憲法義解〜第五十六条

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憲法義解〜第五十六条

第五十六条 枢密顧問は枢密院官制の定むる所に依り天皇の諮詢に応へ重要の国務を審議す
(枢密顧問は、枢密院官制の定める所により、天皇の諮詢に応え重要な国務を審議する)

 

 

 

 

口語訳

恭て按ずるに、天皇は既に内閣に寄って以て行政の揆務(きむ)を総持し、又枢密顧問を設けて、以て詢謀の府とし、聡明を裨補して偏聴なきを期せんとする。
蓋し、内閣大臣は内外の局に当たり、敏給捷活以て事機に応ず。
而して、優裕静暇思を潜め、慮を凝らし之を古今に考え、之を学理に照らし永図を籌画(ちゅうかく、計略)し、制作に従事するに至っては別に専局を設け、練達、学識其の人を得て、之に倚任(いにん)せざるべからず。
此れ及び他の人事と均しく一般に常則に従い二種の要素各々其の業を分かつなり。
蓋し、君主は其の天職を行うに当たり、謀りて、而して後、之を断ぜんとする。
即ち枢密顧問の設、実に内閣と供に憲法上至高の輔翼たらざることを得ず。
若し夫れ、枢密顧問にして聖聴を啓沃し、偏せず、党せず、而して、又能く問疑を剖解するの補益を為すに至っては果たして憲法上の機関たるに負かざるべく、且つ大にしては緊急命令又は戒厳令の発布に当たり、小にしては会計上法規の外に臨時処分の必要あるの類、之を諮詢して然る後に決行するは、即ち為政の慎重を加える所以にして此の場合においては枢密顧問は憲法又は法律の一の屏翰(へいかん−屏は「かき」「ついたて」「ふせぐ」の意味、翰は「はたらき」「才能」の意味)たるの任に居るべきなり。
枢密顧問の職、是の如きの重きなり。
故に、凡そ勅令にして顧問の議を経る者は其の上諭において之を宣言するを例式とする。
ただし、枢密顧問は至尊の諮詢あるを待って始めて審議することを得、而して、其の意見の採択はまた、皆一に至尊の聖裁に由るのみ。

 

枢密顧問の職守は可否を献替し、必ず忠誠を以てし、隠避する所なく、而して、審議の事は細大となく至尊の特別の許可を得るに非ざれば之は公洩することを得ず。
蓋し、枢機密勿の府は、人臣外に向って栄を求めるの地に非ざるなり。

 

 

現代語訳

謹んで考えるには、天皇は内閣の補佐によって行政上の重要な政務を統括し、また枢密顧問を設けてはかりごとの意見を求める府として聡明さを助け補い、偏りがないようにする。
思うに、内閣や大臣は内外の時局にあたり、敏捷に時機に応じる。
そして、心にゆとりをもち思慮深く、これを古今の歴史から考え、学理に照ら合わせ、恒久的な計画の作成に従事するに至っては、別の専門の局を設けて熟練の学識がある人に任せないわけにはいかない。
これは他の人事と同じく、一般の原則に従って、二種類の要素を各々分担するものである。
思うに、君主は天職を行うにあたり、はかりごとをして決断する。
すなわち、枢密顧問の設置は、実に内閣とともに憲法上の至高の補佐とならないことはない。
もし、枢密顧問が天皇の問い合わせに意見を申し述べ、偏ることなく徒党を組まず、疑問を解決して補い助けることができれば、憲法上の機関として任せるべく、そして大きなものには緊急勅令や戒厳令の発布にあたり、小さなものには会計上の法規の他に臨時処分の必要がある類のものについて諮詢して、その後に決行するのは、為政に慎重さを加えるためであり、この場合において枢密顧問は、憲法と法律の後ろ盾の役割である。
枢密顧問の職は、このように重いものである。
ゆえに、勅令で顧問の審議を経るものは、上諭において宣言するのが通例の形式とする。
ただし、枢密顧問は、至尊たる天皇の諮詢があるのを待って初めて審議することができる。
そして、その意見の採択はまたすべて至尊たる天皇のご決裁によるのみである。

 

枢密顧問が守るべき職分は、可否を天皇に申し述べるにあたり、必ず忠誠をもって、隠し立てするところなく、そして審議の内容は大小を問わず至尊たる天皇の特別の許可がなければ、公にしてはならない。
思うに、国家機密の府は、人臣が外に向かって名誉を求める場所ではない。

 
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