内閣法制局が作り上げた「地方自治」に関する政府解釈

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内閣法制局が作り上げた「地方自治」に関する政府解釈

 

内閣法制局が作り上げた日本国憲法における「地方自治」条項に関する政府解釈をご紹介します。

 

 

 

 

地方自治の本旨に関する政府解釈

内容としては、憲法第92条の地方自治の本旨は学会の通説と同じ、住民自治と団体自治の二つの原則を包摂する概念であることを答弁しています。

 

第61回国会常会参議院地方行政委員会23号3頁
昭和44(1969)年7月8日 荒井 勇 内閣法制局第三部長
 この憲法九十二条に書いてあります地方自治の本旨につきましては、いろいろ学者も説を述べておりますけれども、この地方自治の本旨というのは、地方的行政のために国から独立した地方公共団体の存在を認める、そうしてその団体が自主的にその公共事務と申しますか、その地方的な行政を行なうべきことというものを原理として打ち立てておるのだというふうに考えます。そうして、その団体が自主的にその地方的な行政を行なうにあたっては、住民自治ということがその中の非常に中心的な命題としてあるのだというふうに一般的に考えられておるわけでございます。その住民自治というのは、一定の地域、その地方公共団体の基礎となっている地域におけるそういう公共的な事務というものがその地域の住民の意思に基づいてなされるべきであるということで、これを通常、前者を団体自治と言い、後者を住民自治というふうに理解しやすく考えるということで、この二つの意味における近代的な地方自治の原則をここで打ち立てたものであるというふうに理解をいたしております。

 

 

地方自治の歴史的沿革に関する政府解釈

内容としては、地方自治は日本国憲法によって初めて生まれたものではなく、歴史的な沿革に由来することを答弁しています。

 

第61回国会常会参議院地方行政委員会23号4頁
昭和44(1969)年7月8日 荒井 勇 内閣法制局第三部長
 地方自治というものが日本国憲法ができて初めて与えられたのだというふうには、必ずしもそのように理解はいたしておりませんで、それは多年の沿革的な事実というものを基礎にいたしております。その点、たとえば日本国憲法に書いておりますような基本的人権というようなものにつきましても、憲法十一条でありますとか十二条で書いておりますけれども、それは日本国憲法を待つことなしに、それ以前からやはりそのような人権というものを尊重しなければいけないのだという世界的な主張の上に立っておりますし、わが国民の総意としてもそういうものを認めるべきだというものが背景にあって、その上に基本的人権というものが認められている。それと同じように、地方自治というものも、明治以来、あるいはそれは徳川時代というような時代のもとにおいても、変わった形態ではありますけれども、そういう自主的な沿革というものがあり、これがだんだんと馴致され精緻なものになって、そしてこの日本国憲法の制定というものを迎えたということであると思います。

 

 

地方公共団体と特別地方公共団体に関する政府解釈

内容としては、地方公共団体には、地方自治法の規定するところによる都道府県と市町村の普通地方公共団体と一部事務組合や財産区などの特別地方公共団体があることを答弁しています。

 

そして憲法で言っている地方公共団体は、特別地方公共団体は含まれません。


第65回国会常会衆議院地方行政委員会26号6頁
昭和46(1971)年5月12日 宮澤 弘自治省行政区長
 どうもお教えいただくのは私のほうであろうかと思うのでございますけれども、私どもの考え方といたしましては、憲法でいっております地方公共団体、その議決機関なり執行機関なり、住民が選挙を行なうということを前提にしております地方公共団体と申しますのは、いわば普遍的、一般的な存在である、普遍的、一般的な権能を有する存在というものが憲法でいっている地方公共団体である、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。そこで、地方自治法の中でも普通地方公共団体、特別地方公共団体という区分をいたしているわけでございます。特別地方公共団体は、何らかの意味で地域的にあるいは権能的に普遍的、一般的でない、特殊的、個別的、制限的なものというようなものが特別地方公共団体であって、これは憲法でいっております地方公共団体というものとは必ずしも合致しないというふうに私は考えておるわけでございます。

 

 

地方自治体の長の多選禁止に関する政府解釈

今まで国会では過去に3回議員提案による都道府県知事等の多選禁止の法律案を提出していましたが、そのすべてが廃案となっています。

 

ここでは多選禁止に関する見解を答弁しています。

 

第63回国会特別回参議院予算委員会12号21頁
昭和45(1970)年4月1日 佐藤 榮作 内閣総理大臣
 地方自治体の長にかかわらず、長く同一の人がその衝にありますと、その人が考えなくても何かと弊害は生じやすいのでございます。あるいは一つの閥ができるとか、その結果思わない事柄が次々に起きるとか、いろいろございます。やはり時には適当な、目先が変わることが望ましいのではないだろうかと、そういうような意味から多選禁止というような問題が出てくるんだと思います。しかし、これはよく考えなければならないのは、いまは選挙制度でございますから、選挙民が適当だとして考える限りにおいて、これを法制的にとやかく言うことがよろしいのかどうか、なかなかいろいろ議論の存するところであります。篠田君がかつて提案をして、また今日でもやはり篠田君は主張を曲げておりません、続けておりますが、わが党内におきましても、選挙を経て、その結果が生ずるのだから、どうも選挙民の意向というものを尊重すべきじゃないか、かような議論がただいまのところ多数を占めている、かように考えております。いずれにいたしましても、これらの問題はいわゆる両院の国会議員の場合とは違って直接責任ある地位につくのでございますから、そういう意味で選挙民の意思、それは尊重しなければならないが、同時にかもし出される一つの、何というか家庭の事情等はよほど考えなければならぬのじゃないか、かようにも思います。したがって、これははっきりしたことを申しませんが、選挙を制限しようというその考え方にも理由のあることだということをあえて言いたいのでございます。私はいまどちらともきめておらない、しかし、その二つの意見が成り立つものだ、そういうことだけつけ加えて申し上げてお答えといたします。

 

 

住民の定義に関する政府解釈

憲法第93条の住民は、日本国民のみと答弁しています。

 

第132回国会常会衆議院予算委員会7号35頁
平成7(1995)年2月2日 谷合 靖夫 自治省行政区選挙部長
 お答えいたします。
 憲法の九十三条における「住民」ということにつきましては、前提として日本国民ということでありまして、その日本国民がその地域に居住をしているという意味で「住民」という形で使われているというふうに私どもは理解しております。

 

地方自治法第10条の住民は、外国人も含むことを答弁しています。

 

第132回国会常会衆議院予算委員会7号35頁
平成7(1995)年2月2日 大出 峻郎 内閣法制局長官
 ただいまの委員の御質問は、地方自治法の十条に書かれている「住民」、ここに外国人を含むかと、こういう御趣旨と思いますが、地方自治法の十条というのは「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」と、こういうふうに書かれておりまして、ここでは日本国民に必ずしも限らないということであろうかと思います。

 

 

外国人の地方参政権に関する政府解釈

大阪地方裁判所の判決にて外国人の参政権は現行法のもとでは付与することは出来ませんが、傍論部分で付与するか否かは立法政策の問題に過ぎないと言っています。

これを受けて政府見解としては、立法政策の問題であるといえないと答弁しています。
その後大阪地裁の上告審の最高裁にて、在留外国人に地方公共団体の長らの選挙を保障したものではないと上告を棄却、しかし傍論では、永住者等の在留外国人に地方参政権を付与することは憲法上禁止されているわけではないと付言しました。

 

第132回国会常会衆議院予算委員会7号35頁
平成7(1995)年2月2日 大出 峻郎 内閣法制局長官>
 ただいま委員が引用されました大阪地方裁判所の判決、平成五年六月二十九日の判決であろうかと思いますが、これは「立法政策」という言葉も出てまいりますけれども、この判決が必ずしも立法政策の問題だというふうに断定しているのではなくて、「仮に右の者に参政権を付与することが憲法に違反しないとの立場を採り得るとしても、」と仮定のことを言っているのでありまして、ここでこれは専ら立法政策の問題であると結論づけたというふうには私は理解をいたしておらないところであります。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

 

地方自治における政府解釈でした。

 

外国人の地方参政権が民主党政権成立時に話題に上りました。
内閣法制局の解釈を見ると、裁判所の判事の意見に対する反対の解釈と捉えることが出来ます。

 
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