憲法義解〜第四十条

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憲法義解〜第四十条

第四十条 両議院は法律又は其の他の事件に付各々其の意見を政府に建議することを得但し其の採納を得さるものは同会期中に於て再ひ建議することを得す
(両議院は、法律又はその他の事件について、各々その意見を政府に建議することが出来る。ただし、政府が採納しなかった建議は、同会期中に再建議することは出来ない)

 

 

 

 

口語訳

本条は議院に建議の権あることを掲げるなり。
上条(第三十八条)既に両議院に各々法律案を提出するの権を与えたり。
而して、本条に又法律に付いて意見を建議することを得と請えるは何ぞや。
議院自ら法律を起案して之を提出すると、或いは、某の新法の制定すべく某の旧法の改正又は廃止すべきことを決議し、成案を具えず単に其の意見を以て政府に啓陳し、政府の採る所となるときは其の起草制定するに任すると両様の方法に就いて議院をして其の一を選わしむるなり。蓋し、之を欧州に参考するに議院自ら議案提出の権を有するは各国の同じ所なり(瑞西〈スイス)を除く外)ただし、議院自ら多数に倚頼(依頼)して法律の条項を制定するは往々議事遷延と成条の疎漏にして首尾完整ならざるとの弊を免れず。
寧ろ政府の委員の練熟なるに倚任するの愈(まさ)れるにしかず。
此れ各国学者の之を事実に徴験して、其の得失を論ずる所なり。
議会は立法の事に参預するのみならず、併せて間接に行政を監視するの任を負う者なり。
故に、両議院は又立法の外の事件に付いて意見を以て政府に建議し、利弊得失を論白することを得。

 

ただし、法律又は其の他の事件に拘らず議院の意見にして政府の採納を得ざる者は同一会期の間、再び建議することを得ざらしめるは、蓋し、紛議強迫に渉るの塗(みち)を防ぐ所以なり。

 

 

現代語訳

本条は、議院に建議の権利があることを掲げるものである。
前条ですでに両議院に各々法案提出権を与えた。
そして、本条でまた法律について意見を建議することができるというのはどういうことか。
一つは、議院自ら法律を起案して提出する方法と、もう一つは新しい法律を制定、旧法の改正または廃止すべきことを決議し、成案を用意せず単に意見を政府に述べて、政府に採用されたときは、起草や制定を任せる方法という、二つの方法について、議院にそのうちの一つを選ばせるものである。
思うに、ヨーロッパの制度を参考するのに、議院自ら議案提出権を有するのは、各国においても同じである(スイスを除く)。
ただし、議院自ら多数に任せて法律の条項を制定するのは、往々にして議事の延長と成立した条文も手落ちがあり首尾一貫しないという弊害を免れない。
むしろ熟練の政府委員に起草を任せた方がいい。
これは、各国の学者が事情を検討して、利点や欠点を論ずるところである。
議会は立法に参与するのみでなく、あわせて間接に行政を監視する任を負うものである。
ゆえに両議院は立法以外の事案について意見を政府に建議し、利害得失を論じて明らかにすることができる。

 

ただし、法律またはその他の事案にかかわらず、議院の意見で政府に採用されないものは、同一会期中に再建議することができないのは、思うに、議論の紛糾や脅迫まがいの交渉を防ぐためである。

 
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