内閣法制局は法の番人としていわば最強官庁といわれます、その所以とは何なのか

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内閣法制局は法の番人としていわば最強官庁といわれます、その所以とは何なのか

 

内閣法制局は、法の番人として官庁の中の官庁であり、政治家はおろか官僚でさえ逆らうことが出来ない最強官庁といえます。

 

その最強官庁といわれる所以についてご紹介します。

 

 

 

 

政治家にとっての内閣法制局とは

政府の有権解釈

内閣法制局とは、政府の法解釈を行う機関です。
この機関によって決まったいわゆる行政解釈は、政府全体に拘束されます。

 

これを有権解釈といいます。

 

憲法の有権解釈権については、日本国憲法第81条において、最高裁判所に「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限」が与えられていることから、最終的な解釈権については、最高裁になります。

 

しかし最高裁の憲法解釈権については、具体的な訴訟案件の解決に必要な限度において行われるため無制限の解釈権ではありません。

 

また日本国憲法についても制定されてからこれまで一度も改正されたことがないため、内閣法制局が行う憲法解釈が実質的に強力な解釈となります。

 

内閣法制局と対立したら内閣は持たない

内閣法制局は、明治の太政官時代の法律なども頭に入っていると言われるような集団です。
選挙で選ばれた国会議員も余程の勉強をしていない限り、内閣法制局の解釈に従わざるを得なくなります。

 

そのことに関連し、社会党の村山富一委員長が自社さ連立政権において内閣総理大臣になったときでした。

 

社会党といえば護憲政党と言われ、憲法9条擁護、自衛隊は違憲と言っていた政党です。
護憲派にとっては、自衛隊は違憲と表明することを期待していました。

 

しかし村山首相から出た言葉は、自衛隊は、「自衛のための必要最小限度の実力組織」、「文民統制」、「集団的自衛権の不行使」などを言明しました。

 

そもそも何が起きたのか、連立政権であったため自民党の影響なのか、と色々考えてしまう所があると思います。

 

しかし、最も影響を与えたのは内閣法制局でした。

 

時の内閣法制局長官である大出峻郎は、憲法9条と自衛隊の関係について、「内閣が交代しても、憲法解釈を変更する余地はない。法律解釈とはそういうもので、政権が代わる度に、憲法解釈を変更したら、内閣法制局は組織としての信頼性を失う」と述べたと言われます。

 

そのことについて後日、村山首相は、「九条解釈をめぐり内閣法制局長官と対立したら、内閣は持たない」と側近に漏らしたと言われます。

 

護憲政党の党是を曲げてしまうぐらいの強い権限を持っているのが内閣法制局です。

 

民主的に選ばれた政治家といえども、何も言えないのが現状となります。

 

 

官僚にとっての内閣法制局とは

最強官庁を超える最強官庁

官僚の世界では、霞が関の中で最強官庁と言われるのは旧大蔵省現財務省で、とくに主計局が他省庁の予算編成権を持っているため力関係が強く、また予算作成時にはキャリアやノンキャリアの隔てなく作成することで結束力も固い組織になります。

 

この他省庁と比べて力関係が強いことから「我は富士山、他は並びの山」という言葉が出てくる程です。

 

しかし内閣法制局に至っては別です。
それは、内閣法制局にとって予算がとくに必要ではないからです。
かかる費用といえば人件費ぐらいとなります。

 

官僚の人件費については人事院で決められている給料になりますので、各省庁が行っている「主計局詣で」と呼ばれるようなことを行う必要がありません。

 

最強官庁といわれる所以

田中角栄内閣の時期に、いわゆるバラマキ政策として、インフレ傾向にある景気状態にあるにもかかわらず赤字国債を刷り、列島改造や福祉政策に予算をつけていました。

 

しかもその流れは田中内閣だけに止まらず、次の福田赳夫内閣、三木武夫内閣と歳入よりも歳出が上回る政策を行ってしまいます。

 

この流れは、当時の大蔵省も止めることが出来ませんでした。
その中でこの流れを止めるために大蔵省の村上孝太郎官房長は、「赤字国債を発行しないようにするには、赤字を出さなければよい」ということで、国会議員に向けて「財政硬直化打破キャンペーン」を行いました。

 

そして余った予算は繰越金として翌年に使えるようにするため、単年度予算に幅を持たせ、複数年度予算にすることを検討していました。

 

このキャンペーンによって法制化も検討されることになります。
しかしそこに待ったをかけたのが内閣法制局でした。

 

理由は、憲法第86条の会計年度独立の原則に反するというものです。
時の内閣法制局長官は、高辻正己でした。

 

このように大蔵省といえども、憲法や法律の解釈を担う内閣法制局の反対を突き付けられれば、政策化することは出来なくなります。

 

いわば、大蔵省を含めた各省庁において政策における「拒否権」を持っていることになります。
この政策に対する拒否権は、政治家にも当てはまるといえます。

 

 

最高裁判所にとっての内閣法制局とは

内閣法制局長官の天下り先

内閣法制局にとって最高裁判所はどのように見えるのかといえば、天下り先です。

 

どういうことかといえば、内閣法制局長官を務め上げると多くの人が最高裁判所判事として天下りします。

 

内閣法制局は、憲法を始めとする法律の政府解釈を実質的に行い、さらに政府提出法案について厳しいチェックを行って成立されます。

 

その能力は、仮に司法の立場として最高裁判所が違憲の判断を行ったとしても、それを覆すことも出来ます。

 

違憲判決を覆す

内閣法制局長官を退任した高辻正己は、昭和48(1973)年4月に最高裁判所判事に任命されました。

 

在任中の昭和53(1978)年7月12日、「国有農地等の売払いに関する特別措置法」を違憲とする民事事件が発生しました。

 

その際に高辻最高裁判事は、他の判事同様に「違憲立法とは言えない」と合憲判決を出しました。
判決の後にそれぞれの判事が意見を述べます。

 

そのときに、昭和46(1971)年1月20日の農地法施行令16条に関する違憲判決に言及し、当時出した最高裁の違憲判決を間違いとして断定します。

 

憲法の有権解釈権については、日本国憲法第81条において、最高裁判所に与えられていることが明記されていることを紹介しました。
しかし実際には、最高裁判事に元内閣法制局長官がいて、高辻正己のような行動を取ることも出来るため、どの組織においても最強といえるわけです。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

 

政治家にとっては、政府の有権解釈が頭に入っていることから、生半可な知識では太刀打ち出来ず、内閣法制局に頼ることになります。

 

官僚にとっては、大蔵省でさえ憲法を盾に政策に対して「拒否権」を行使されることになります。

 

最高裁判所にとっては、天下り先であり、違憲判決を出したものに対しても内閣法制局の法理を主張することによって、間違いを正そうとする行動に出ることが出来ます。

 

これが内閣法制局が、最強官庁といわれる所以となります。

 
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