天皇と皇帝、同じようで違うその意味、本当に天皇は皇帝なのか!?

 

二重橋

はじめに

 

天皇は英語で「Emperor」と表現されます。
では天皇と皇帝は同じなのかといえば、定義によって意味が変わります。

 

ここでは、天皇と皇帝の違いについてご紹介します。

 

 


 

エンペラーとキングの違いについて

 

エンペラーの語源

ヨーロッパの皇帝は、エンペラーです。

 

エンペラーの語源は、ラテン語のインペラトールから来ています。
これは、軍事指揮権者の意味であり、古代ローマの上級の役職者がその権限を持っていました。
ちなみにその権限をインペリウムといいます。

 

インペラトールについて

古代ローマの共和政において、1年任期の最高官職である執政官や緊急時において置かれる半年任期の独裁官などは、軍事指揮権であるインぺリウムを持っていました。
そしてインぺリウムを行使するものをインペラトールと呼びます。

 

インペラトールは、軍事指揮権者の意味ではありますが、長い闘いの末勝利したものに対して、栄誉の意味を込めて呼ばれることがありました。

 

共和政末期になると、ガイウス・ユリウス・カエサルが、ガリアを平定しローマ内の内戦を勝ち抜いて、インペラトールの称号が贈られるようになりました。
その後カエサルは、王になるのではないかと疑念を持った人達によって暗殺されることになります。

 

カエサル暗殺後、ローマは再び内戦になりますが、その平定をもってローマは帝政へと変わっていきます。
その帝政の基盤を作ったことから、後にガイウス・ユリウス・カエサルのカエサルという名前が、皇帝を意味するドイツ語のカイザーやロシア語のツァーリの言葉が生まれることになりました。

 

カエサルの後継者として現れたのが養子でもあるガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌスです。
このオクタウィアヌスが、事実上の初代ローマ皇帝として、インペラトールの称号が贈られることになりました。

 

インペラトールが行使出来るインぺリウムには、範囲があります。
例えば、共和政の執政官が持っていたインぺリウムは、原則ローマ国内あるいは、遠征の際の限定的なものになります。
オクタウィアヌスが持つインぺリウムについては、皇帝が管轄する属州というものがありますが、それらすべてを含むローマ帝国内の軍事指揮権を持つことになりました。

 

それがインペラトールの本来の意味です。

 

エンペラーの意味

インペラトールの意味を踏まえた上でエンペラーの意味に触れていきます。
つまりインぺリウムが及ぶ範囲を表しています。

 

古代ローマは、多民族国家でもありますので、エンペラーは、その多民族からなる範囲統治することが前提となります。

 

またカエサル自身は血統に対するこだわりはありませんでしたが、オクタウィアヌスは自分の子供に継いでほしかったと考えていました。
しかし、その後の神聖ローマ帝国の皇帝やフランス皇帝などは、血統に対するこだわりがあるわけではありません。

 

つまりヨーロッパの考えとしては、血統によらない多民族の長エンペラーと呼んでいます。

 

キングとは

キングは、日本語では王と訳されますが、これも皇帝とエンペラーのようにその意味するところは異なります。
キングは、もともと単一民族の長を表す言葉から来ており、血のつながりを前提としています。

 

キングは、「King」という表記ですが、これは血縁というkinを語源とする言葉です。

 

そのことから血統による単一民族の長キングと呼んでいます。

 

エンペラーとキングの格付け

ヨーロッパでは、キングよりもエンペラーの方が格が高いです。

 

その理由は、キングが単一民族の長ですが、エンペラーはそれら単一民族の集まりが形成されて出来た範囲を束ねることになります。

 

そのためエンペラーがキングよりも格が高くなります。

 

皇帝と王の違いについて

 

皇帝の語源

中華の皇帝は、春秋戦国時代の秦国の王が支那(中国)を統一しました。

 

その時に中華の神話である「三皇五帝」にあやかり、その上で春秋戦国時代の王よりも上であるという意味を込めて、皇帝と称するようになりました。

 

王について

王は、中華においては、皇帝の下の位となります。
中華の地方を王が治めたり、あるいは周辺国の有力者を中華の皇帝が王として冊封する際に用いられます。

 

高句麗の王や朝鮮国王は、中華皇帝の冊封によって与えられた地位ということになります。

 

王の意味について

王の意味は、中華皇帝の冊封によって与えられた地位としての意味の他に、別の意味があります。
それは儒家思想における王者とは、徳をもって治める者を指しますので、意味合いが異なります。

 

日本の天皇は、この王道によって民を治めるという意味においては、王になります。

 

では天皇は何なのか

 

天皇

天皇は、ヨーロッパにおけるエンペラーとキングのどちらかと言われたらキングになります。
それは日本国民という同一民族の長となるからです。

 

そして中華においては、儒家思想における徳をもって民を治めるという意味の王ということにもなります。

 

では、王が正しいのではないかと思われます。
しかし王と名乗ることの弊害がありました。

 

中華皇帝に対しては、推古天皇が小野妹子を大使として隋に派遣したときに、隋の皇帝に対する挨拶として「東天皇、敬みて西皇帝に白す」として、対等であることを示しました。

 

天皇の意味するところは、王でありキングではありますが、中華皇帝と対等ということから対外的には皇帝、対内的には天皇とするようになりました。

 

これが近代になっても同様に使われるようになります。

 

天皇、皇帝、天子の区別

養老律令の儀制令に、次の条文があります。

 

・天子:祭祀に称する所
・天皇:詔書に称する所
・皇帝:華夷に称する所

 

つまり、祭祀を行う際には、天子です。
詔書など国内に関することは、天皇と称します
そして外国に対しては、皇帝と称します。

 

これは明治に入って、日清戦争や日露戦争の際に出された宣戦の詔勅も、「皇帝」と称していることから、この儀制令に則っています。

 

清国ニ対スル宣戦ノ詔勅
露国ニ対スル宣戦ノ詔勅
独逸国ニ対スル宣戦ノ詔書

 

しかし国内において、対外的に「皇帝」と称していたところを「天皇」とするようになりました。
それが米英に対する宣戦布告の際になります。

 

米國及英國ニ對スル宣戦ノ詔書

 

この原因は、国体明徴運動になります。

 

しかしこれは日本の歴史においては、ごく最近の話です。
日本においては、律令時代から天皇と皇帝の使い分けがされていました。

 

ちなみに、天子については、明治に入って使われなくなり、祭祀に対して称するのは、天皇とされて現在に至ります。

 

この記事で学べること

 

記事のまとめ

いかがだったでしょうか。

 

天皇は皇帝なのか、その答えは皇帝です。
しかし本質は王です。

 

本来であれば、ヨーロッパのエンペラーまたはキングなのか、中華の皇帝または王なのかではなく、天皇は天皇としてその意味にするのが本筋ではないかと思います。

 

それは日本の天皇は、日本独自のものだからです。
いわば中華の皇帝や王ではなくまたヨーロッパのエンペラーやキングでもなく、独自の王道を体現したのが、天皇といえます。

 

つまり英語も「Emperor」ではなく「Tenno」です。
あえてヨーロッパや中華の定義に合わせる必要はないのではないかといえます。

 

考えてほしいこと

この記事から考えてほしいことを質問します。

 

これからビジネスをする場合あるいはビジネスをしている場合において、自分が一番こだわるものを教えて下さい。

 

この記事のおすすめ本

国際法で読み解く戦後史の真実 文明の近代、野蛮な現代(PHP新書)(倉山 満)

 
この記事はお役に立ちましたでしょうか。 この記事が誰かの役に立ちそうだと感じて頂けましたら、下のボタンから共有をお願い致します。     このエントリーをはてなブックマークに追加  
昭和12年学会
ページの先頭へ戻る