異例の財務官4年経験の浅川雅嗣氏、その人物像に迫る

 

財務省

異例の財務官4年経験の浅川雅嗣氏、麻生太郎氏が総理大臣だっときの秘書官でもありました。

 

ここでは、浅川雅嗣氏とはどういう人物なのかをご紹介します。

 

 

 

浅川雅嗣氏とは

経歴

浅川雅嗣氏は、「あさかわ まさつぐ」という名前です。

 

昭和56(1981)年に、東大経済学部を卒業し、旧大蔵省に入省しました。

 

大蔵省で出世していくには東大法学部卒業というのが一つの条件のようにもなっています。
しかし、その点については、東大経済学部卒業となります。

 

最終的には、国際系の財務官僚として出世していきました。

 

 

財務省での役割

内閣総理大臣秘書官(麻生内閣)

麻生政権のときは、財務省事務次官が杉本和行氏で、のちの安倍政権の消費税8%や10%に至る伏線をここで引いていました。

 

それは「附則104条」というものです。

 

その時の内閣総理大臣秘書官が浅川雅嗣氏でした。

 

大臣官房総括審議官

平成25(2013)年に大臣官房総括審議官を担当します。
その前年は国際局次長に就任していたこともあり、財務省の出世の本流ともいわれる総括審議官に就いたのは異例ともいえます。

 

そしてこの時に財務省事務次官が木下康司氏です。
つまり消費税8%に向けての政局に大臣官房長である佐藤慎一氏を支えていました

 

消費税8%が成立したのが平成25(2013)年10月1日です。
この月の24日の金融市場パネルで財政健全化の講演を行っています。

 

 「アベノミクスにおける第2の矢である機動的な財政出動のことを、必要に応じて財政出動するが、基本的には財政再建という意味だ」との認識を示しています。

 

またそこでアベノミクス定着に向けて重要なことは、「悪い物価上昇」と「悪い金利上昇」の2つを回避することだという認識を示しました。

 

ここでいう悪い物価上昇とは、「賃金上昇につながらない」こと、「第3の矢で実体経済の体質強化の取り組みを進め、設備投資や企業収益の増加がきちんと賃金・消費の増加につながる好循環が必要」だと言っています。

 

また悪い金利上昇とは、「財政破綻や銀行の財務健全性の毀損につながるような」ことと言っています。

 

そして消費増税については次のように話しています。

 

 「消費増税をなぜ実施しなければならないかと言えば、少子高齢化に対応するために尽きる。それにより税収が上がらなくなり、社会保障をカットしなければならない場合には、消費も悪化する。消費税を引き上げれば景気に悪い影響は出るが、引き上げなくとも悪い影響が出るということ」です。

 

ここでわかるのは、景気の良し悪しにかかわらず、「少子高齢化に対応するため」、「社会保障」のために消費税を引き上げる必要があることを言っています。

 

出典:第2の矢の基本は財政再建=浅川財務省総括審議官

 

社会保障の安定財源としての消費税が出てきたのは麻生内閣の時に成立した「附則104条」です。
しかも社会保障の安定財源として消費税を引き上げるとすれば、20%や30%まで引き上げないと成り立ちません。

 

もしそうなれば景気はさらに収縮し、負のスパイラルに陥ることになります。

 

財務官

平成27(2015)年に、財務官に就任しました。
この年から令和元(2019)年までの4年間この職に就いています。

 

平成28(2018)年に経済協力開発帰国(OECD)租税委員会議長として、国際的な課税逃れ対策強化のため、「来年にもブラックリストを作る」と表明し、税逃れの国際ルールに非協力的な国・地域をリストアップする考えを示しました。

 

出典:<パナマ文書>国際的な課税逃れ阻止へ対策徹底、非協力ブラックリストを作成=日米中韓など44カ国―OECD租税委員会議長

 

平成29(2017)年に福田淳一氏が財務省事務次官に就任しますが、その時の大臣官房文書課長が三村淳氏です。

 

三村淳氏は、前任が国際局開発政策課長で、その後副財務官に就任することもあり、国際畑の人物といえます。
文書課長も財務省の本流といえ、この人事を推したのはもしかしたら浅川財務官かもしれません。

 

財務事務次官が、福田淳一氏のセクハラ問題で辞任したことから後任として、本命視されていたのが岡本薫明氏を1回見送り、浅川財務官にするか星野主税局長がするか、森金融庁長官にするか、はたまた官邸にいる古谷官房副長官補にするかと、メディアによって観測気球が出されていました。

 

結果として岡本薫明氏が財務事務次官になりました。

 

その時は、麻生財務大臣が浅川財務官を推していたのではないかと言われています。

 

また財務官の時に、中曽根康弘氏が初代会長の東アジア共同体評議会に参与として参加しています。

 

内閣官房参与兼アジア開発銀行総裁

令和元(2019)年に、内閣官房参与そしてアジア開発銀行総裁に就任しました。

 

アジア開発銀行総裁は、財務官の指定ポストともいわれ、近年の総裁は財務官経験者です。
ちなみに日銀総裁になった黒田東彦氏は、アジア開発銀行総裁から日銀総裁に就任しました。

 

そのことから浅川氏は、もしかしたら日銀総裁を目指しているのかもしれません。

 

アジア開発銀行総裁に就任した際のインタビューで次のことを述べています。

 

 アジアの市場統合を進めるため、域内貿易などで使う通貨について、現状の過度なドル依存からの脱却を後押ししていく考えを示しています。

 

 使う通貨としては、円など特定の国が発行するものである必要はなく、「(かつて共通通貨として構想が浮上した)『アジア通貨単位(ACU)』のようなものでもいい」

 

出典:アジア開発銀行新総裁に浅川雅嗣氏 過度なドル依存脱却を後押し 単独インタビュー

 

 所得が向上した国が融資対象から「卒業」する条件として、1人当たり国民総所得(GNI)が6795ドル到達という数値基準のみならず、国際資本市場からリーズナブルなコストで資金調達できているか、一定程度の経済発展段階に達しているかといった基準も満たす必要があると指摘

 

 浅川氏は就任にあたり、1)貧困層への教育・就労支援、2)女性への教育と職業の提供、3)温暖化対策と成長の両立、4)質の高いインフラ投資――の4分野に注力する方針を示した。

 

出典:中国など高中所得国、融資「卒業」へ丁寧に議論=浅川・次期ADB総裁

 

この「所得が向上した国」というのは中国を指していると思われます。
またこの記事には、2018年の中国の1人当たりGNIは9470ドルとなっています。

 

つまり、融資対象として中国はGNIの基準からみると「卒業」ですが、他の基準も見る必要があることを話しています

 

このインフラ投資についても中国が行っている「一帯一路」を加味したものになると思われます。

 

新型コロナウィルス対策としては、令和2(2020)年4月14日の記者会見において次のようの話しています。

 

 世界経済への影響は最大約4兆ドル(約430兆円)に上るとの試算を示し、国際通貨基金(IMF)や世界銀行と協調して加盟国・地域への財政支援を進める考えを表明しています。

 

出典:中国など高中所得国、融資「卒業」へ丁寧に議論=浅川・次期ADB総裁

 

また、景気悪化による財政赤字が拡大することから、アジア開発銀行として、次の対策をするとのことです。

 

 総額200億ドルのうち130億ドルが財政支援向けとして経済対策を打ち出しています。

 

出典:中国など高中所得国、融資「卒業」へ丁寧に議論=浅川・次期ADB総裁

 

アジア開発銀行総裁の先

黒田東彦日銀総裁は、財務官でアジア開発銀行総裁でした。
財務官の任期も2年半です。

 

その黒田総裁の経歴に比べて浅川氏は、財務官4年そして現在アジア開発銀行総裁です。
任期は5年となりますので、任期半ばで黒田総裁の後に行くか、それとも有力候補である雨宮副総裁が先でその後を狙うかとなります。

 

しかし、元々財務省としては事務次官経験者の天下りポストであり、異例の形で就任したのが黒田総裁でした。

 

そうなると事務次官を2年やった勝氏か現在事務次官の岡本氏、あるいは消費税8%を安倍総理大臣に飲ませた木下氏なのか。

 

今後の展開となります。

 

 

浅川 雅嗣(あさかわ まさつぐ)氏 経歴

役職
昭和56(1981)年 東京大学経済学部卒業

大蔵省(現財務省)入省

昭和58(1983)年 米・プリンストン大学院留学
昭和60(1985)年 主税局国際租税課
昭和63(1988)年 国際金融局国際機構課課長補佐
平成元(1989)年 ADB(アジア開発銀行)総裁補佐官
平成6(1994)年 主計局主計官補佐(運輸係担当主査)
平成8(1996)年 IMF(国際通貨基金)審議役
平成13(2001)年 国際局地域協力課長
平成14(2002)年 主税局国際租税課長
平成16(2004)年 国際局為替市場課長
平成18(2006)年 国際局開発政策課長
平成20(2008)年 副財務官

内閣総理大臣秘書官(麻生内閣)

平成21(2009)年 大臣官房参事官(副財務官、大臣官房・主税局担当)
平成24(2012)年 国際局次長兼財務大臣秘書官
平成25(2013)年 大臣官房総括審議官
平成26(2014)年 国際局長
平成27(2015)年 財務官
令和元(2019)年 退官

内閣官房参与

 

 

この記事で学べること

いかがだったでしょうか。

 

歴代財務官の中で最長の4年を全うし、アジア開発銀行総裁へと就任しました。

 

アジア開発銀行総裁の就任の発言で、中国を数値基準だけに捕らわれず、他の基準を満たすことを指摘しています。
それがどういう意味をなすのかは、考え方次第となりますが、参考としてほしい記事です。

 

また財務官から日銀総裁になった例として黒田総裁がいます。
この前例に則って日銀総裁になることを考えているかもしれません。

 

この記事のおすすめ本

財務省人事が日本を決める(山村 明義)

検証財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む(光文社新書)(倉山 満)


 
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