憲法義解〜第十七条

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憲法義解〜第十七条

第十七条 摂政を置くは皇室典範の定むる所に依る
 摂政は天皇の名に於て大権を行ふ

(摂政を置くのは、皇室典範の定めるところによる
 摂政は、天皇の名において大権を行使する)

 

 

 

 

口語訳

恭て按ずるに、摂政は天皇のことを摂行す。故におよそ至尊の名分を除く外、一切の大政総て天皇の名に於てこれを行ひ、また大政に付きその責に任ぜざること一に天皇に同じ。
ただし、第七十五条の場合に於て制限する所あるのみ。
天皇の名に於てと謂へるは天皇に代てと謂へるの義の如し。
けだし摂政の政令は即ち天皇に代りこれを宣布するなり。
摂政を置くは皇室の家法による。摂政にして王者の大権を総攬するはこと国憲に係る。
故に、後者はこれを憲法に掲げ、前者は皇室典範の定むる所による。蓋し摂政を置くの当否を定るは専ら皇室に属すべくして、而して臣民の容議する所に非ず。
抑々天子違予(いよ)のことありて政治を親らすること能はざるは稀に見る所の変局にして、而して国家動乱の機亦往々この時に伏(ふく)す。
彼の或国に於て両院を召集し両院合会して摂政を設くるの必要を議決することを憲法に掲ぐるが如きは、皇室の大事をもって民議の多数に委ね、皇統の尊厳を干涜(かんとく)するの漸を啓(ひら)く者に近し。
本条摂政を置くの要件を皇室典範に譲りこれを憲法に載せざるは、けだし専ら国体を重んじ、微を防ぎ、漸を慎むなり。

 

 

現代語訳

謹んで考えるには、摂政は天皇の職務を代わって行う。ゆえに至尊たる天皇の本分を除いて、一切の大政はすべて天皇の名において行い、また大政についてその責任を負わないことは天皇と同じである。
ただし、第七十五条の場合において制限されるだけである。
「天皇の名に於いて」というのは、天皇に代わってという意味である。
思うに、摂政の政令とは、天皇に代わり宣言し布告することである。
摂政の設置は、皇室の家法による。摂政として天皇大権を総攬することは、憲法に係わる。
ゆえに、後者は憲法に掲げて、前者は皇室典範の定めるところによる。
思うに、摂政設置の当否について定めるのは、もっぱら皇室に属す事であり、臣民に議論されることではない。
そもそも、天皇に予期せぬことがあり、政治を自ら行うことができないことは、稀に見る非常時であり、国家動乱の機会もまた、往々にこういった時期に内在している。
かのある国(ドイツのこと)においては、両院を召集し両院の合議によって摂政を設置する必要性を議決することを憲法に掲げることは、皇室の大事を民議の多数に委ね、皇統の尊厳を干渉し冒涜する道を開くものに近い。
本条は、摂政を置く要件を皇室典範に譲り、憲法に載せないのは、思うに、もっぱら国体を重んじ、些細なことに用心してその兆しを慎むことである。

 
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