憲法義解〜第二十二条

第二十二条 日本臣民は法律の範囲内に於て居住及移転の自由を有す
(日本臣民は、法律の範囲内において居住及び移転の自由がある)

 

 

 

 

口語訳

本条は居住及移転の自由を保明す。
封建の時、藩国境を画(かぎ)り、各々関柵を設け、人民互にその本籍の外に居住することを許さず。
並に許可なくして旅行及移転することを得ず。
その自然の運動及営業を束縛して植物とその類を同くせしめたりしに、維新の後廃藩の挙と倶(とも)に居住及移転の自由を認め、凡(およ)そ日本臣民たる者は帝国境内において何れの地を問わず、定住し、借住し、寄留し、及営業するの自由あらしめたり。
而して憲法にその自由を制限するは必ず法律に由り、行政処分の外に在ることを掲げたるは、これを貴重するの意を明にするなり。

 

以下各条は臣民各個の自由及財産の安全を保明す。
けだし法律上の自由は臣民の権利にしてその生活及智識の発達の本源たり。
自由の民は文明の良民としてもって国家の昌栄を翼賛することを得る者なり。
故に立憲の国は皆臣民各個の自由及財産の安全をもって貴重なる権利としてこれを確保せざるはなし。
ただし、自由は秩序ある社会の下に棲息する者なり(※)。
法律は各個人の自由を保護し、又国権の必要より生ずる制限に対してその範囲を分割し、もって両者の間に適当の調和を為す者なり。
而して各個臣民は法律の許す所の区域の中においてその自由を享受し綽然(しゃくぜん)として余裕あることを得べし。
これ乃(すなわ)ち憲法に確保するところの法律上の自由なる者なり。

 

※義解稿本はここで「彼の仏国の権利宣告(人権宣言)にいえるところの天賦の自由は他人の自由に妨げざる限、一の制限を受けざるの説は妄想の空論たるに過ぎず」として、天賦人権説を否定した。

 

 

現代語訳

本条は居住及び移転の自由を明らかにして保障する。
封建時代には、藩の国境を限り、各々関所や柵を設けて、人民がその本籍以外に居住することを許さなかった。
また、許可なくして旅行及び移転をすることもできなかった。
その自然な活動及び営業を束縛して、植物と同じようにさせていたが、維新の後、廃藩とともに居住及び移転の自由を認め、すべて日本臣民である者は、帝国国内のどこの地を問わず、定住したり借り住まい、寄宿及び営業する自由が与えられたのである。
そうして憲法にその自由を制限するには、必ず法律によって行い、行政処分ではできないことを掲げたのは、この自由を尊重する意義を明らかにするためである。

 

以下、各条は、臣民各個の自由及び財産の安全を明らかにして保障する。
思うに、法律上の自由は臣民の権利であり、その生活及び知識の発達の源である。
自由の民は文明の良民として、国家の繁栄に貢献できるものである。
ゆえに立憲国家はみな臣民各個の自由及び財産の安全を重要な権利として、確保している。
ただし、自由は秩序ある社会の下に息づくものである。法律は各個人の自由を保護し、また国憲の必要により生じた制限に対してその範囲を分割し、両者の間に適当な調和をなすものである。
そして、各個臣民は法律の許す範囲の中においてその自由を享受し、悠然として余裕があるべきである。
これはすなわち、憲法によって確保される法律上の自由である。

 
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