憲法義解〜第五十九条

    このエントリーをはてなブックマークに追加  

憲法義解〜第五十九条

第五十九条 裁判の対審判決は之を公開す但し安寧秩序又は風俗を害するの虞あるときは法律に依り又は裁判所の決議を以て対審の公開を停むることを得
(裁判の対審及び判決は、公開する。ただし、安寧秩序又は風俗を害するおそれがあるときは、法律又は裁判所の決議により、対審の公開を停止することが出来る)

 

 

 

 

口語訳

裁判を公開し、公衆の前に於いて対理口審するは人民の権利に対し、尤(もっと)も効力あるの保障たり。
裁判官をして自ら其の義務を尊重し、正理公道の代表と為らしめるは蓋し、また公開の助に寄る者少なしとせざるなり。
我が国従来、白洲裁判の習久しく慣用する所たりしに、明治八年以来始めて対審判決の公開を許したるは実に司法上の一大進歩たり。

 

刑事の審理に予審あり、対審あり。此に対審といえば予審は其の中に在らざるなり。
安寧秩序を害すとは内乱外患に関わる罪、及び?聚教唆(しょうしゅうきょうさ)の類、人心を煽起刺衝する者をいうなり。
風俗を害すとは内行の事、之を公衆の視聴に暴すときは醜辱を流し、風教を傷つける者をいうなり。
安寧秩序又は風俗を害するの虞ありといえるは其の果たして害あると然らざるとを判定するは専ら裁判所の所見に任ずるなり。
法律に依るといえるは治罪法・訴訟法の明文に依るなり。
裁判所の決議を以てといえるは法律の明文なしと言えども、また、裁判所の議を以て之を決することを得るなり。
対審の公開を停めるというときは判決宣告は必ず之を公開するなり。

 

 

現代語訳

裁判を公開し、公衆の前で原告と被告が相対し口頭で審議するのは、人民の権利に対してもっとも効力のある保障となる。
裁判官が自らその義務を尊重し、正理公道の代表者であるようにさせるには、思うに、公開の力に頼るものが少なくない。
我が国は従来、白洲裁判(江戸時代の奉行所などに法廷が置かれ、裁判を行っていた)の慣習が、長く行われるところであったが、明治八年以来初めて対審、判決の公開を許可したのは、実に司法上の一大進歩である。

 

刑事事件の審理に予審と対審がある。本条で「対審」といえば、予審はその中に含まれない。「安寧秩序」を「害する」とは、内乱や外患に関する罪及び民衆を教唆するなど、人心を煽り立てることをいうのである。「風俗を害する」とは、私的なことを公衆の視聴にさらすときは、醜聞を流し風評を傷つけることをいうのである。「安寧秩序又は風俗を害するの虞あり」というのは、害があるかないかを判断するのは、もっぱら裁判所の所見によるのである。「法律に依」るというのは、治罪法や訴訟法の明文によるのである。「裁判所の決議を以て」というのは、法律の明文がなくても、裁判所の議論をもって決めることができるのである。「対審の公開を停む」というときは、判決の宣告は必ず公開するのである。

 
この記事はお役に立ちましたでしょうか。
この記事が誰かの役に立ちそうだと感じて頂けましたら、下のボタンから共有をお願い致します。

    このエントリーをはてなブックマークに追加  


ページの先頭へ戻る