内閣法制局が作り上げた「日本銀行法改正」に関する政府解釈

 

内閣法制局

内閣法制局が作り上げた「日本銀行法改正」に関する政府解釈をご紹介します。

 

 

 

 

日本銀行法改正に関する政府解釈

内容としては、日銀法の改正によって、日銀総裁は、国会同意人事の末5年間の任期をもって業務を行うことになります。

これが現在の改正日銀法です。

 

当時の議論としては、日銀が行っていることは、行政に関わるため、当然民主的なコントロールというものが必要になります。
とくに行政の部分としては、通貨発行権や準備預金制度などの一連の業務が該当します。

 

また行政委員会の2つの条件として、1つ目は、政治的中立性の確保、2つ目は、内閣などによる人事、財務等の監督権の行使が通説となっています。
しかし、改正日銀法では、日銀の独立性を目的としていることから1つ目は満たされていますが、2つ目の監督権が後退してしまっているものであると答弁をしています。

 

第140回国会常会衆議院大蔵委員会18号15頁
平成9(1997)年5月7日 阪田 雅裕 内閣法制局第三部長
 御案内のように、行政とは何かというのを積極的に定義するということは大変困難であります。したがいまして、行政とは国家機能のうち、立法及び司法という二つの機能を除いた残余の部分であるというのが従来の公法学上の一般的な理解であるというふうに承知をしております。
 そうした目で日本銀行の行っております業務を見ますと、まず、日銀券の発行、これは現在の法案の第四十六条に規定されておるわけでございますが、これは国の通貨発行権に基づくものであり、そういう意味で行政であるということはまず間違いがない。さらにまた、市中の銀行等に対して無利子での預金を義務づける準備預金制度というのがございますけれども、その準備預金制度の中で準備率を決定する機能、これも日銀が有しております。さらに、この準備率の決定であるとかあるいは通貨発行権を前提とした公定歩合操作等を通じて行いますところの通貨、金融の調節実施といった業務、これら一連のものは少なくとも行政に当たる、日銀が行う場合には行政権限の行使になるというふうに考えております。

 

平成9(1997)年5月7日 阪田 雅裕 内閣法制局第三部長
 先ほど先生の方からも御指摘がございましたけれども、従来、公正取引委員会など、その所掌する事務について内閣ないしは主任の大臣の個別具体の指揮権が及ばない仕組みになっておりますいわゆる独立行政委員会でありますが、これの憲法適合性について国会の場でも何度か議論をされているというように承知しております。
 これらの行政委員会につきましては、私どもとしましては、次の二つの条件を満たす場合には憲法上許容されるというふうにお答えをしてきたわけであります。
 すなわち、第一に、その所掌する事務が政治的中立性の確保、専門的、技術的な知識または対立する利害の調整が必要とされ、公正かつ中立に行われることが特に要請される行政事務であることという、その業務といいますか事務の性格が第一点であります。それから第二に、内閣が、あるいは内閣のもとにある主任の大臣がということでありますけれども、その行政委員会に対して人事、財務等を通じて一定の監督権を行使できる仕組みになっているということ。この二つの条件が必要であるというふうにお答えしてきておりますし、こうした考え方は学説上もおおむね通説であるというふうに考えております。
 日本銀行は行政機関ではもとよりないわけでありますけれども、先ほど申し上げましたような意味で、行政権限を行使する主体であるということは間違いがない。そういう意味で、日本銀行につきましても、独立行政委員会と同様にこの二つの条件を満たすということが憲法上必須の要請であるというふうに考えております。
 そこで、今回の日本銀行について見ますと、まず第一に、その業務の性格でありますけれども、これは先ほど委員からも御質問があり、大蔵大臣、日銀総裁がお答えになったように、政治的な中立性を確保して行っていく必要があることだということで、そこはまあ是認されるであろう。
 それから、第二番目の問題として、じゃ、内閣による監督権についてどうなっているかということがあろうかと思います。
 現在御審議いただいております日本銀行法案におきましては、現行の日銀法に比べますと大蔵大臣の関与の程度というのは相当に後退しているといいますか、限定されておるわけでございますけれども、なお、例えば総裁、副総裁及びその他の政策委員会の委員の任命権、これは内閣において保有しております。また、法案の五十一条でありますけれども、その経費の予算は大蔵大臣の認可が必要であるとされておりますし、さらに大蔵大臣には日本銀行に対する違法行為等の是正措置を求める権限等を付与しております。
 こうした一連の監督権限に照らしますと、内閣が日本銀行の業務について責任を負い得ると言えるだけの枠組みが整えられているというふうに考えられますので、憲法六十五条等との関係では、従来の独立行政委員会の対比におきまして、問題がないというふうに判断しておるわけでございます。

 

内容としては、憲法第65条や第66条第3項は、行政を民主的なコントロールのもとにおくことを意図した規定になっています。

 

人事権だけ内閣が持って、予算は内閣が関知しない組織は行政機関ではありません。

 

人事権についても国会同意人事のため、衆参のねじれ現象によって空転することもあり、また一度決まってしまえば、病気などの理由などでない限り内閣総理大臣といえどもやめさせることが出来なくなります。
いわば戦前にあったように民主的なコントロールが及ばず統帥権の独立に等しい状態になることとなりました。

 

第140回国会常会衆議院大蔵委員会20号2頁
平成9(1997)年5月14日 阪田 雅裕 内閣法制局第三部長
 今御指摘ありましたように、憲法六十五条「行政権は、内閣に属する。」さらに六十六条三項「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」これは内閣に行政権を属さしめるという趣旨の規定でもありますが、同時に、行政を民主的なコントロールのもとにおくということを意図した規定でもあるというふうに承知しております。
 ところで、今お話がありましたように、公正取引委員会等のいわゆる独立行政委員会につきましては、これらの規定との関係で、その憲法適合性がどうかということで、従来も国会等で議論がなされてきたというのは御案内のとおりであります。これに対しまして、政府といたしましては、内閣が人事及び財務等を通じて一定の監督権を行使するという条件が満たされる場合には合憲であると解してきておるわけであります。
 日本銀行につきましても、行政権限を行使する主体であるというところについては御異論がないんだろうかと思いますが、そうであります以上、少なくともこの独立行政委員会と同様の条件が満たされるということが、合憲性の担保としては必要であるというふうに考えております。現在、先生今御指摘がございましたように、人事権だけ内閣が持っている、予算についてはおよそ内閣が関知をしないというような組織は、もちろん行政機関はありませんし、その余の行政主体も存在しないわけであります。
 日銀の場合、その財源の中心になりますものが通貨発行益、これは特段営業努力をして上げ得るというような性格のお金でもないし、また全く独占的に得られる資金なわけでありますけれども、そういうものにつきまして、仮に政府あるいは国が全くチェックをしないということになりますと、果たして適切な監督がなし得ると言えるのかどうか。これは六十五条との関係であります。さらに、その結果として、その行政権の行使について、行政を一元的につかさどる内閣として、日本銀行の業務に責任を負い得ることになるのかどうかという点が恐らく大きなポイントになるのではないかというふうに思います。
 これについて、今にわかに右だ左だと申し上げる自信はないわけですけれども、憲法上全く問題がないかどうかということについては、なお十分に慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

 

日銀法改正の際に審査の担当だった阪田内閣法制局第三部長の政府解釈でした。

 

日銀法改正によって、戦前の統帥権の独立のような状態になっています。

 

 

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