憲法義解〜第十六条

第十六条 天皇は大赦特赦減刑及復権を命す
(天皇は、大赦、特赦、減刑及び復権を命令する)

 

 

 

 

口語訳

恭て按ずるに、国家既に法廷を設け、法司を置き、正理公道をもって平等に臣民の権利を保護せしむ。
而して猶法律の未だ各般の人事を曲悉(きょくしつ)するに足らずして時ありて犯人事情仍(なお)憫諒(びんりょう、憐れみ)すべき者あり、立法及司法の軌轍(きてつ)遂にもってその闕漏(けつろう、欠け落ちる)に周匝(しゅうそう)なること能(あた)はざらむことを恐る。
故に恩赦の権は至尊慈仁の特典をもって法律の及ばざる所を補済(ほせい)し、一民のその情を得ざる者無(なか)らしめむことを期するなり。
大赦は特別の場合に於て殊例の恩典を施行する者にして、一の種類の犯罪に対しこれを赦すなり。
特赦は一個犯人に対しその刑を赦すなり。
減刑は既に宣告せられたるの刑を減ずるなり。
復権は既に剥奪せられたるの公権を復するなり。

 

第四条(※)以下第十六条に至るまで元首の大権を列挙す。
抑々(そもそも)元首の大権は憲法の正条をもってこれを制限するの外及ばざる所なきこと宛(あたか)も太陽の光線の遮蔽の外に映射せざるところなきが如し。
これ固より遂節叙列するを待ちて始めて存立する者に非ず。
而して憲法の掲ぐる所は既にその大綱を挙げ、またその節目中の要領なる者を羅列してもって標準を示すに過ぎざるのみ。
故に鋳幣(ちゅうへい)の権、度量を定むるの権の如きは一々これを詳にするに及ばず。
そのこれを略するは即ちこれを包括する所なり。

 

※この項はいふまでもなく、第十六条だけの説明ではなくて、大権全般に関するものである。

 

 

現代語訳

恭んで考えるには、国家はすでに法廷を設け、司法を置き、正理公道に従って平等に臣民の権利を保護させる。
しかしなお、法律が未だに諸般の人の事情を細かにするには足らず、時には犯人の情状を酌量すべき者がいて、立法及び司法の規則が、欠落し不足を補い尽くすことができないことを恐れる。
ゆえに、恩赦の権は、至尊たる天皇の慈悲の特典であり法律の及ばないところを補い、一人の民の情を得られない者がないようにするためである。
大赦は、特別の場合において特例の恩典を施行するものであり、一つの種類の犯罪に対して赦すものである。
特赦は一個人の犯人に対して、その刑を赦す。
減刑は、すでに宣告された刑を減じるものである。
復権は、すでに剥奪された公権を回復することである。

 

以上、第四条以下第十六条に至るまで、元首の大権を列挙する。
そもそも元首の大権は、憲法の正条でこれを制限する他は、及ばないところがないことは、太陽光線の遮蔽された先に映射されるところがないことと同じである。
これはもとより、逐一列挙することで初めて存立するものではない。
そうして憲法に掲げるのは、その大綱を挙げ、またその節目の中の重要なものを羅列して標準を示すに過ぎない。
ゆえに貨幣鋳造権や度量衡権などは、いちいち詳らかにする必要がない。
それらが省略されているのは、大権に包括されているものである。

 
この記事はお役に立ちましたでしょうか。
この記事が誰かの役に立ちそうだと感じて頂けましたら、下のボタンから共有をお願い致します。

    このエントリーをはてなブックマークに追加  

昭和12年学会
ページの先頭へ戻る