憲法義解〜第五十八条

第五十八条 裁判官は法律に依り定めたる資格を具ふる者を以て之に任す
 裁判官は刑法の宣告又は懲戒の処分に由るの外其の職を免せらるることなし
 懲戒の条規は法律を以て之を定む

(裁判官は、法律で定めた資格を有する者を任命する
 裁判官は、刑法の宣告又は懲戒処分によるほかに、罷免されることはない
 懲戒の条規は、法律で定める)

 

 

 

 

口語訳

裁判官は法律を主持し、人民の上に衡平の柄を執らんとする。
故に、専科の学識及び経験は裁判官たるの要件たり。
而して、臣民の寄って以て其の権利財産を託するは、亦、実に其の法律上正当の資格あるを頼むのである。
故に、本条第一項は法律を以て其の資格を定めるべきことを保明したり。

 

裁判の公正を保たんと欲せば、裁判官をして威権の干渉を離れ、不覇の地に立ち、勢位の得失と政論の冷熱を以て牽束を受けることなからしむべし。
故に、裁判官は刑法又は懲戒裁判の判決に由り罷免せられるを除く外、終身其の職に在る者とする。
而して、裁判官の懲戒条規は又法律を以て之を定め、裁判所の判決を以て之を行い、行政長官の干渉する所とならず。
此れ憲法において特に裁判官の独立を保明する所なり。

 

其の他停職・非職・転任・老退における詳節は総て法律の掲げる所たり。

 

 

現代語訳

裁判官は、法律を守る役割を果たし、人民の上に衡平を保とうとする者である。
ゆえに専門の学識及び経験は、裁判官の要件である。
そして臣民が信頼して、権利財産を託すのは、また実に法律上正当な資格があることを頼みにしないわけにはいかない。
ゆえに本条第一項は、法律によって資格を定めるべきことを明らかにし保障したのである。

 

裁判の公正を保とうとするなら、裁判官が権威や権力から干渉されず、何者にも制約されない位置に立ち、権勢と地位のある者の利害や政治論議の冷熱をもって拘束されないようにしなければならない。
ゆえに裁判官は、刑法または懲戒裁判の判決により罷免されることを除いて、終身の職にあることとする。
そして裁判官の懲戒条規は法律で定め、裁判所の判決によって行い、行政長官に干渉されない。
これは、憲法においてとくに裁判官の独立を明らかにして保障するところである。

 

その他、停職、免職、転任、老退に関する詳細は、すべて法律の掲げるところである。

 
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昭和12年学会
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