日本国憲法改正案(乙案)

日考塾におけるあるべき日本国憲法案をまとめています。

 

 

 

 

改正案作成にあたっての序文

 

憲法には、憲法と憲法典があり、憲法を実質的意味の憲法と呼び、憲法典を形式的意味の憲法と呼んでいます。憲法とは、その国の体質や性質を表すものであり、歴史の中から作られるものです。帝国憲法下においては、国体といっていました。憲法典とは、その国の歴史の中で作られた大切な部分を成文化したものです。

 

国際法には、慣習と呼ばれる確立された国際法規と条約があります。十九世紀では、確立された国際法規を遵守することが文明国であり、それを理解していない国は、半文明国あるいは植民地の扱いを受けていました。そして憲法典は、確立された国際法規に関わる部分があり、それに反する憲法典は国際法に反することになります。

 

今回憲法改正試案を作成するにあたって、日本の歴史、伝統、文化に即しつつ、国際法上においても問題のない憲法典を作ることを目的としました。

 

本試案において、条文とその条文の意味そして憲法義解(けんぽうぎげ)を作成しました。憲法義解とは、大日本帝国憲法を作成したときにその文意を解く書つまり解釈書として伊藤博文や井上毅が作成しており、それに倣い作成しました。

 

また試案において参考にしたものは、大日本帝国憲法と日本国憲法そして戦後になって幣原内閣がマッカーサーから憲法を改正するよう示唆を受けてから松本丞治国務大臣を中心に憲法問題調査委員会が作られましたが、そのときにマッカーサー三原則が出される前に作られたものとして憲法改正要綱(甲案)と憲法改正案(乙案)の二つが作られています。その経緯で政府が憲法改正案について検討していましたが、内大臣府にて京都大学教授の佐々木惣一博士が憲法改正調査に当たり、帝国憲法改正の必要として天皇に奉答しており、その際に作られたものが帝国憲法改正案です。日本国憲法改正試案は、その二つの憲法と三つの憲法改正案を参考にして作成しました。

 

この憲法改正試案において、憲法典として残すべき条文のみをこの憲法改正試案に残し、法律で対応出来るものは削除しています。これを簡文憲法といいます。それは国民の代表者である国会議員の審議を経て可決された法律による運用を想定するものとして、民主政治の原理に則ることが大切になるためです。

 

各章は九章六十八条で構成されています。

 

第一章は、天皇条項であり、日本の歴史上天皇が元首であり象徴であったことを第一条で明記し、立憲君主制に基づく君主の役割を持ちますが、政治等の権能は保有しません。

 

第二章は、安全保障条項であり、日本は平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、国防軍を保有し、侵略戦争を否定し自衛戦争を容認しています。

 

第三章は、人権条項であり、日本国民は憲法改正試案に記載の権利を持ち、それ以外の権利は、必要に応じて法律で制定することで認められます。また権利の制限についても法律による必要があります。これはすべて国民の代表者である国会議員が権利を認め、制限を設けるものになります。国民の義務についても同様となります。

 

第四章は、国会条項であり、国会は衆議院と参議院の二院制で、衆議院の議員は、国民の選挙を経た代表者であり、参議院の議員は、法律の定めるところによる代表者となります。

 

第五章は、内閣条項であり、衆議院議員の中から内閣総理大臣が指名され、衆議院と内閣は連帯する関係を持ちます。

 

第六章は、裁判所条項であり、司法権の独立と特別裁判所の設置を認めています。

 

第七章は、会計条項であり、単年度予算だけではなく複数年度予算も想定したものとしています。

 

第八章は、地方自治条項であり、地方自治の制度については、国民の代表者である国会で決めた法律に基づいて設置することになります。

 

第九章は、補足であり、憲法と皇室典範の相互不干渉の体制である典憲体制にしている点と、憲法改正条項を定めています。

 

 

前文

 

顧みれば明治天皇明治の初国是として五箇条の御誓文を下し給へり。
曰く、
一 広く会議を興し万機公論に決すへし
一 上下心を一にして盛に経綸(競輪)を行ふへし
一 官武一途庶民に至る迄各其志を遂け人心をして倦まさらしめんことを要す
一 旧来の陋習を破り天地の公道に基くへし
一 智識を世界に求め大に皇基を振起すへし
叡旨公明正大、又何をか加へん。
朕は茲に誓を新にして国運を開かんと欲す。須らく此の御趣旨に則り、旧来の陋習を去り、民意を暢達し、官民挙げて平和主義に徹し、教養豊かに文化を築き、以て民生の向上を図り、新日本を建設すべし。

 

・前文の意味

昭和天皇が、昭和二十一年一月一日に国民に対して出された「年頭、国運振興の詔書」です。終戦を迎えて改めて、明治元年に出された五箇条の御誓文の精神に立ち返り、すべてはこの御誓文の御趣旨に則り、旧来の弊害を去り、国民の意欲を高め、官民協力して平和主義に徹し、教養豊かに文化を築き、国民生活の向上を図り、新しい日本を建設せよ、という意味になります。

 

・憲法義解

謹んで思うには、大日本帝国憲法の前文となる御告文は天皇のおことばとなります。五箇条の御誓文の精神に立ち返り、日本国憲法を改正することで、もって新日本を建設していくという意味に捉えることが出来ます。正式に天皇のおことばを賜るまでの暫定的なものとして位置付けています。

 

 

第一章 天皇

 

第一条 天皇は、日本国の象徴である。

 

・条文の意味

日本の歴史上、天皇は元首として、また象徴として、時の為政者を補任し、天皇の権威を付与しており、それはこの憲法においても変わりません。

 

・憲法義解

謹んで思うには、天皇とは、「てんのう」と読むのが一般的ですが、他の読み方として「すめらみこと」や「すめらぎ」があります。「すめらみこと」とは、特定の天皇や今上天皇を指します。そして「すめらぎ」とは、皇祖もしくは皇統を指し、大日本帝国憲法第一条における万世一系の天皇はこれと同様の意味となります。

 

天皇は、氏族政治、皇親政治、摂関政治、院政政治、武家政治、立憲政治のどの時代においても親政を行った時代は少なく、時の為政者を補任し、天皇の権威をもって統治を行っていました。それはヨーロッパのように領主が領民を支配する、つまり「ウシハク」のではなく、天皇と民の紐帯つまり天皇は民をおおみたからとして接し、民は天皇を慕うことによって日本が成り立っていました。

 

その日本的統治のことを「シラス」といいます。シラスとは、統治の意味ですが、歴代天皇は天祖である天照大神の神勅を職務として重んじ、天皇は徳によって統治します。しかしその統治は、直接ではなく、時の為政者を補任し、天皇の権威を付与することによるものです。そのため、日本国憲法の天皇の解釈である、ただ内閣の指示に従う「ロボット的存在」という意味にはなりません。

 

また立憲君主制の君主には、三つの権利である「諮問に対し意見を述べる権利」、「奨励する権利」、「警告する権利」を持っています。天皇は国政に対する権能を持ちませんが、この三つの権利を駆使して国政に影響力を与えることは許されています。平成二十八年八月八日の「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」はこの君主の権利でいうと「諮問に対し意見を述べる権利」、「警告する権利」の行使となります。

 

万が一国政が機能しない状態に陥ってしまった場合には、帝国憲法下における二・二六事件や終戦の御聖断の状態が該当しますが、日本の歴史上の元首であり象徴である天皇に帰することになります。

 

 

第二条 皇位は、皇室典範の定めるところにより、男系子孫が継承する。

 

・条文の意味

皇位は、憲法と切り離した皇室典範によって、男系子孫となる男系男子あるいは男系女子が継承します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、皇位は歴代天皇以来、男系子孫が皇統を継承してきました。男系子孫とは、男系男子のほか、男系女子も含まれます。男系女子による女帝は八方十代の先例があるため、憲法上に明記しています。ちなみに女系男子と女系女子については、養老律令の継嗣令第一条に「凡そ皇の兄弟、皇子をば、皆親王と為(せ)よ。女帝の子も亦(また)同じ。」と明記されていたり、明治時代において皇室典範を制定する際に女系男子と女系女子も継承させる意見が出ましたが、先例としては未だ事例がないため、「男系子孫」として表記しています。継承の順位は、皇室典範において、細かに記載し、それを皇室の家法とします。憲法の条文に掲げず皇室典範に記載するのは、将来にわたって国民の干渉を受けないことを示すためです。

 

 

第三条 天皇の国事に関する行為は、内閣の助言を必要とし、内閣が、その責任を負う。

2 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。
3 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することが出来る。

 

・条文の意味

天皇の有する権能は、国事に関する行為のみで、他の国家機関によって決定された行為に対して天皇の権威を付与する儀礼的行為となります。この権能は委任することが出来ます。
内閣の助言を必要とするのは、天皇に責任に負わせないために行うものです。

 

国政に関する権能を有しないというのは、天皇が権威を付与する機関であり、実質的な権力を行使する機関ではないことを意味します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、天皇は、歴史的に実質的な権力を持つ時代よりは形式的な権威をもち、権力を付与する時代が多くありました。内閣の助言に従って天皇の有する権能を行使するというのは、氏族政治の時代であれば、臣(おみ)や連(むらじ)の姓をもつ大夫(まえつぎみ)達の合議が必要でした。天智天皇の時代以降になると、太政官が設置され、太政大臣や左右大臣、大納言の会議として陣定(じんさだめ)を行い、こちらも合議を必要としていました。また大日本帝国憲法において、天皇の大権行使には、内閣の輔弼が必要であった歴史的背景から、この憲法においても内閣の助言に従って天皇の有する権能を行使することになります。

 

仮に内閣の助言を拒否すれば、国法に対する挑戦となり、承久の乱における後鳥羽上皇のように主上御謀叛(しゅじょうごむほん)となる場合もあります。ここに立憲君主制における憲法習律があることを忘れてはいけません。

 

 

第四条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合において、前条第一項の規定を準用する。

 

・条文の意味

摂政は、皇室典範において定め、天皇に代わって国事に関する行為を行います。国事に関する行為を行う場合には、前条の内閣の助言が必要となります。

 

・憲法義解

謹んで思うには、摂政は天皇のことを摂行します。その歴史は、皇族が摂政を務めた初めは、聖徳太子で、人臣が摂政を務めた初めは、藤原良房でした。

 

摂政は、天皇に代わって権威を付与する儀礼的行為を行います。摂政を置くのは、皇室の家法である皇室典範により、摂政の行為はこの憲法に従うことになります。

 

 

第五条 天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。

2 天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

 

・条文の意味

天皇の権能のうち、国会が指名したものに対して、天皇が内閣総理大臣を任命し、権威を付与するものとなり、内閣が指名したものに対して、天皇が最高裁判所の長たる裁判官を任命し、権威を付与するものとなります。

 

・憲法義解

謹んで思うには、天皇は、行政の長である内閣総理大臣を任命することと司法の長である最高裁判所の長たる裁判官を任命することは、時の為政者に対して補任を行っていたことと同様で、天皇の権威をもって統治するため、行政の長と司法の長を任命します。

 

 

第六条 天皇は、内閣の助言により、憲法改正、法律、政令及び条約を公布する。

2 内閣の助言により、国会を召集する。
3 天皇は、内閣の助言により、衆議院を解散する。
4 天皇は、内閣の助言により、国会議員の選挙の施行を公示する。

 

・条文の意味

天皇は、内閣の助言によって、憲法改正、法律、政令及び条約を公布し、国会の召集、衆議院の解散そして国会議員の選挙の施行を公示します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、天皇は内閣の助言によって、憲法改正、法律、政令及び条約を、天皇の名で公にし、その公布によって国民が遵守すべき効力が生じます。そして内閣の責任でこれを執行します。

 

国会は、天皇の名で召集します。天皇の召集によらず国会自らが集まる権利は憲法の認めるところではありません。仮に自ら召集したとして、議論や議決を行ったとしてもそれらはすべて効力がないものであり、また国法に対する挑戦となります。

 

衆議院は、天皇の名で解散を命じることが出来ます。衆議院の解散は、輿論に問うことになりますので、詔書を発して行います。参議院を解散の対象としないのは停会すべきものであって、解散すべきものではないからです。

 

国会議員の選挙の施行の公示は天皇の名で行うことになります。この場合、国会議員は選挙を要する衆議院議員が該当します。

 

附記:参議院議員が法律の定めるところによって、選挙を経るものとする場合は、この条文における国会議員に該当するものとなり、その場合も衆議院議員の選挙と同様天皇の名で公示することになります。

 

 

第七条 天皇は、内閣の助言により、国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証する。

 

・条文の意味

天皇は、内閣の助言によって、国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任命や罷免の認証や全権委任状そして大使と公使の信任状を認証します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任命や罷免の認証、国際会議の出席や条約の締結に際して必要となる全権委任状の認証、大使と公使それぞれの信任状の認証を、天皇の名で行います。この認証を行うことによって、天皇の権威を付与されることになります。

 

 

第八条 天皇は、内閣の助言により、批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証する。

 

・条文の意味

天皇は、内閣の助言によって、条約の批准書と外交文書を認証します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、条約の批准の結果としてまとめられた批准書と外交交渉における公文書や法律的効力を有する意思表示や合意等を含む文書などを認証します。

 

 

第九条 天皇は、内閣の助言により、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証する。

2 天皇は、内閣の助言により、栄典を授与する。

 

・条文の意味

天皇は、内閣の助言によって、恩赦の権の認証そして栄典を授与します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、天皇は、恩赦の権を国事に関する行為として行うものです。恩赦の権は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権があります。

 

大赦は、特別の場合において特例の恩典を施行するものであり、一つの種類の犯罪に対して赦すものです。

 

特赦は、一個人の犯人に対して、その刑を赦すものです。

 

減刑は、すでに宣告された刑を軽くするものです。

 

復権は、すでに剥奪された公権を回復することです。

 

栄典は、天皇の名で授与します。これは天皇が栄誉の源泉であるためであり、推古天皇が始めて冠位十二階を定めたことから位階が始まりました。

 

 

第十条 天皇は、内閣の助言により、外国の大使及び公使を接受すること。

 

・条文の意味

天皇は、内閣の助言によって、外国の大使と公使を接受します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、天皇は、外国の大使と公使に対して、儀礼的な接見を行います。

 

 

第十一条 天皇は、内閣の助言により、儀式を行う。

 

・条文の意味

天皇は、内閣の助言によって、日本国の代表として儀式を行います。

 

・憲法義解

謹んで思うには、天皇は、国家的な性格を有する儀式を行います。これは歴史的に行われてきた儀式も含まれます。

 

 

第二章 安全保障

 

第十二条 日本国は、国際紛争を解決するための戦争及び国家の政策の手段としての戦争を放棄する。

2 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
3 国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。

 

・条文の意味

戦争放棄に関する条約第一条の文言を主体としています。内容としては、侵略戦争は放棄しますが、自衛戦争は否定しません。そのため自衛権は、個別的自衛権と集団的自衛権に分けられることになりましたが、確立された国際法規に則り、その両方を保有するものとなります。

 

日本国は、内閣総理大臣が軍事における最高指揮官として、国防軍を保持し、国防軍の組織や統制に関すること、機密保持に関することは法律で定めます。この中には軍法会議も入ります。

 

・憲法義解

神武天皇の東征以来、兵馬大権を天皇が保有し、その大権を代行するものには節刀(せっとう)を授けられ、出征をしていました。崇神天皇の時代の四頭将軍や、平安時代の征夷大将軍なども同様です。鎌倉に幕府が開かれてからは、節刀を授けられることがなくなり、武家の棟梁(とうりょう)が征夷大将軍として幕府を開きました。内閣総理大臣は、行政の長としての部分と軍事における最高指揮官として統帥権を保有する部分を合わせており、幕府を開いた征夷大将軍の如き権力を持つことになります。

 

確立された国際法規に則り、侵略戦争は放棄しますが、自衛戦争は否定しません。そのため自衛権は、個別的自衛権と集団的自衛権に分けられることになりましたが、その両方を保有するものとなります。

 

軍事における最高指揮官とは、帝国憲法下における統帥権であり、実際に作戦計画の立案や用兵を行います。また国際協力の一環として多国籍軍に加わる場合には、多国籍軍の司令官に、軍事最高指揮権を移譲する形となります。また国防軍の組織や統制に関すること、機密保持に関することは軍政、つまり平時の軍に関する行政となりますので、国会の法律によって定められます。

 

 

第三章 国民の権利及び義務

 

第十三条 日本国民の要件は、法律で定める。

 

・条文の意味

日本国民の要件は、国籍法その他の法律で定めます。

 

・憲法義解

日本国民とは、外国人と区別した言葉です。日本国民は、法律上の公権及び人権を享有しています。またその要件は、出生によるものと帰化やその他の効力によるものに分けられます。

 

人権とは、人間が人間であるがゆえに持っている権利です。人権の反対語は特権となります。そのため選挙権や被選挙権は、法律上の公権として、憲法またはその他の法律で認定し、日本国民のみに享有するもので、外国人には許されません。

 

外国人の人権は、その外国人の本国が自国民と同等の権利を与えている場合、これを相互主義といいますが、その場合において認められます。

 

 

第十四条 日本国民は、法の前に平等であって、差別されない。

 

・条文の意味

日本国民は、法の前に平等であって、差別されません。

 

・憲法義解

日本国民は、天皇が守る法の前に平等です。法の下という表現もありますが、その場合は法を操ることが出来る人を特権階級に位置付けてしまいますので表現として妥当ではありません。

 

 

第十五条 日本国民は、法律及び命令にしたがって、文武官及びその他の公務に就くことが出来る。

 

条文の意味

日本国民は、法律及び命令の定めるところにしたがって、各省庁の公務員である文官や国防軍の武官及びその他の公務に就くことが出来ます。公務員に外国人を採用することは明治以来行われてきましたが、外国人に権力を持たせてはいけませんので、参政権や公務員の管理職など特定の職に就くことは出来ません。

 

・憲法義解

明治維新の成果によって、門閥に捉われることなく公務に就くことが出来るようになりました。かつては、官職を家によって決め、家族によってその職を世襲し、低い身分の者は才能があっても要職に登用されることは出来ませんでした。各省庁の公務員である文官や国防軍の武官の資格は、法律及び命令をもって定め、それを要件とします。公務員に外国人を採用することは明治以来行われてきましたが、外国人に権力を持たせてはいけませんので、参政権や公務員の管理職など特定の職に就くことは出来ません。

 

 

第十六条 日本国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 

・条文の意味

日本国民は、自らの代表が定めた法律によって、納税の義務を負います。選挙を経ていない官僚が法律に定められていないにもかかわらず新しい税制度を作って徴収することや税率を上げてはいけません。

 

・憲法義解

納税は、国家において共同し生存するため必要に応じて供出するもので、国民の国家に対する義務の一つです。

 

租税は古い言葉で「ちから」といい、民が力を運ぶという意味です。税を課すことを「おふす」といい、各人に負わせるという意味です。歴代天皇は、統治の意義をもって臨み、国庫の費用は全国の正しい供出の仕方で徴収します。租税の法律の由来としては、孝徳天皇が祖・庸・調の制度を行い、維新の後に地租改正を行っていますが、これは税法の二大変革といえます。租税とは、国民が国家の公費を分担するものであり、求めに応じて供給する献上物ではありません。また承諾に起因する恩恵を受ける報酬でもありません。

 

 

第十七条 日本国民は、法律の定めるところにより、教育を受ける権利及び義務を有する。

 

・条文の意味

日本国民は、教育を受ける権利と教育を受ける義務があり、それは義務教育であると同時に教育を受ける権利でもあります。そのため法律によって、適切に教育を受けられるように制度を整備する必要があります。

 

・憲法義解

かつて教育は、朝廷や官職を担う家を中心に受けていましたが、幕末になると諸藩の藩校や私塾、寺子屋などが開校し、朝廷や武士だけではなく、百姓や町人なども受けるようになりました。明治に入り義務教育の制度が定められ、教育が義務化することになりますが、教育を受けることが出来るということは権利でもあります。そのため法律によって、適切に教育を受けられるように制度を整備する必要があります。

 

 

第十八条 日本国民は、法律の定めるところにより、勤労の義務を有する。

 

・条文の意味

日本国民は、勤労の義務を負います。勤労条件に関する基準は、法律によって定めることになります。

 

・憲法義解

国家において、国民が共同の生活をするため、勤労することは道義として必要なことです。しかし、児童や勤労する機会がない場合、勤労することが出来ない身体や精神の場合には、この限りではなく、それら勤労条件に関する基準は、法律によって定めることになります。

 

 

第十九条 日本国民は、法律の定めるところにより、居住移転及び職業の自由を有する。

 

・条文の意味

日本国民は、居住移転が自由であり職業を自由に選ぶことが出来ます。これは、自らの代表が定めた法律によってでなければ、制限することは出来ません。また職業の自由には、営業の自由も含まれます。

 

・憲法義解

居住移転の自由や職業の自由が認められなければ、封建時代と同じです。封建時代には、藩の国境を限り、各々関所や柵を設けて、国民がその本籍以外に居住することが許されず、許可なく旅行や移転することも出来ませんでした。日本国民は、国内のどこの地を問わず居住移転する自由と職業選択や営業する自由が認められました。そうした自由を制限するには、必ず自らの代表が定めた法律によってでなければ出来ません。

 

 

第二十条 日本国民は、法律の定めるところにより、請願を行うことが出来る。

 

・条文の意味

日本国民は、法律や命令の制定や改廃などを請願する権利を法律の定めに従って行使することが出来ます。

 

・憲法義解

日本国民は、法律や命令の制定や改廃などを請願する権利を法律の定めに従って行使することが出来ます。請願権は、もっとも古い権利の一つであり、日本では、孝徳天皇の時代に民情を聞いたことから始まります。ただし、請願するにあたって、不敬や誹謗中傷などは制限されます。

 

 

第二十一条 日本国民は、安寧秩序を妨げない限りにおいて、信教の自由を有する。

 

・条文の意味

日本国民は、信教の自由があります。ただし、国法と社会道徳を守らなければいけません。

 

・憲法義解

日本では、欽明天皇の時代に百済より仏教が伝来し、蘇我稲目と物部尾輿による崇仏論争がありましたが、用明天皇の時代に物部守屋が滅ぼされ仏教が認められることになりました。それ以後、本地垂迹(ほんじすいじゃく)という神道と仏教が神仏習合する思想が主流になりました。応神天皇は、八幡神という武の神になりますが、仏教では八幡大菩薩と称されます。

 

中世ヨーロッパの宗教に勢いがあった時代では、内政や外交に関わることで流血が生じていましたが、三十年戦争後に信教の自由の萌芽が出始め、フランス革命やアメリカ独立によって公然と宣言されることになりました。

 

本条は、心の中の自由、信教の自由を保障しています。いかなることを個人の心の中で考えていようともそれは自由です。それは安寧秩序を妨げるような行動に出た場合には別となります。また信教の自由には、布教の自由まで含まれています。ただし、布教その他宗教活動として、礼拝・儀式・布教・演説・結社・集会がありますが、これらは他人の自由や社会の秩序と対立することまでは認められていません。これが政治と宗教の関係です。

 

 

第二十二条 日本国民は、学問の自由を有する。

 

・条文の意味

日本国民は、学問の自由があります。政府は、天皇機関説事件のような一つの学説を抹殺するようなことをしてはいけません。

 

・憲法義解

明治において、大学の自治の制度が作られることになりましたが、大正の憲政擁護運動を経たのちは、侵害されるようになりました。とくに大日本帝国憲法の通説となっていた天皇機関説の代表的学者である美濃部達吉の著書が発禁処分になり、大学における天皇機関説の講義なども禁止され、一つの学説が政府によって抹殺されることになりました。その経験を忘れないためにも、日本国民には、学問の自由があります。

 

 

第二十三条 日本国民は、法律の範囲内において、集会、結社及び一切の表現の自由を有する。

 

・条文の意味

日本国民には、表現の自由があります。ただし、表現は他人の自由と衝突することがありますので、法律に従って解決することになります。

 

・憲法義解

日本国民には、表現の自由がありますが、内心に留まらない表現の自由は、時として他人の自由と衝突することがありますので、その場合は、法律に従って解決します。立憲制度を採用している以上、集会、結社及び一切の表現の自由は、思想形成の発達において不可欠です。

 

 

第二十四条 日本国民は、法律に定める場合を除くほか、通信の秘密を侵されることはない。

 

・条文の意味

日本国民は、通信の秘密を侵されることはありませんが、犯罪捜査の必要などで法律が認める事項に関しては例外となります。

 

・憲法義解

信書の秘密は、近代文明の恩恵の一つです。そのため、刑事上の捜索または戦時、事変及びその他の法律で指定された必要がある場合を除いて、通信の秘密を侵すことは許されません。

 

 

第二十五条 日本国民は、法律の定めるところにより、必需の生活を享受する権利を有する。

 

・条文の意味

日本国民は、必需となる生活を享受出来る権利があり、それは法律の定めに従って有することになります。

 

・憲法義解

政府は、日本国民に対して、人間が人間としての生存をするために必需となる生活を享受出来るよう保障する必要があります。これは、経済生活が高度になり変わってきたため、生きていくために必要な部分を政府が保障しなければ生きていくことが難しいためです。

 

 

第二十六条 日本国民は、財産権を侵されることはない。

2 公益のために必要な制限は、法律の定めるところにより、かつ、特別の事由がない限り正当な補償を必要とする。

 

・条文の意味

日本国民は、財産権を侵されることはありません。ただし、自らの代表が定めた法律によること、かつ、正当な補償を払った上であれば、財産を公に使うこともあります。

 

・憲法義解

財産権はもともと不可侵の権利ではありますが、無制限の権利ではありません。孝徳天皇の時代以来財産権の制限があり、それは時代ごとに制度が変わってきました。

 

本条は、不可侵の財産権を日本国民が持っていることになります。ただし、自らの代表が定めた法律によること、かつ、正当な補償を払った上であれば、財産を公に使うこともあります。

 

 

第二十七条 日本国民は、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、またはその他の刑罰を科せられない。

 

・条文の意味

日本国民は、自らの代表が法律によって定める正しい手続によらなければ、死刑や懲役を受けることや、その他の刑罰も科せられることはありません。

 

・憲法義解

本条では、人身の自由を保障しています。平安時代において、死刑を廃止しましたが、その後の時代で取り止めとなりました。また私的な復仇が認められている時代がありましたが、明治以後は、国家が刑罰や復仇を独占することになります。しかし、政府は適正手続によらなければ刑罰を下すことは出来ません。

 

 

第二十八条 日本国民は、法律に定めた裁判官の裁判を受ける権利を奪われることはない。

 

・条文の意味

日本国民は、法律で定める資格を有する裁判官による正当な裁判を受ける権利があります。

 

・憲法義解

本条は、日本国民の権利を保障するために必要です。法律によって構成、設置された裁判官は、政治権力の牽制を受けず、原告と被告との間に衡平を維持し、国民はその社会的弱者で資産がなくても、権勢のある者と正しいか不正かを法廷で争い、検察官に対して情状を弁護することが出来ます。それらは法律によって定められ、正当な裁判官以外の裁判は許されません。この条文は、刑事裁判を受ける権利ですが、民事裁判は起こす権利になります。

 

 

第二十九条 日本国民は、法律に定めた場合を除くほか、その承諾なくして住居に侵入され、及び捜索されることはない。

 

・条文の意味

日本国民は、法律で定められた場合を除き、その承諾を得ずに住居に侵入されたり、捜索されたりすることはありません。

 

・憲法義解

本条は、住居の安全を保障しています。自らの代表が定めた法律に規定がない場合には、侵入や捜索されることは認められません。

 

 

第三十条 日本国民は、公務員の不法行為によって損害を受けたときは、法律の定めるところにより、政府にその賠償を求めることが出来る。

 

・条文の意味

日本国民は、公務員の不法行為によって損害を受けたときは、法律の定めに従って、政府が不法行為を起こした公務員に代わって、賠償を求めることが出来ます。

 

・憲法義解

律令法が定められた時代においては、国民の権利が不法に侵害された場合には、刑罰の対象となりましたが、明治以降には国家無答責の原理が主となり、政府や公務員が不法行為を行ったとしても賠償責任を負いませんでした。

 

本条は、公務員の不法行為によって国民の権利を侵害してはならないことを明記しています。もし公務員の不法行為によって損害を受けたときは、法律の定めに従って、政府が不法行為を起こした公務員に代わって、賠償を求めることが出来ます。

 

 

第三十一条 日本国民は、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、政府にその補償を求めることが出来る。

 

・条文の意味

日本国民は、無実の罪で身柄を拘束されたときは、法律の定めに従って、政府にその補償を求めることが出来ます。

 

・憲法義解

近代の法の原則として、被告は有罪の判決を受けるまでは無罪と推定されます。そのため、裁判前の抑留や拘禁が合法行為であったとしても、裁判において無罪の判決を受けた場合には、法律の定めに従って、政府に対してその補償の求めることが出来ます。本条と第三十条は、公務員の不法行為と合法行為に対して、国民の権利侵害を制限した条文となります。

 

 

第三十二条 日本国民は、本章に掲げるもののほか、法律によらずに、その自由及び権利を侵されることはない。

 

・条文の意味

日本国民は、本章で列挙している条文のほか、自らの代表が定めた法律による制限によらずに、自由や権利を侵害されることはありません。

 

・憲法義解

本章に掲げているものは、日本やヨーロッパの不断の歴史の中で認められてきた人権を列挙しています。そのため、人権は本章に掲げているものだけではありません。また人権は、自らの代表が定めた法律による制限によらずに、侵害されることはありません。

 

 

第三十三条 本章は、法律に別段の定がない限り、日本国民ではない者にも準用する。

 

・条文の意味

本章で列挙している条文は、法律に別段の規定がない限り、外国人にも適用します。

 

・憲法義解

人権とは、人間が人間であるがゆえに持っている権利です。これは外国人にも認められるものですが、それが認められるには、その外国人の本国において日本国民に対しても同等の権利を与えている場合のみ成立します。これを相互主義といいます。相互主義は、対等な関係を持った国同士で成立するため、特定の国に対して特権を与えるような行為をしてはいけません。

 

 

第四章 国会

 

第三十四条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

2 衆議院の議員及びその選挙人の資格並びに定数は、法律で定める。
3 参議院の議員並びに定数は、法律で定める。
4 何人も同時に両議院の議員となることは出来ない。

 

・条文の意味

国会は、衆議院と参議院の二院で構成します。

 

衆議院の議員についての定めや選挙人の資格や定数は、法律で定めます。

 

参議院の議員についての定めや定数は、法律で定めます。

 

誰も同時に衆議院と参議院両方の議員になることは出来ません。

 

・憲法義解

明治において成立した帝国議会は、貴族院と衆議院によって構成していました。貴族院については、皇族や華族などで構成され、衆議院については、全国の国民から公選されたもので構成されていました。二院制にするのは、衆議院と参議院で牽制しあい平衡を維持するために必要です。衆議院は全国の国民から公選されるため、一時の感情と偏った考えによる場合があり、一変すれば多数による専制となることもあります。フランス憲法がその例です。この弊害を取り除くために選出方法の異なる二院を置くことが必要です。

 

衆議院の議員は、全国の衆民を代表する者であり、その資格の定めや選挙制度や選挙区、定数は法律で定めます。

 

参議院の議員は、その資格の定めや定数は法律で定めます。

 

両院は、それぞれ構成要素が異なり、平衡を保つように位置づけられています。そのため、同時に両院の議員を兼ねるのは、許されません。

 

附記:参議院は、国民の代表者である衆議院より任期がないことから長期を見据えた審議をすることができ、本来の良識の府としての機能に期待が出来ます。

 

帝国憲法下であれば、貴族院という名称であり、皇族や華族、国家功労者などが議席をもっていました。そこでその貴族院を加味した上で参議院の人選をするとしたら、皇族議員、内閣選任議員、内閣総理大臣経験者です。

 

皇族議員は、皇室関係事項を議論する議員として成年の親王と内親王。内閣選任議員は、閣僚経験者、事務次官等経験者、財界代表者、大学教授、都道府県知事経験者、最高裁判所裁判官経験者、最高検察庁検事総長や次長検事経験者、弁護士代表者など。内閣総理大臣経験者は、そのままの意味となります。

 

参議院の権能については、枢密院の機能や検察審査会の機能を保有することも検討出来ます。枢密院の機能については、帝国憲法下では、皇室典範や憲法問題あるいは憲法判断などの審査を担い、検察審査会の機能については、検察官が被疑者を裁判にかけなかった場合について審査します。また参議院が憲法判断を行うことについては、それによって法律などに対して合憲推定性原則が働くことになります。もし違憲の疑いが出た場合には、参議院が反対となり、例えば衆議院議員の総選挙によって国民の多数の意思によって、それが合憲であるという民意を問うか、あるいは再度衆議院にて四分の三以上の賛成をもって合憲であるという制度にすれば参議院による憲法判断としては機能することが出来ます。

 

 

第三十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院解散の場合には、その任期満了前に終了する。

2 参議院議員の任期は、法律で定める。

 

・条文の意味

衆議院の任期は四年であり、衆議院の解散となった場合には、その任期満了前に終了します。参議院の任期は、法律で定めます。

 

・憲法義解

衆議院の任期は四年とします。しかし、時の内閣が政権運営などで国民の民意を問うために解散する場合や、衆議院の不信任の決議案を可決あるいは信任の決議案を否決した場合で、国民の民意を問うために解散する場合は、衆議院は任期満了前に終了します。これは内閣と衆議院が連帯しているためです。

 

参議院は、政権の平衡を保ち、政党の偏った主張を制し、横暴な議論に偏るところを抑え、もって衆議院の多数者による横暴を抑制する効果を収めるため、その任期は、法律で定めます。

 

 

第三十六条 両議院の議員は、法律の定める現行犯罪又は内乱外患に関わる罪を除いては、会期中その議院の許諾なくして逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中に釈放しなければならない。

 

・条文の意味

両議院の議員は、法律の定める現行犯や内乱に関わる罪や国家反逆に関わる罪を除いては、会期中その所属する議院の許諾なく逮捕されることはありません。会期前に逮捕された議員は、その所属する議院の要求があれば、会期中に釈放しなければなりません。

 

・憲法義解

両議院は、立法の大事に参与するため、会期中は議員に例外の特権を与え、議員に独立の体面を保たせ、その重要な職務を尽くすことが出来るようにします。もし、法律の定める現行犯や内乱に関わる罪や国家反逆に関わる罪であれば、議院の特権によって守られるところではありません。会期中とは、召集後から閉会前までをいい、一般の犯罪については、所属する議院に通知し、その許諾を得てから逮捕し、現行犯や内乱外患に関わる犯罪はまず逮捕してから議院に通知することになります。

 

 

第三十七条 両議院の議員は、議院において発言した意見及び表決について、院外で責任を問われない。

 

・条文の意味

両議院の議員は、それぞれの所属する議院で発言した意見やその表決について、刑事や民事の責任を問われません。

 

・憲法義解

本条は、議院に言論の自由を認めています。そして議員は侃侃諤諤の議論を重ねた上で最終的に多数決による表決をもって帰結させます。そのため議院の審議は刑事や民事の責任を負うべきではありません。これは、一つ目は議院の権利を尊重し、二つ目は議員の言論を十分に尽くさせるものです。

 

第三十八条 国会は、毎年召集する。ただし、臨時の必要がある場合においては、内閣が召集することが出来る。

 

・条文の意味

国会は、毎年召集します。この召集は、内閣の助言によって天皇が召集します。ただし、臨時の必要がある場合においては、内閣が召集することが出来ます。

 

・憲法義解

本条で毎年召集することを定めるのは、憲法において議会の存立を保障するためです。また毎年の召集においては、予算を審議するためでもあります。臨時の必要がある場合においては、内閣が召集することが出来ます。

 

 

第三十九条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、緊急集会を求めることが出来る。
3 前項ただし書きの緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

 

・条文の意味

衆議院が解散されたときに、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その総選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければなりません。

 

衆議院が解散され閉会したときには、参議院も同時に閉会となります。ただし、国会閉会中に、緊急の必要が生じたときには、参議院の緊急集会を求めることが出来ます。

 

緊急集会において採られた決議や立法措置は、臨時であるため、次の国会開会後十日以内に、衆議院の同意を得ることが出来なければ、その効力を失います。

 

・憲法義解

衆議院が解散されたときに、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その総選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければなりません。これは国会に保障を与えるものです。もし衆議院が解散されたあとに、召集する時期を一定にしないときは、国会の存立が政府の意のままに廃止するような状態になるためです。

 

衆議院が解散され閉会したときには、参議院も同時に閉会となります。

 

国会の閉会中に緊急の必要が生じたときには、内閣が参議院に緊急集会を求めることが出来ます。帝国憲法下において、緊急の必要が生じた場合には、枢密院にて緊急勅令を出すことが出来ましたが、本条では、参議院の緊急集会で対応することが出来ます。緊急集会において採られた決議や立法措置は、臨時であるため、次の国会開会後十日以内に、衆議院の同意を得ることが出来なければ、その効力を失います。

 

 

第四十条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することが出来ない。

2 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

 

・条文の意味

各々の議院において総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開いて議決することが出来ません。また議事は、この憲法の特別の定めを除いて、出席議員の過半数で決し、可決と否決が同数の場合には、議長が決することになります。

 

・憲法義解

出席議員が三分の一に満たないときは、会議を成立する員数に足りないため、議事を開くことが出来ず、議決することが出来ません。

 

本条の過半数とは、出席議員についていうもので、過半数によって決するのは、議事における通常の規則です。また、賛否が二分して同数となる場合は、議長の判断に決することになります。また、議院において議長その他の委員を選挙することについては、とくに定められた多数の規定は、各々の規則によるべきものであるため、本条に干渉されません。

 

 

第四十一条 両議院の会議は、公開とする。ただし、議院の決議により秘密会を開くことが出来る。

 

・条文の意味

両議院の会議は、公開します。ただし、議院の決議によっては秘密会とすることが出来ます。

 

・憲法義解

議院は、多くの人々を代表するため討論や表決の可否を公開とします。ただし、議事の秘密を要するもの、例えば外交事件、人事、職員や委員の選挙、ある種の財政や軍政について、あるいは治安に係る行政法などの場合は、その例外として、政府の要求、または各院の決議によって、秘密会として、公開を閉じることが出来ます。

 

 

第四十二条 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いて、両議院で可決したとき法律となる。

2 衆議院で可決し、参議院で異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、議会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院が法律案を否決したものとみなすことが出来る。

 

・条文の意味

法律案は、憲法に特別の定めがなければ、両議院で可決したときに法律となります。しかし衆議院で可決し、参議院で異なった議決をした法律案は、再び衆議院に戻り、そこで出席議員の三分の二以上の多数で可決したときに法律となります。

 

参議院が、衆議院の可決した法律を受け取った後に、議会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しなければ、参議院が法律案を否決したものとみなされます。

 

・憲法義解

法律案は、憲法の特別の定めがなければ原則として両議院で可決したときに法律となります。衆議院で可決し、参議院で異なった議決をした法律案は、再び衆議院に戻り、そこで出席議員の三分の二以上の多数で可決したときに法律となります。これは全国の国民の代表者である衆議院が参議院より優越することを制度として設けたものになります。そして参議院が、衆議院の可決した法律を受け取ったときに審議しないことを防ぐために六十日以内に議決しなければ、参議院が法律案を否決したものとみなし、再び衆議院に戻ることになります。

 

 

第四十三条 予算は、先に衆議院に提出しなければならない。

2 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

・条文の意味

予算は、先に衆議院に提出し、参議院は衆議院のあとにしなければなりません。ここで、参議院で衆議院と異なった議決をした場合には、法律の定めに従い、衆議院の議決が国会の議決となります。

 

・憲法義解

本条は、衆議院に予算先議権を与えたものです。予算は、全国の国民の代表者にとって、もっとも大切な事項です。参議院で衆議院と異なった議決をした場合には、法律の定めに従い、衆議院の議決を国会の議決とします。これは全国の国民の代表者である衆議院が参議院より優越することを制度として設けたものになります。

 

 

第四十四条 条約は、先に参議院に提出しなければならない。

2 条約について、衆議院で参議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

・条文の意味

条約は、先に参議院に提出し、衆議院は参議院のあとにしなければなりません。ここで、衆議院で参議院と異なった議決をした場合には、法律の定めに従い、衆議院の議決が国会の議決となります。

 

・憲法義解

本条は、参議院に先議権を与えたものです。しかし全国の国民の代表者でない参議院は、衆議院で参議院と異なった議決をした場合には、法律の定めに従い、衆議院の議決を国会の議決とします。これは全国の国民の代表者である衆議院が参議院より優越することを制度として設けたものになります。

 

 

第四十五条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

 

・条文の意味

国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設けます。弾劾に関する事項は、法律で定めます。

 

・憲法義解

弾劾裁判所とは、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判することを職務とする裁判所です。その構成は、両議院の議員で組織し、全国の国民の代表者である衆議院と参議院で弾劾裁判所を設けます。弾劾に関する事項は、法律で定めます。

 

 

第五章 内閣

 

第四十六条 国務大臣は、法律の定めるところにより、内閣を組織する。

2 内閣の首長は、内閣総理大臣である。

 

・条文の意味

内閣は、国務大臣によって組織され、その中の長は内閣総理大臣です。国務大臣は、法律の定めに従ってその人数を決定します。

 

・憲法義解

内閣は、行政権の主体として合議体を形成します。その合議体を外部に代表する役割をもつ者が首長であり、内閣総理大臣です。

 

 

第四十七条 内閣総理大臣は、衆議院議員の中から国会の議決で、指名する。

2 衆議院と参議院で異なる指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

・条文の意味

内閣総理大臣は、衆議院議員の中から首班指名を行い、国会の議決によって指名がされます。そして衆議院と参議院が異なる指名の議決をした場合には、衆議院の議決が国会の議決になります。

 

・憲法義解

内閣総理大臣は行政における長であり、その前身は太政大臣であり、武家政治の時代では、征夷大将軍でした。律令時代の太政大臣は、名誉職の要素はありますが、則闕(そっけつ)の官として相応しい人がいなければ置かないとされていました。

 

内閣総理大臣は、衆議院より国会の議決によって指名することになるため、その相応しいといえる政党の党首を衆議院の選挙を通じて選ぶ必要があります。そして衆議院と参議院が異なる指名の議決をした場合には、国民の代表が集まる衆議院の議決が国会の議決になります。

 

 

第四十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。

2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することが出来る。

 

・条文の意味

内閣総理大臣は、国民大臣の任免を行います。

 

・憲法義解

内閣総理大臣の役割のうち重要なものが国務大臣の任命です。明治における内閣の運用として、内閣総理大臣が同輩中の首席として、内閣の意思統一が重要視されていましたので、任命は出来ますが罷免は行わず総辞職しました。また内閣総理大臣に対して内閣組織のための大命降下がありますが、そのときに内閣の組閣自体が出来ないことが度々ありましたので、内閣総理大臣には、任意に国務大臣を罷免することが出来るようにしています。

 

 

第四十九条 内閣は、天皇を助言し、その責任を負う。

2 法律及び政令は、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

 

・条文の意味

内閣は、天皇が代表として行うことに関して、責任を負います。また法律や政令は、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署しなければ認められません。

 

・憲法義解

内閣は、天皇が代表として行うことに関して、責任を負います。また法律や政令は、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署しなければ認められません。これは国務大臣が、内閣に参与し、各省の長として事務を行い、大政の責任を負うものです。もし失政を行ってしまった場合は、君主の命令であることを口実にしてその責任を逃れることは出来ません。

 

 

第五十条 内閣は、戒厳を宣告することが出来る。

2 戒厳の要件及び効力は、法律で定める。

 

・条文の意味

内閣は、非常事態に際して戒厳を宣告することができ、その要件や効力は、法律で定めます。戒厳とは、非常時において軍刑法に即して、国内の治安を守ることになります。

 

・憲法義解

明治においては、戒厳は大権として天皇が保有するものでしたが、国防軍における軍事最高指揮権を内閣総理大臣がもつことから、戒厳の宣告とその解除は内閣で行い、要件や効力は、法律で定めます。

 

戒厳とは、外敵や内変の時機に臨んで、常時の法律を停止し、司法及び行政の一部を軍事的処分に委ねるものです。

 

 

第五十一条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 

・条文の意味

内閣は、衆議院と連帯するため不信任の決議案が可決、または信任の決議案が否決されれば、衆議院の解散をしない限り総辞職となります。

 

・憲法義解

大正時代の憲政擁護運動が行われた時代に憲政の常道として運用されていました。内閣総理大臣は、衆議院の多数党の党首が指名され、もし政変が起きたときに不信任の決議案を可決か、または信任の決議案が否決されれば、総辞職か民意を問うために衆議院の解散総選挙を行う必要があります。ここで与党第一党の党首として返り咲くことが出来れば、国民からは信任されたことに繋がります。もし、与党第一党になることが出来なければ、それは別の政党が第一党になるため、国民にも信任されず新しい政権が出来ることになります。

 

 

第六章 裁判所

 

第五十二条 司法権は、法律の定めるところにより、裁判所が行う。

2 裁判所の構成は、法律で定める。

 

・条文の意味

司法権の行使は、法律の定めに従って、裁判所が行い、その裁判所の構成も法律で定めます。

 

・憲法義解

司法権の独立は、近代憲法の特徴です。そしてその司法権は、法律によらなければなりません。また裁判所も法律で定められた構成で、裁判を行います。

 

 

第五十三条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることが出来ないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。

2 裁判官の懲戒処分は、行政機関が行うことは出来ない。

 

・条文の意味

裁判官は、心身の故障で職務を執ることが出来ない場合を除いて、弾劾裁判によらなければ罷免されることはありません。また裁判官の懲戒処分を行政機関が行うことは出来ません。

 

・憲法義解

司法権が独立するためには、裁判官の身分を保障する必要があります。そのため、心身の故障で職務を執ることが出来ない場合を除いて、国民の代表者が集まる国会において設置された弾劾裁判によらなければ罷免されることはありません。また裁判官の懲戒処分を行政機関が行うことは出来ません。

 

 

第五十四条 裁判の対審及び判決は、公開法廷で行う。ただし、安寧秩序または風俗の害するおそれがあるときは、法律の定めるところにより、または裁判所の決議をもって対審の公開をしないで行うことが出来る。

 

・条文の意味

裁判は、原則として公開の法廷で行いますが、安寧秩序または風俗の害するおそれがあるときは、法律の定め、または裁判所の決議によって公開しないで行うことが出来ます。この裁判の公開の例外は、性犯罪も想定されます。

 

・憲法義解

裁判を公開し、公衆の前で原告と被告が相対し口頭で審議そして判決するのは、国民の権利の保障となります。江戸時代では、白洲裁判といい奉行所に法廷が置かれ、裁判を行っていましたが、これは非公開の裁判でした。

 

安寧秩序を害するとは、内乱や外患に関する罪や民衆を教唆するなど、人心を煽り立てることをいいます。風俗を害するとは、私的なことを公衆の面前にさらすときは、醜聞を流し風評を傷つけることをいいます。

 

 

第五十五条 特別裁判所の管轄に属すものは、別に法律で定める。

 

・条文の意味

法律の定めるところによって、特別裁判所を設置することが出来ます。

 

・憲法義解

国防軍の軍人の軍法会議に属すのは、通常の司法裁判所の管轄外となりますので、特別裁判所の管轄に属すものに該当します。その他、必要があればすべて法律で規定すべきものであり、命令で法律の例外を設けることは出来ません。

 

附記:憲法裁判所を置くことになる場合には、この特別裁判所に該当することになります。

 

 

第七章 会計

 

第五十六条 新たに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律をもって定めなければならない。ただし、行政上の手数料及びその他の収納金は、この限りではない。

 

・条文の意味

租税を新たに課すか、または現行の租税を変更するには、法律の定めが必要です。ただし、行政上の手数料等は、法律の定めは必要ありません。

 

・憲法義解

租税を新たに課すか、または現行の租税を変更するには、法律の定めが必要で、政府の独断専行に任せないのは、立憲政治の一大成果として、直接国民の幸福を保護するものです。行政上の手数料やその他の収納金は、義務として賦課される租税とはその性質が異なります。

 

 

第五十七条 国費を支出し、または国が債務を負担するには、国会の議決を経なければならない。

 

・条文の意味

国費の支出や国債などの債務を負担するには、国会の議決を経なければいけません。

 

・憲法義解

国費を支出や国債発行などの債務負担については、将来の国庫の負担義務を要するため国会の議決を経なければいけません。

 

 

第五十八条 国家の歳出及び歳入は、法律の定めるところにより、予算を作成し、国会の議決を経なければならない。

 

・条文の意味

国家の歳出と歳入は、法律の定めに従って、予算を作成し、国会の議決を経なければなりません。毎年としないのは、複数年度予算も想定出来るようにしています。

 

・憲法義解

予算は、原則として毎年の歳出歳入を予定しています。しかし景気の動向などによって財政が硬直化することがありますので、その場合には、単年度の使い切る形の予算方式ではなく、複数年度の予算方式の方がその無駄な支出を削減することが出来るため、その余地を憲法に残す必要があります。そして作成された予算は、国会の議決を経なければなりません。

 

 

第五十九条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任で支出することが出来る。

2 内閣は、予備費の支出について、事後に国会の承認を得なければならない。

 

・条文の意味

予算の不足などに充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設けることができ、それは内閣の責任で支出することが出来ます。またその支出については、事後に国会の承認を得なければいけません。

 

・憲法義解

本条は、予備費の設定によって予算の不足や予算外で必要な費用を補うことが出来ることを定めています。その支出の責任は内閣であり、予備費の支出をした後に国会の承認を得なければいけません。

 

 

第六十条 会計上の緊急の必要がある場合において、国会を召集することが出来ないときは、参議院の緊急集会の措置によって、会計上必要な処分をすることが出来る。

2 前項の場合においては、次の会期において国会に提出し、衆議院に承認を得なければならない。

 

・条文の意味

会計上の緊急の必要がある場合で、国会を召集することが出来ないときや閉会中の場合には、参議院の緊急集会を開いて、そこで必要な処分をすることが出来ます。そしてその措置は、次の会期において国会に提出し、衆議院に承認を得なければなりません。

 

・憲法義解

本条は、会計上の緊急の必要がある場合で、国会を召集することが出来ないときや閉会中の場合には、参議院の緊急集会を開いて、そこで必要な処分をすることが出来ます。明治においては、帝国議会の召集が出来ない場合に勅令によって必要な処分をすることが出来ました。そして、会計上の必要な処分は、次の会期において国会に提出し、衆議院に承認を得なければなりません。

 

 

第六十一条 国会において予算を審議せず、または予算成立に至らないときは、政府は前年度の予算を施行することが出来る。

 

・条文の意味

国会において予算審議しない場合や予算が成立しなかった場合には、前年度予算が施行されます。

 

・憲法義解

本条は、国会において予算審議しない場合や予算が不成立になった場合に、大きくいえば、国家の存立を危うくし、小さくいえば行政の各機関を麻痺することになりますので、それを防ぐために前年度予算を施行することが出来ます。

 

 

第六十二条 皇室経費は、毎年国庫より定額を支出し、将来増額を要する場合を除くほか、国会の議決を必要としない。

 

・条文の意味

皇室にかかる経費は、毎年国庫から定額を支出します。もし増額をするのであれば、国会の議決が必要です。

 

・憲法義解

謹んで思うには、皇室経費は、天皇の尊厳を保つために必要な経費となります。皇室経費の予算及び決算の作成をする必要がありますが、それは支出総額の内訳を示すものに過ぎず、国会の審議の項目の一つとはしません。将来の増額を必要とする場合には、国会の議決を必要とします。それは国民が負担する租税と関係を有するためです。

 

 

第六十三条 国家の歳出及び歳入の決算は、会計検査院が検査し、政府は、その検査報告とともに、国会に提出しなければならない。

2 会計検査院の組織及び権能は、法律で定める。

 

・条文の意味

国家の歳出と歳入の決算は、会計検査院が検査し、検査された内容は、国会に提出しなければいけません。会計検査院の組織や権能は、法律で定めます。

 

・憲法義解

予算は会計の初めとし、決算は会計の終わりとします。その決算の審査をするために、政府は、会計検査員の検査を経た報告を国会に提出しなければなりません。
会計検査院の組織や権能は法律で定めます。それは裁判官と同じく、行政命令の区域の外にある者とします。

 

 

第八章 地方自治

 

第六十四条 地方自治に関する組織、権能及び責務は、法律で定める。

 

・条文の意味

地方自治に関する組織、権能、責務は法律で定めます。

 

・憲法義解

本条は、地方自治に関することは、時代によって中央集権や地方分権にする必要が出るなど様々です。そのため必要があれば法律によって変更が出来るようにしています。ただし、基本的な組織やその組織の権能や責務があることを法律で定めておく必要があります。

 

 

第九章 補則

 

第六十五条 この憲法の改正は、各議院の出席議員の三分の二以上の賛成で、国会が発議し、国民に提案し、承認を得なければならない。

2 前項の承認において、憲法改正のための国民投票を行い、その過半数の賛成でこれを決する。
3 天皇は、憲法改正について前項の承認を得たときに公布する。

 

・条文の意味

憲法改正は、衆議院と参議院それぞれの出席議員の三分の二以上の賛成で、国会が発議し、国民に提案し、承認を得なければいけません。この承認は、憲法改正のための国民投票を行い、その過半数で決定します。その後、憲法改正が承認されたときに天皇が公布します。

 

・憲法義解

謹んで思うには、明治においては、憲法改正の権は、天皇に属すもので国民が関わることはありませんでした。本条は、衆議院と参議院それぞれの出席議員の三分の二以上の賛成で、国会が発議し、国民に提案し、承認を得なければいけません。この承認は、憲法改正のための国民投票を行い、その過半数で決定します。憲法改正のための国民投票を行うことは、国民が主体的に憲法を考えていくことが必要です。憲法改正の権は、最終的には天皇に属すものとなりますので、憲法改正が承認されたときに天皇が公布します。

 

 

第六十六条 皇室典範の改正は、国会の議決を必要としない。

2 皇室典範をもって、この憲法の変更をすることは出来ない。

 

・条文の意味

皇室典範の改正は、皇室の家の法であるため、国会の議決を必要としません。また皇室典範の改正によって、この憲法の変更することは出来ません。

 

・憲法義解

謹んで思うには、憲法の改正は国会が発議し国民投票を行いますが、皇室典範は皇室のことを制定します。明治においては、皇室典範の改正は皇族会議と枢密顧問に諮詢した上で勅定します。これは皇室のことは皇室自ら決定すべきであり、国民の公議に付すべきものではないためです。ただし、皇室典範の改正によって、直接または間接に、この憲法を変更することが出来てしまえば憲法の基礎が容易に揺り動かされることになるため、変更することは出来ません。

 

 

第六十七条 憲法及び皇室典範は、摂政を置く間、変更することは出来ない。

 

・条文の意味

憲法と皇室典範は、摂政を置いている間に変更することは出来ません。

 

・憲法義解

謹んで思うには、摂政を置くのは、国家の非常の事態であり、通常の状態ではありません。そのため摂政を置いている間に憲法と皇室典範の改正を行うことは出来ません。

 

 

第六十八条 この憲法に反する法律、命令、規則及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、効力を有しない。

2 確立された国際法規及び日本国が締結した条約は、誠実に遵守することを必要とする。

 

・条文の意味

この憲法に反する法律、政令、省令、規則や国務に関するその他の行為のすべてあるいは一部について効力を有しません。確立された国際法規と日本国が締結した条約は、誠実に遵守することが必要です。

 

・憲法義解

本条は憲法が最高法規であることを示しており、この憲法に反する法律、政令、省令、規則や国務に関するその他の行為のすべてあるいは一部について効力を有しません。しかし憲法発布前に効力を有するもので、この憲法に矛盾しないものは、なお有効な法令として効力を認めるものとなります。

 

確立された国際法規とは、国際社会において成文または不文問わず確立されたものがあり、それはこの憲法で否定するものではなく誠実に遵守しなければいけません。また日本国が締結した条約についても信義に基づき誠実に遵守する必要があります。

 
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昭和12年学会
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