2 両議院は、国政に関する調査のため必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を求めることができる。
3 両議院は、行政の非能率、国費の濫費、国民に対する不親切等について、査察を行なうことができる。

 

(質問)
第七十五条 行政上の情報を得るため、両議院の議員は、いつでも内閣首相、内閣副首相又は内閣委員に対し、質問を行なうことができる。

 

(弾劾裁判所)
第七十六条 国会は、解任の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律で定める。

 

第四章 内閣及び内閣首相

 

(行政権)
第七十七条 行政権は、内閣に属する。

 

(組織)
第七十八条 内閣は、この憲法及び法律の定めるところにより、内閣首相、内閣副首相及び内閣委員で組織する。

 

(内閣首相及び内閣副首相の選挙)
第七十九条 現に職にある内閣首相の任期の満了前二十日以上五十日以内において、衆議院議員の総選挙と同じ日に選挙を行ない、各政党の指名する内閣首相及び内閣副首相の候補者について選挙人が投票し、法律の定めるところによりそれぞれ過半数を得たものについて、天皇が任命する。
2 内閣首相及び内閣副首相の任期は四年とし、連続再選されることはできない。
3 出生によつて日本国民たる者で、年齢満三十五年に達した者は、内閣首相及び内閣副首相の候補者になることができる。
4 現役の軍人及び退職後三年を経過しない元軍人は、内閣首相又は内閣副首相の候補者となることができない。
5 この憲法に定めるもののほか、選挙人の資格その他選挙に関し必要な事項は、法律の定めるところによる。

 

(内閣首相の宣誓)
第八十条 内閣首相は、その職務を開始する前に、次に掲げる宣誓を行なわなければならない。
「私は内閣首相の職務を忠実に遂行し、日本国憲法を守り、全力をつくして国際平和と国民の福祉の増進に努力することを誓う。」

 

(内閣首相及び内閣副首相の報酬)
第八十一条 内閣首相及び内閣副首相は、その勤務に対して定期に報酬を受ける。その額は、その任期の間、増減されることはない。

 

(内閣首相、内閣副首相及び内閣委員の兼職禁止)
第八十二条 内閣首相、内閣副首相及び内閣委員は、国会議員その他いかなる官職をも兼ねることができない。
2 内閣首相、内閣副首相及び内閣委員は、営利を目的とする私企業に従事し、又は自ら営んではならない。
3 内閣首相、内閣副首相及び内閣委員は、報酬を得て、前項の営利企業以外の事業に従事してはならない。

 

(内閣首相の権限)
第八十三条 内閣首相は、内閣を代表して予算、条約その他の議案を国会に提出する。
2 内閣首相は、必要があると認めるときは、法律案の発議について国会に勧告することができる。
3 内閣首相は、少なくとも毎年一回、国政の状況について国会に報国しなければならない。

 

(内閣首相の解職の請求及び投票)
第八十四条 内閣首相の選挙権を有する者は、法律の定めるところにより、その総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、憲法評議会に対し、内閣首相の解職の請求をすることができる。
2 前項の請求があつたときは、憲法評議会は、これを選挙人の投票に付さなければならない。
3 内閣首相は、前項の規定による投票において、過半数の同意があつたときはその職を失う。

 

(内閣首相の職務代行)
第八十五条 内閣首相が、この憲法及びその他の法律の定めるところにより、免職され、死亡し、若しくは辞職し、又はその権限及び義務を遂行する能力を失つた場合には、その職務権限は、その残任期間、内閣副首相がこれを行なう。
2 内閣首相及び内閣副首相がともに欠け、又は無能力となつた場合には、法律の定める公務員が、内閣首相の職務を行なう。この公務員は、内閣首相又は内閣副首相の無能力の状態がなくなり、又は内閣首相が選任されるまで、その職務を行なう。

 

(内閣首相及び内閣副首相の不逮捕、不訴追の権)
第八十六条 内閣首相及び内閣副首相は、その在任中、逮捕され、又は訴追されることはない。

 

(内閣委員の任命及び解任)
第八十七条 内閣委員は、内閣首相の指名に基づいて、天皇が任命する。
2 現役の軍人及び退職後三年を経過しない元軍人は、内閣委員になることができない。
3 内閣委員は、内閣首相の申出に基づいて、天皇が解任する。

 

(内閣の行なう行政事務)
第八十八条 内閣は、一般行政事務のほか、左の事務を行なう。
 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
 二 予算を作成して国会に提出すること。
 三 外交関係を処理すること。
 四 条約を締結すること。ただし、事前に、事宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
 五 法律の定める基準に従い、公務員に関する事務を掌理すること。
 六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。ただし、事前に参議院の承認を経なければならない。

 

(緊急政令、財政処分)
第八十九条 天災地変その他異常な事態によつて大規模な社会的混乱が起こり、そのため公共の危害を生じ、又は急迫の危害を避ける必要がある場合において、国会が開かれていないときは、内閣は、憲法評議会の議決を経て、臨時に法律に代わる政令を発し、又は臨時に財政上必要な処分をすることができる。
2 前項の規定による政令又は財政上の処分は、その承認を得るため、二箇月以内に召集される国会に付議しなければならない。
3 第一項の規定による政令は、国会でこれを承認しない旨の議決があつたとき、又は国会の議決がされないままでその施行後三箇月を経過したときは、将来に向かつてその効力を失う。

 

(非常事態の宣言)
第九十条 前条の場合において、自衛軍の力によらなければ、公共の危害を避けることができないと認められる事情があるときは、内閣首相は、国会、又は国会を開くことができないときは憲法評議会の議決を経て、地域及び期間を定め、非常事態の宣言を発することができる。
2 内閣首相は、前項の規定により非常事態の宣言を発したときは、その承認を得るため、事後においてすみやかにこれを国会に付議しなければならない。国会でこれを承認しない旨の議決があつたときは、この宣言は、将来に向かつてその効力を失う。
3 非常事態中における行政事務は、法律の定めるところにより、必要やむを得ない範囲のものに限り、自衛軍によつて行なわれる。
4 非常事態にかかる地域については、やむを得ない事情のある場合に限り、住居の安全、居住、移転、国籍の離脱、集会、結社及び表現の自由、勤労者の利益擁護権、私有財産の保護、人身拘束の令状の保障並びに侵入、捜査及び押収の際の令状の保障の規定にかかわらず、法律で、これらの規定と異なる定めをすることができる。
5 前四項に規定するもののほか、非常事態の宣言に関し必要な事項は、法律で定める。

 

(非常時における議員任期の延長)
第九十一条 衆議院議員又は参議院議員の任期満了の際に、天災地変その他異常な事態による大規模な社会的混乱があつて、選挙を行なうことが困難と認められる事情があるときは、内閣首相は、憲法評議会の決議に基づいて、議員の任期を一定期間延長することができる。

 

(法律、政令の署名)
第九十二条 法律及び政令には、すべて主任の内閣委員が署名し、内閣首相が連署することを必要とする。

 

第五章 憲法評議会

 

(憲法評議会の構成)
第九十三条 現に職にある両議院の議長及びかつて内閣首相の地位に在つた者は、当然に憲法評議会の委員となる。
2 前項の委員のほか、衆議院議長、参議院議長は、それぞれ三名の委員を指名し、天皇が任命する。この六名の委員の任期は六年とし、三年ごとに二分の一を改選し、再選されることができない。
3 憲法評議会の議長は、委員が互選する。憲法評議会は、五名以上の委員の出席がなければ、議事を開き議決をすることができない。議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

 

(委員の兼職禁止)
第九十四条 前条第二項による憲法評議会の委員の職は、内閣首相、内閣副首相、内閣委員又は国会議員及び法律の定めるその他の職と兼ねることができない。

 

(憲法評議会の権限)
第九十五条 憲法評議会は、内閣首相及び内閣副首相の選挙の適法性を監視し、その結果を発表する。
2 憲法評議会は、法律の定めるところにより、前項の選挙に関する異議について審査する。
3 憲法評議会は、法律の定めるところにより、国民投票の執行の適法性を監視し、その結果を発表する。

 

第九十六条 法律又は条約がこの憲法に違反する疑があるときは、内閣首相、いずれかの議院の議長又は五十人以上の議員は、法律については公布前、条約についてはその発効前に、当該の法律又は条約がこの憲法に違反するかどうかの裁定を、憲法評議会に要求することができる。
2 前項の場合において、憲法評議会は、要求の日から一箇月以内に裁定しなければならない。ただし、緊急の必要があるときは、政府の要求に基づき、当該期間を八日とすることができる。
3 第一項の要求があつた場合には、当該の法律又は条約が、この憲法に違反しない旨の憲法評議会の裁定があるまでは、これを公布し、又は発効させてはならない。

 

第六章 司法

 

(司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立)
第九十七条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行なうことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行ない、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

(最高裁判所の規則制定権)
第九十八条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判官の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 

(裁判官の身分の保障)
第九十九条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務をとることができないと決定された場合を除いては、公けの弾劾によらなければ解任されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関が行なうことはできない。

 

(最高裁判所の裁判官、定年、報酬)
第百条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成する。
2 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
3 最高栽判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、減額することができない。

 

(下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬)
第百一条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣が任命する。この裁判官の任期は十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、減額することができない。

 

(裁判の公開)
第百二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷で行なう。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公けの秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決定した場合には、対審は、公開しないで行なうことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第二章で保障する国民の権利が問題となつている事件の対審は、常に公開しなければならない。

 

第七章 財政

 

(財政処理の基本原則)
第百三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、行使しなければならない。

 

(課税)
第百四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 

(国費の支出及び国の債務負担)
第百五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

 

(予算)
第百六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

 

(予備費)
第百七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

 

(皇室財産、皇室の費用)
第百八条 すべての皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

 

(決算検査、会計検査院)
第百九条 国の歳入算出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。

 

(財政状況の報告)
第百十条 内閣は、国会に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国家の財政状況について報告しなければならない。

 

第八章 防衛

 

(国際平和機構に対する協力)
第百十一条 国は、平和を維持するため、国際的な相互集団安全保障制度に参加することができる。国は、平和で永続的な秩序を世界諸国にもたらし、かつ保障するような主権の制限に、他国とともに同意することができる。

 

(戦争の禁止)
第百十二条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に禁止する。

 

(自衛軍の性格と任務)
第百十三条 自衛軍は、国の安全と独立を確保し、及び国際平和機構に協力するため必要最小限度の戦力を保持する。
2 自衛軍の編成及び配備は、法律で定める。
3 自衛軍は、侵略に対する防衛又は国際平和機構に協力する場合にのみ軍事行動をとるものとする。

 

(自衛軍の最高指揮権)
第百十四条 自衛軍の最高指揮権は、内閣首相に属する。

 

(自衛軍の人事)
第百十五条 法律の定める自衛軍幹部の選任については、あらかじめ参議院の同意を得なければならない。

 

(自衛軍の出動)
第百十六条 内閣首相が、侵略に対し国の安全と独立を防衛し又は国際平和機構に協力するため、自衛軍に出動を命ずる場合には、国会の、国会の閉会中は憲法評議会の承認を得なければならない。
2 内閣首相は、国会の閉会中に、憲法評議会の承認を得て自衛軍に出動を命じた場合には、すみやかに国会を召集して、その承認を求めなければならない。この場合において、不承認の議決があつたときは、内閣首相は、直ちに自衛軍の撤収を命じなければならない。

 

(軍人の地位)
第百十七条 軍人については、軍隊の規律を保ち、その任務を遂行するに必要な限度において、第二章の規定の適用を排除することができる。
2 軍人については、第九十七条第二項の規定にかかわらず、法律の定めるところにより、特別裁判所を設けることができる。

 

第九章 地方自治

 

(地方自治の基本原則)
第百十八条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。

 

(地方公共団体の機関、その直接選挙)
第百十九条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接選挙する。

 

(地方公共団体の権能)
第百二十条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 

(特別法の住民投票)
第百二十一条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民投票において、その過半数の同意を得なければ、国会は、制定することができない。

 

第十章 改正

 

(改正の手続)
第百二十二条 この憲法の改正は、各議院の総議員の五分の三以上の賛成によるか、又は選挙人の三分の一以上の連署によつて発議され、国民投票に付して、その過半数の賛成による承認を経なければならない。

 

(改正の公布)
第百二十三条 憲法改正について前条の承認を得たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体をなすものとして、直ちにこれを公布する。

 

第十一章 補則

 

(施行期日、準備手続)
第百二十四条 この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、施行する。
2 この憲法を施行するために、必要な法律の制定、参議院議員の選挙、憲法評議会委員の指名並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日より前にも、行なうことができる。

 

中曽 根康弘(なかそね やすひろ)
1918年生まれ。
東京大学法学部卒業。
元衆議院議員、元首相・自民党総裁。

 

世界平和研究所憲法改正試案

 

平成十七年一月 世界平和研究所(中曽根康弘主宰)

 

前文

 我ら日本国民は、アジアの東、太平洋の波洗う美しい北東アジアの島々に歴代相承け、天皇を国民統合の象徴として戴き、独自の文化と固有の民族生活を形成し発展してきた。
 我らは今や、長い歴史の上に、新しい国家の体制を整え、自主独立を維持し、人類共生の理想を実現する。
 我が日本国は、国民が主権を有する民主主義国家であり、国政は国民の信頼に基づき国民の代表者が担当し、その成果は国民が享受する。
 我らは自由・民主・人権・平和の尊重を基本に、国の体制を堅持する。
 我らは国際社会において、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、その実現に貢献する。
 我らは自由かつ公正で活力ある日本社会の発展と国民福祉の増進に努め、教育を重視するとともに、自然との共生を図り、地球環境の保全に力を尽くす。
 また世界に調和と連帯をもたらす文化の重要性を認識し、自国の文化とともに世界文化の創成に積極的に寄与する。
 我ら日本国民は、大日本帝国憲法及び日本国憲法の果たした歴史的意義を想起しつつ、ここに新時代の日本国の根本規範として、我ら国民の名において、この憲法を制定する。

 

憲法改正試案

 

(天皇の地位)
第一条 天皇は、国民に主権の存する日本国の元首であり、国民統合の象徴である。

 

第一章 国民主権

 

(国民主権、主権の行使方法)
第二条 日本国の主権は国民に存し、国民は国会における代表者及び国民投票によって主権を行使する。

 

(選挙)
第三条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利であり、責務である。
2 公務員の選挙については、成年者による普通選挙、自由選挙及び秘密選挙並びに投票価値の平等を保障する。
3 選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。

 

(政党)
第四条 国民は自由に政党を結成することができる。
2 政党は国民主権の原理を尊重するとともに、国民の政治的意思形成に協力し、民主政治の発展に努めなければならない。

 

(国の説明責任)
第五条 国は、国民の主権の行使に資するため、法律の定めるところにより、国務に係る情報の開示を行い、国民に対して説明責任を果たさなければならない。

 

第二章 天皇

 

(皇室典範)
第六条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

 

(天皇の権能)
第七条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
3 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣総理大臣の助言と承認を必要とし、内閣総理大臣がその責任を負う。

 

(摂政)
第八条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

 

(天皇の任命権)
第九条 天皇は、衆議院の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、国会の指名に基づいて、憲法裁判所の長たる裁判官を任命する。
3 天皇は、内閣総理大臣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

 

(天皇の国事行為)
第十条 天皇は、内閣総理大臣の助言と承認により、国民のために、次の国事に関する行為を行う。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会召集の詔書を発すること。
 三 衆議院の解散詔書を発すること。
 四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の公務員の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行うこと。

 

第三章 安全保障及び国際協力

 

(戦争放棄、安全保障、防衛軍、国際平和等の活動への参加、文民統制)
第十一条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に認めない。
2 日本国は、自らの平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、防衛軍をもつ。
3 日本国は、国際の平和及び安全の維持、並びに人道上の支援のため、国際機関及び国際協調の枠組みの下での活動に、防衛軍を参加させることができる。
4 防衛軍の指揮監督権は、内閣総理大臣に属する。防衛軍に武力の行使を伴う活動を命ずる場合には、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を得なければならない。

 

第四章 国民の権利及び義務

 

(国民の要件)
第十二条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

 

(基本的人権)
第十三条 何人も、生来の権利として、すべての基本的人権を享有する。この憲法が保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。
2 前項の権利は、権利の性質上制約されるものを除き、外国人に対してもひとしく保障される。

 

(自由及び権利)
第十四条 この憲法が保障する自由及び権利は、各人の不断の努力によって保持するとともに、これを濫用してはならない。
2 何人も、相互に自由及び権利を尊重しなければならない。

 

(個人の尊重及び生命、自由、幸福追求権)
第十五条 すべて人は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福を追求する権利については、公共の利益に反しない限り、立法その他の国政の上で、最も尊重されなければならない。

 

(法の下の平等)
第十六条 すべて人は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、住所又は社会的身分により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄誉、勲章その他の栄典の内容は法律でこれを定める。
4 栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

(公務員の本質)
第十七条 すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。常に公務員は、この憲法が保障する自由及び権利の実現に努めなければならない。

 

(思想及び良心の自由)
第十八条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

 

(信教の自由、公的支出の禁止)
第十九条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、特定の宗教を援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるような宗教的活動をしてはならない。

 

(表現の自由)
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

(学問の自由、創造活動の自由)
第二十二条 学問の自由は、これを保障する。
2 芸術、学術、科学技術及びその他のそう芸術、学術、科学技術及びその他の創造活動の自由は、これを保障する。知的財産権は法律の定めるところにより保護される。

 

(人格権)
第二十三条 何人も、自己の名誉、信用その他の人格を不当に侵害されない。
2 何人も、自己の私事及び家庭にみだりに干渉されず、また第三者に公開されない権利を有する。

 

(苦役からの自由)
第二十四条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

 

(居住及び移転の自由)
第二十五条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。

 

(職業選択及び営業の自由)
第二十六条 何人も、公共の利益に反しない限り、職業選択及び営業の自由を有する。

 

(財産権)
第二十七条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の利益に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。

 

(家庭、家族関係における個人の尊厳と両性の平等)
第二十八条 家庭は社会を構成する基本的な単位である。何人も、各自、その属する家族の維持及び形成に努めなければならない。
2 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚するものであり、国家はこれを保護する。
4 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 

(生存権、国の努力義務)
第二十九条 何人も健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

(環境権)
第三十条 何人も、良好な環境を享受する権利を有し、その保全に努める義務を負う。
2 国は、良好な環境の保全に努めなければならない。

 

(教育を受ける権利)
第三十一条 すべて何人は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて何人は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。

 

(勤労の権利及び義務)
第三十二条 すべて何人は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

 

(労働者の団結権)
第三十三条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

 

(納税の義務)
第三十四条 何人は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 

(平和と独立を守る責務)
第三十五条 すべて国民は、国の平和と独立を守る責務を負う。

 

(法定手続きの保障)
第三十六条 何人も、適正な法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰及び行政処分を科せられない。

 

(裁判を受ける権利)
第三十七条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を保障される。

 

(逮捕の要件)
第三十八条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する裁判官が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

 

(留置又は勾留の要件)
第三十九条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は勾留されない。又、何人も、正当な理由がなければ、勾留されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

 

(住居の不可侵)
第四十条 何人も、第三十八条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることはない。
2 捜索又は押収は、顕現を有する裁判官が発する各別の令状により、行わなければならない。

 

(拷問及び残虐刑の禁止)
第四十一条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

 

(刑事被告人等の権利)
第四十二条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人及び勾留された被疑者は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

 

(刑事被告人の権利)
第四十三条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く留置又は勾留された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 

(遡及処罰の禁止、一事不再理)
第四十四条 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

 

(刑事補償請求権)
第四十四条 何人も、留置又は勾留された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 

(請願権)
第四十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

 

(国家賠償請求権)
第四十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

 

第五章 国会

 

(立法権)
第四十八条 立法権は国会に属する。

 

(両院制)
第四十九条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

 

(両議院の組織)
第五十条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

 

(議員及び選挙人の資格)
第五十一条 両議院の議員及び選挙人の資格は、法律で定める。ただし、人種、信条、性別、住所、社会的身分、教育財産又は収入によって差別してはならない。

 

(衆議院議員の任期)
第五十二条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

 

(参議院議員の任期)
第五十三条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

 

(選挙に関する事項)
第五十四条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。ただし、衆議院議員は、国民が直接選挙しなければならない。

 

(両議院議員の兼職の禁止)
第五十五条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

 

(議員の歳費)
第五十六条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

 

(議員の不逮捕特権)
第五十七条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

 

(議員の発言及び表決の無責任)
第五十八条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。

 

(常会)
第五十九条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。

 

(臨時会)
第六十条 内閣総理大臣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣総理大臣は、その召集を決定しなければならない。

 

(衆議院の解散、特別会、参議院の緊急集会)
第六十一条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は同時に閉会となる。ただし、内閣総理大臣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

 

(資格争訟の裁判)
第六十二条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(定足数、表決)
第六十三条 両議院は、各々その総議員の三分の二以上の出席がなければ議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の規定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

 

(会議の公開、秘密会、会議の記録)
第六十四条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

 

(役員の選任、議院規則)
第六十五条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(法律案の議決、衆議院の優越)
第六十六条 法律案は、この憲法に特別の規定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 第二項の規定による衆議院の再議決は、参議院の議決後、国会休会中の期間を除いて六十日を経なければならない。
5 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

 

(衆議院の予算案先議、衆議院の優越)
第六十七条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。
2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

(条約の承認、衆議院の優越)
第六十八条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

(公務員の任命への同意)
第六十九条 法律で定める重要な公務員の任命については、参議院の同意を得なければならない。

 

(国政調査権)
第七十条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。この調査は、各々その総議員の十分の一以上の賛成があるときには、行わなければならない。
2 両議院は、前項の調査を行った場合には、その結果の記録を保存し、特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表しなければならない。

 

(閣僚の議会での答弁の義務と議会出席の権利)
第七十一条 両議院は、内閣総理大臣及び国務大臣に対して、答弁又は説明のため出席を求めることができる。内閣総理大臣及び国務大臣は出席を求められたときは、出席しなければならない。
2 また、内閣総理大臣及び国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案の内容及びその取扱いについて発言するため議院に出席することができる。

 

(弾劾裁判諸)
第七十二条 参議院に、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、参議院議員で構成される弾劾裁判所を設ける。
2 衆議院に、前項の訴追のため、衆議院議員で構成される訴追委員会を置く。
3 訴追及び弾劾に関する事項は、法律で定める。

 

第六章 内閣総理大臣

 

(行政権、国会への責任)
第七十三条 行政権は、内閣総理大臣に属する。
2 内閣総理大臣は、行政権の行使について、国会に対し責任を負う。

 

(内閣総理大臣の推挙)
第七十四条 総選挙は、衆議院議員選出と内閣総理大臣推挙のために行われる。
2 政党は、総選挙に際し、内閣総理大臣候補を明示しなければならない。

 

(内閣総理大臣の指名)
第七十五条 内閣総理大臣は、衆議院議員の中から衆議院の議決で指名する。この指名は他のすべての案件に先立って行う。
2 前項の指名にあたって、過半数の得票者のない場合には、投票の最多数を得た者二人につき、更に投票を行い、多数の得票を得た者を指名することとする。

 

(内閣総理大臣の解散権、内閣総理大臣不信任決議)
第七十六条 内閣総理大臣は衆議院を解散することができる。
2 内閣総理大臣は、衆議院で不信任決議が可決され、又は信任の決議案が否決されたときは、衆議院を解散しなければならない。

 

(内閣の構成)
第七十七条 内閣は、法律の定めるところにより、内閣総理大臣及びこれを補佐する国務大臣で構成される。
2 内閣総理大臣及び国務大臣は、文民でなければならない。

 

(国務大臣の任命及び罷免)
第七十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

 

(内閣の総辞職)
第七十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
2 前項の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続き憲法の定める職務を行う。

 

(内閣総理大臣の臨時代理)
第八十条 内閣総理大臣に事故あるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、そのあらかじめ指定する国務大臣が内閣総理大臣の職務を行う。

 

(内閣総理大臣の職務権限)
第八十一条 内閣総理大臣は、内閣の重要事項に関する基本方針を定め、これについて責任を負う。
2 内閣総理大臣は、法律案、予算案その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。
3 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督する。

 

(国務大臣の職務権限)
第八十二条 国務大臣は、法律の定めるところにより、主任の大臣として行政事務を分担管理する。
2 国務大臣は、内閣総理大臣が定めた基本方針に基づき、自らの責任において、自己の分担する行政事務を行う。

 

(内閣総理大臣の職務)
第八十三条 内閣総理大臣は、国務大臣の補佐を受けて、他の一般行政事務のほか、次の事務を行う。
 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
 二 外交関係を処理すること。
 三 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を得ることを必要とする。
 四 法律の定める基準に従い、公務員に関する事務を掌理すること。
 五 予算案を作成すること。
 六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
 七 大赦、特赦、原型、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

 

(国民投票)
第八十四条 内閣総理大臣は、自ら提出した法律案について、国民投票に付託することができる。
2 前項の場合には、それに先立って、両議院において、各々その総議員の三分の一以上の同意を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、国民投票の結果を国会に説明する義務を負う。
4 国会は、法律案が国民投票に付された場合には、その結果にしたがわなければならない。
5 国民投票に関する事項は、法律で定める。

 

(法律及び政令への署名)
第八十五条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

 

(国務大臣の特権)
第八十六条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

 

(緊急事態の宣言、指揮監督権)
第八十七条 内閣総理大臣は、国の独立と安全又は多数の国民の生命、身体若しくは財産が侵害され、又は侵害される恐れがある事態が発生し、その事態が重大で緊急に対処する必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、全国又は一部地域について、緊急事態の宣言を発することができる。
2 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発した場合には、法律に基づき、防衛軍のほか、警察、海上保安、消防その他の行政機関を統制するとともに、地方公共団体の長を直接指示することができる。

 

(国会承認と宣言の解除)
第八十八条 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発したときは、二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。衆議院が解散されているときは、緊急集会による参議院の承認を求めなければならない。
2 内閣総理大臣は、国会が緊急事態の宣言を承認しなかったとき、又は宣言の必要がなくなったときは、すみやかに宣言を解除しなければならない。

 

(緊急措置、基本的人権の尊重、公正な手続き)
第八十九条 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発した場合には、国民の生命、身体又は財産を守るために必要最小限のものと法律が認める範囲内で、この憲法が保障する自由及び権利を制限する緊急の措置をとることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の措置をとる場合には、基本的人権を尊重しなければならない。
3 第一項の措置は、公正かつ適正な手続きの下に行われるものとし、その実施に係る国民の権利利益の救済に係る手続きについても、迅速に処理されなければならない。

 

第七章 裁判所

 

(司法権、特別裁判所の禁止、裁判官の職務上の独立)
第九十条 すべて司法権は、憲法裁判所、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

(憲法裁判所の違憲審査権)
第九十一条 憲法裁判所は、一切の条約、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

 

(憲法裁判所の管轄)
第九十二条 憲法裁判所は、次の事項を管轄する。
 一 条約、法律、命令、規則又は処分について、内閣又はいずれかの議院の総議員の三分の一以上の申し立てがあった場合に、法律の定めるところにより、憲法に適合するかしないかを審判すること。
 二 具体的訴訟事件で、最高裁判所又は下級裁判所が求める事項について、法律の定めるところにより、憲法に適合するかしないかを審判すること。
 三 具体的訴訟事件の当事者が最高裁判所の憲法判断に異議がある場合に、法律の定めるところにより、その異議の申し立てについて、審判すること。

 

(憲法裁判所の違憲判断の効力)
第九十三条 憲法裁判所が、条約、法律、命令、規則又は処分について、憲法に適合しないと決定した場合には、その決定は、それ以降、国及び地方公共団体を拘束する。

 

(憲法裁判所の裁判官、任期、報酬)
第九十四条 憲法裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、半数ずつ、国会及び内閣総理大臣が任命する。
2 憲法裁判所の裁判官は、任期を十年として、再任されない。
3 憲法裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 

(最高裁判所の裁判官、任期、報酬)
第九十五条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣総理大臣が任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。
3 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

(下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬)
第九十六条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣総理大臣が任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律に定める年齢に達した時に退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 

(最高裁判所、憲法裁判所の規則制定権)
第九十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 前項のうち、憲法裁判所に関する事項については、憲法裁判所がその規則を定める権限を有する。
3 検察官は、憲法裁判所及び最高裁判所が定める規則に従わなければならない。
4 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 

(裁判官の身分保障)
第九十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。

 

(裁判の公開)
第九十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 

第八章 財政

 

(財政処理の基本原則)
第百条 国の財政は、国会の議決に基づいて、内閣総理大臣が処理する。
2 国は、健全な財政の維持及び運営に努めなければならない。

 

(課税)
第百一条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 

(国費の支出及び国の債務処理)
第百二条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

 

(予算案、継続費)
第百三条 内閣総理大臣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2 特別に継続支出の必要があるときは、年限を定め、継続費として国会の議決を経なければならない。

 

(予備費)
第百四条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣総理大臣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣総理大臣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

 

(皇室財産)
第百五条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

 

(公の財産の用途制限)
第百六条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育又は博愛の事業であって、法律で定めるものに対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 

(決算検査、会計検査院)
第百七条 国の収入支出の決算は、すべて毎年毎会計検査院がこれを検査し、内閣総理大臣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

 

(財政状況の報告)
第百八条 内閣総理大臣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

 

第九章 地方自治

 

(地方自治の基本原則)
第百九条 地方自治は、地方公共団体及びその住民が、地域における住民の日常生活に密接な関連性を有する事務を、自らの意思及び責任において行うことを原則とする。
2 地方公共団体の組織、権能及び運営に関する事項は、前項の原則を尊重し、法律でこれを定める。

 

(地方議会、長・議員等の直接選挙)
第百十条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その他の議会の議員及び法律で定めるその他の公務員は、その地方公共団体の住民が、直接選挙する。

 

(地方公共団体の権能、条例制定権、課税権)
第百十一条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の趣旨の範囲内で条例を制定することができる。
2 地方公共団体は自らの権能の実施のために、条例により租税を課すことができる。また、その財源は健全に維持及び運営されなければならない。

 

(特別法の住民投票)
第百十二条 特定の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 

第十章 改正

 

(改正の手続き及び公布)
第百十三条 この憲法の改正は、各議院の総議員の過半数の賛成で、国会が発議し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法の改正について前項の承認を得たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

 

第十一章 最高法規

 

(憲法の最高性)
第百十四条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する条約、法律、命令及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

 

(国際法規の遵守)
第百十五条 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 

(憲法尊重擁護義務)
第百十六条 天皇又は摂政及び内閣総理大臣、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員を尊重し擁護する義務を負う。

 

日本国憲法改正草案

 

平成二十四年四月二十七日(決定)
自由民主党

 

目次

 前文
 第一章 天皇(第一条―第八条)
 第二章 安全保障(第九条―第九条の三)
 第三章 国民の権利及び義務(第十条―第四十条)
 第四章 国会(第四十一条―第六十四条の二)
 第五章 内閣(第六十五条―第七十五条)
 第六章 司法(第七十六条―第八十二条)
 第七章 財政(第八十三条―第九十一条)
 第八章 地方自治(第九十二条―第九十七条)
 第九章 緊急事態(第九十八条―第九十九条)
 第十章 改正(第百条)
 第十一章 最高法規(第百一条・第百二条)

 

前文

 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
 我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
 我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
 日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

 

日本国憲法改正草案

 

第一章 天皇

 

(天皇)
第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

 

(皇位の継承)
第二条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

 

(国旗及び国歌)
第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。

 

(元号)
第四条 元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する。

 

(天皇の権能)
第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。

 

(天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。
2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行うこと。
3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。
4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
5 第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。

 

(摂政)
第七条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。
2 第五条及び前条第四項の規定は、摂政について準用する。

 

(皇室への財産の譲渡等の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。

 

第二章 安全保障

 

(平和主義)
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

 

(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

 

(領土等の保全等)
第九条の三 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

 

第三章 国民の権利及び義務

 

(日本国民)
第十条 日本国民の要件は、法律で定める。

 

(基本的人権の享有)
第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

 

(国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

 

(人としての尊重等)
第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

 

(法の下の平等)
第十四条 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

(公務員の選定及び罷免に関する権利等)
第十五条 公務員を選定し、及び罷免することは、主権の存する国民の権利である。
2 全て公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選定を選挙により行う場合は、日本国籍を有する成年者による普通選挙の方法による。
4 選挙における投票の秘密は、侵されない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。

 

(請願をする権利)
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。
2 請願をした者は、そのためにいかなる差別待遇も受けない。

 

(国等に対する賠償請求権)
第十七条 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方自治体その他の公共団体に、その賠償を求めることができる。

 

(身体の拘束及び苦役からの自由)
第十八条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
2 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

 

(思想及び良心の自由)
第十九条 思想及び良心の自由は、保障する。

 

(個人情報の不当取得の禁止等)
第十九条の二 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。

 

(信教の自由)
第二十条 信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。

 

(表現の自由)
第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

 

(国政上の行為に関する説明の責務)
第二十一条の二 国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。

 

(居住、移転及び職業選択等の自由等)
第二十二条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。

 

(学問の自由)
第二十三条 学問の自由は、保障する。

 

(家族、婚姻等に関する基本原則)
第二十四条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 

(生存権等)
第二十五条 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

(環境保全の責務)
第二十五条の二 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。

 

(在外国民の保護)
第二十五条の三 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。

 

(犯罪被害者等への配慮)
第二十五条の四 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。

 

(教育に関する権利及び義務等)
第二十六条 全て国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
2 全て国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。
3 国は、教育が国の未来を切り拓ひらく上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。

 

(勤労の権利及び義務等)
第二十七条 全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
3 何人も、児童を酷使してはならない。

 

(勤労者の団結権等)
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。
2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。

 

(財産権)
第二十九条 財産権は、保障する。
2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
3 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

 

(納税の義務)
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 

(適正手続の保障)
第三十一条 何人も、法律の定める適正な手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

(裁判を受ける権利)
第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する。

 

(逮捕に関する手続の保障)
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

 

(抑留及び拘禁に関する手続の保障)
第三十四条 何人も、正当な理由がなく、若しくは理由を直ちに告げられることなく、又は直ちに弁護人に依頼する権利を与えられることなく、抑留され、又は拘禁されない。
2 拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有する。

 

(住居等の不可侵)
第三十五条 何人も、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所及び押収する物を明示する令状によらなければ、住居その他の場所、書類及び所持品について、侵入、捜索又は押収を受けない。ただし、第三十三条の規定により逮捕される場合は、この限りでない。
2 前項本文の規定による捜索又は押収は、裁判官が発する各別の令状によって行う。

 

(拷問及び残虐な刑罰の禁止)
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、禁止する。

 

(刑事被告人の権利)
第三十七条 全て刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 被告人は、全ての証人に対して審問する機会を十分に与えられる権利及び公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは国でこれを付する。

 

(刑事事件における自白等)
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 拷問、脅迫その他の強制による自白又は不当に長く抑留され、若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされない。

 

(遡及処罰等の禁止)
第三十九条 何人も、実行の時に違法ではなかった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。

 

(刑事補償を求める権利)
第四十条 何人も、抑留され、又は拘禁された後、裁判の結果無罪となったときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 

第四章 国会

 

(国会と立法権)
第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

 

(両議院)
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

 

(両議院の組織)
第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律で定める。

 

(議員及び選挙人の資格)
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

 

(衆議院議員の任期)
第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前に終了する。

 

(参議院議員の任期)
第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

 

(選挙に関する事項)
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。

 

(両議院議員兼職の禁止)
第四十八条 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。

 

(議員の歳費)
第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

 

(議員の不逮捕特権)
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があるときは、会期中釈放しなければならない。

 

(議員の免責特権)
第五十一条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。

 

(通常国会)
第五十二条 通常国会は、毎年一回召集される。
2 通常国会の会期は、法律で定める。

 

(臨時国会)
第五十三条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。

 

(衆議院の解散と衆議院議員の総選挙、特別国会及び参議院の緊急集会)
第五十四条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。
2 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別国会が召集されなければならない。
3 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
4 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

 

(議員の資格審査)
第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関し争いがあるときは、これについて審査し、議決する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(表決及び定足数)
第五十六条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない。

 

(会議及び会議録の公開等)
第五十七条 両議院の会議は、公開しなければならない。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除き、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があるときは、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。

 

(役員の選任並びに議院規則及び懲罰)
第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、並びに院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(法律案の議決及び衆議院の優越)
第五十九条法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

 

(予算案の議決等に関する衆議院の優越)
第六十条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。
2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

(条約の承認に関する衆議院の優越)
第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

 

(議院の国政調査権)
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

 

(内閣総理大臣等の議院出席の権利及び義務)
第六十三条 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、議案について発言するため両議院に出席することができる。
2 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。

 

(弾劾裁判所)
第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律で定める。

 

(政党)
第六十四条の二 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。
2 政党の政治活動の自由は、保障する。
3 前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。

 

第五章 内閣

 

(内閣と行政権)
第六十五条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。

 

(内閣の構成及び国会に対する責任)
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で構成する。
2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

 

(内閣総理大臣の指名及び衆議院の優越)
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する。
2 国会は、他の全ての案件に先立って、内閣総理大臣の指名を行わなければならない。
3 衆議院と参議院とが異なった指名をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。

 

(国務大臣の任免)
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から任命しなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

 

(内閣の不信任と総辞職)
第六十九条 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 

(内閣総理大臣が欠けたとき等の内閣の総辞職等)
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
2 内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。

 

(総辞職後の内閣)
第七十一条 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う。

 

(内閣総理大臣の職務)
第七十二条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。
2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。
3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。

 

(内閣の職務)
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。
 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
 二 外交関係を処理すること。
 三 条約を締結すること。ただし、事前に、やむを得ない場合は事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
 四 法律の定める基準に従い、国の公務員に関する事務をつかさどること。
 五 予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。
 六 法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、
 又は権利を制限する規定を設けることができない。
 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

 

(法律及び政令への署名)
第七十四条 法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

 

(国務大臣の不訴追特権)
第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、公訴を提起されない。ただし、国務大臣でなくなった後に、公訴を提起することを妨げない。

 

第六章 司法

 

(裁判所と司法権)
第七十六条 全て司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、最終的な上訴審として裁判を行うことができない。
3 全て裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

(最高裁判所の規則制定権)
第七十七条 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 

(裁判官の身分保障)
第七十八条 裁判官は、次条第三項に規定する場合及び心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、第六十四条第一項の規定による裁判によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。

 

(最高裁判所の裁判官)
第七十九条 最高裁判所は、その長である裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長である裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。
3 前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。
4 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
5 最高裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない。

 

(下級裁判所の裁判官)
第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、法律の定める任期を限って任命され、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には、退官する。
2 前条第五項の規定は、下級裁判所の裁判官の報酬について準用する。

 

(法令審査権と最高裁判所)
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である。

 

(裁判の公開)
第八十二条 裁判の口頭弁論及び公判手続並びに判決は、公開の法廷で行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、口頭弁論及び公判手続は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の口頭弁論及び公判手続は、常に公開しなければならない。

 

第七章 財政

 

(財政の基本原則)
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。
2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。

 

(租税法律主義)
第八十四条 租税を新たに課し、又は変更するには、法律の定めるところによることを必要とする。

 

(国費の支出及び国の債務負担)
第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

 

(予算)
第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。
2 内閣は、毎会計年度中において、予算を補正するための予算案を提出することができる。
3 内閣は、当該会計年度開始前に第一項の議決を得られる見込みがないと認めるときは、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない。
4 毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。

 

(予備費)
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 全て予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

 

(皇室財産及び皇室の費用)
第八十八条 全て皇室財産は、国に属する。全て皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。

 

(公の財産の支出及び利用の制限)
第八十九条 公金その他の公の財産は、第二十条第三項ただし書に規定する場合を除き、宗教的活動を行う組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため支出し、又はその利用に供してはならない。
2 公金その他の公の財産は、国若しくは地方自治体その他の公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。

 

(決算の承認等)
第九十条 内閣は、国の収入支出の決算について、全て毎年会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、
次の年度にその検査報告とともに両議院に提出し、その承認を受けなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。
3 内閣は、第一項の検査報告の内容を予算案に反映させ、国会に対し、その結果について報告しなければならない。

 

(財政状況の報告)
第九十一条 内閣は、国会に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

 

第八章 地方自治

 

(地方自治の本旨)
第九十二条 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。
2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う。

 

(地方自治体の種類、国及び地方自治体の協力等)
第九十三条 地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。
2 地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。
3 国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない。

 

(地方自治体の議会及び公務員の直接選挙)
第九十四条 地方自治体には、法律の定めるところにより、条例その他重要事項を議決する機関として、議会を設置する。
2 地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する。

 

(地方自治体の権能)
第九十五条 地方自治体は、その事務を処理する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 

(地方自治体の財政及び国の財政措置)
第九十六条 地方自治体の経費は、条例の定めるところにより課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。
2 国は、地方自治体において、前項の自主的な財源だけでは地方自治体の行うべき役務の提供ができないときは、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講じなければならない。
3 第八十三条第二項の規定は、地方自治について準用する。

 

(地方自治特別法)
第九十七条 特定の地方自治体の組織、運営若しくは権能について他の地方自治体と異なる定めをし、又は特定の地方自治体の住民にのみ義務を課し、権利を制限する特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票において有効投票の過半数の同意を得なければ、制定することができない。

 

第九章 緊急事態

 

(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

 

(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

 

第十章 改正

 

(改正)
第百条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。

 

第十一章 最高法規

 

(憲法の最高法規性等)
第百一条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 

(憲法尊重擁護義務)
第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

 
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昭和12年学会
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