研究用参考用語集

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研究用参考用語集

 

 

天皇・皇室

「先例を尊ぶ」と「先例主義」の違い
 「先例を貴ぶ」というのは、いわゆる「先例主義」とは異なります。ユーラシア大陸のあくなき殺し合いの歴史に比べて、いかに平和な日本だといっても、大きな政変や大乱は起こります。対外的な危機もありました。そんな時に、先例墨守に固執して適切な対応をしようとしないのが先例主義です。

 大きな危機がやって来た時に、ただ自分の頭の中でだけ考えた、あるいは思いついた方法を正しいと押し通そうとすることではなく、代々受け継がれたご先祖様の歴史の中に「何が正しいのか?」と探し求める精神が、「先例を貴ぶ」意です。歴史に対する謙虚な姿勢でもあり、少し難しい言い方になりますが、それこそが日本の法文化の基礎です。「法は制定するものではなく、発見するもの」という言い方をします。
 では、実際に乗り越えられないような危機が到来したらどうするのでしょうか。
 先例にない新しいことで乗り越えることになります。それが新儀です。(P51)

 

出典:倉山満『国民が知らない上皇の日本史』(祥伝社、二〇一八)

 

新儀非法
皇室では、新儀は不吉なこととされます。先例を貴ぶ精神からすれば、「それをやらなければならないような危機」というのは、不幸な時なのです。(P34)

出典:倉山満『国民が知らない上皇の日本史』(祥伝社、二〇一八)

 彼らは古いものを高く評価し、過去を懐かしみ恋い慕う。「新儀非法」という言葉もできました。新儀、すなわち新しいことは、非法、すなわち悪いことなのです。朝廷で成立した「年中行事」はその表れです。朝廷は一年中、それ自体にはもはや意味のなくなった儀式を飽くことなくくり返していきます。儀式は過去、古いことを再現するところに価値がある。良きことは過去にある。新しい要素は悪なのです。(P51)

 

出典:本郷和人『上皇の日本史』(中公新書ラクレ、二〇一八)

巻第三十二 貞応二年宗清法印立願文

一 新儀非法をおこなふべからぬ事。
 右神は非礼をうけたまはぬは。旧史の明文也。祠官のなか正直をさきとし。寺務のともがら旧規をまもるべし。とにわきては。大菩薩の御託宣にいはく。太神吾不正之物不受此物定穢故反弄……。たとひ(P145)此御いましめなくとも。つつしむべし。いはんやかの?(霊)詫あり。おそれざるべしや。しかるを代々の別当。おほやけわたくしのしげきことわざにまつはれて。神慮のゆるしゆるさずをしらず。ややもすればふるきのりをそむきて。おほく新儀をおこなふ。一向の信をまもらむにおきては。なんぞ四知の廉をわすれんや。ただし事はからざる外にいでて。神明かならず照覧して。そのとが事をおこさむ所にかへるべし。そのうち宮てら最要の人。ならびに身命をかけたる無縁のともがら。慈悲を存せば。あひはからふ所あるべし。身の要心にをきては。とに潔白のさたをくはへて。ながく家につたふるをしへとすべし。寺務の時にかぎる事なかれ。(P146)

 

出典:塙保己一編『続群書類従 第二輯上 神祇部』(八木書店、一九五八)

 

女帝
生理と神事
 ところが、古代から現在に至るまで、「月のさわり」、つまり生理中の女性は全ての神事にかかわることが厳しく禁止されてきた。なぜならば、朝廷において出産と死、そして生理は「穢れ」として忌み嫌われてきた。そのため、皇子が誕生する場合でも宮中を穢さないために、御所の外での出産が義務づけられてきた。また出産の場面に立ち会った人も穢れを受(P73)けたとして、一定期間宮中への参内を禁止されたほどの徹底ぶりである。明治以降、出産を穢れとして憚らないことが決められたが、生理と人の死については、いまだに穢れであるとされている。(P74)

 

 もし女性が天皇になった場合、1か月のうち、およそ7日間は神事を行えないことになる。日々行なわれる神事が滞ることになるばかりか、万一、生理と元日や新嘗祭などが重なった場合、重要な神事を中止または延期しなくてはいけない事態に陥る。延期しても差し支えない神事であればよいが、元日の四方拝や秋の新嘗祭などは、その日の決められた時間に行うからこそ意味があるもので、延期させること自体が趣旨に反するため、事実上中止を余儀なくされることになる。小さな祭祀については、古くは関白や女官、また現代では皇族や侍従などが御代拝をすることはできても、それが続くと天皇の尊厳に影響することにもなる。
 また四方拝や新嘗祭などの重要は神事は御代拝が許されず、天皇自ら行わなければいけないものとされてきた。
 江戸時代には明正天皇と後桜町天皇の二方の女帝があったが、その時期、宮中祭祀は不十分(P74)にしか行なわれなかった。例えば、数ある宮中祭祀のうち毎年元日に行なわれる四方拝は最も重要なものとされるが、明正天皇と後桜町天皇の代にこの四方拝は行なわれていない。戦国時代から江戸期にかけて多くの宮中祭祀が中断を余儀なくされたものの、この四方拝だけはほとんど中断することなく続けられてきた。それにもかかわらず女帝の間、四方拝は中止されていたのである。(PP75)

 

出典:竹田恒泰『語られなかった皇族たちの真実』(小学館、二〇一一)

 

近代の天皇

内奏
内奏の意味
 内奏とは、天皇に内々に奏する行為のことである。(P4)

 

出典:後藤致人『内奏−天皇と政治の近現代』(中公新書、二〇一〇)

 

天皇への上奏
表1 奏に関する主な法律・勅令

1877(明治10)年「内閣朝参公文奏上の程式」
1879(明治12)年「上奏式及施行順序改正」
1886(明治19)年「公文式」、内閣からの法律・勅令の上奏裁可の規則。1907年「公式令」公布により廃止
1888(明治21)年「枢密院官制及事務規程」、重要な勅令など5項目について枢密院会議を開き意見を上奏し勅裁を請う
1889(明治22)年「内閣官制」、首相・主任大臣の副署の規則が改められる
1907(明治40)年「公式令」、詔勅の規定を整備し、首相の権限を強化、1947年日本国憲法施行により廃止
軍令第一号「軍令に関する件」、「公式令」の首相権限強化に対抗し、軍令事項の独自形式を得て帷幄上奏権を成文化
1923(大正12)年「上奏式に関する件」、上奏に際し、奏聞と裁可の別があったが、その区別を廃止し裁可に統一(P10)

 

出典:後藤致人『内奏−天皇と政治の近現代』(中公新書、二〇一〇)

 

戦後の内奏
内奏廃止と天皇の抵抗

 しかし、片山内閣総辞職後に誕生した芦田内閣は、天皇の意志に反しても、日本国憲法の理念に基づいた厳格な象徴天皇制を推進しようとした。具体的には以下の三つである。
 1天皇不執政の徹底のため閣僚による内奏の廃止、2戦前・戦後の宮中の違いをはっきりさせるため、宮内府長官・侍従長という宮中首脳の同時交替による人事刷新、3道義的責任として天皇退位を求める、である。芦田はこの三つを実行するために、新宮内府長官に天皇退位論者である田島道治(たじまみちじ)の起用を考えた。
 だが、昭和天皇は、この三項すべてに抵抗をみせる。(P137)
 一九四八(昭和二三)年五月一〇日、芦田は参内し、内閣のこの方針を天皇に話した。まず、宮内府長官人事について、田島道治を推薦したいと言うと、天皇は「明後日森戸文部大臣と田島とが来る筈だから、其時によく話した上で自分の考を述べよう」と即答を避けた。
 さらに、芦田は「新憲法によって国務の範囲が限定せられ、旧来のように各大臣が所掌政務を奏上致さないことになりましたが、然し陛下に対する閣僚の心持には毫末(ごうまつ)も変りはありませぬ」と、閣僚による内奏の廃止を天皇に話した。
 これに対し天皇は、「それにしても芦田は直接に宮内府を監督する権限をもつてゐるから、時々来て話して呉れなくては」と抵抗し、首相の内奏だけでも残そうとする。結局、芦田は閣僚による内奏を廃止するが、首相による内奏は残すことに同意した(『芦田日記』一九四八年五月一〇条)。(P138)

 

出典:後藤致人『内奏−天皇と政治の近現代』(中公新書、二〇一〇)

 

天皇ロボット説
新天皇による元号の公表は「違法ではないが、適当ではない」
 来年5月1日の新天皇即位に伴う新元号の事前公表時期を巡り内閣法制局は、公表の時期と、即位後に改元手続きを行う時期を引き離す「分離案」について「適当でないが、違法ではない」との見解を首相官邸内で示した。

 

 公表時期に関し、官邸事務方トップの杉田和博官房副長官は、国民生活への影響を念頭に、即位1カ月前がめどの事前公表を主張。保守派は「改元の政令への署名は新天皇が行うべきだ」とし、安倍晋三首相に近い衛藤晟一首相補佐官が代弁して反対する構図だ。

 

 内閣法制局は、(1)は「『内定』の法的位置づけが難しい」と否定的で、(2)は法的にはクリアされるが、閣議決定の即日に政令を公布する慣例に従わない理由が説明できないと指摘。「適当でない」とする一方で、「即日公布」の法的根拠もないとして分離案自体は「違法ではない」との見解を示した。

 

 分離案の「新天皇の即位と署名を待つ」との論理について、事務方は「天皇が国政に関する権能を持たないとした憲法4条違反と指摘されかねない」と懸念する。本来は事務的な手続きに、政治的な意味が生じてしまうからだ。

 

出典:毎日新聞『新元号「分離案」に法制局「違法ではないが、適当でない」』(2018年12月18日)

 

新天皇による元号の公布は改正手続きで天皇に配慮したことになる
 政府は来年5月1日の皇太子さまの即位に伴う改元に先立ち、来年4月中旬を軸に新元号を公表する方向だ。公表に合わせ、新元号を定める政令を閣議決定し、現天皇が署名したうえで公布する段取りも固めた。政府関係者が明らかにした。

 

 改元に伴う官民のシステム改修には一定の時間がかかるため、政府は「国民生活への影響に配慮」(菅官房長官)し、新元号を事前公表する。年明けにも公表日を発表する見通しだ。

 

 自民党内などの保守派は、天皇一代に元号一つを定める「一世一元」制を重んじる立場から、「新元号は新天皇が署名、公布すべきだ」と主張してきた。

 

 しかし、政令は通常、閣議決定から数日以内に公布される。内閣法制局は、保守派の主張通りに政令の公布を先送りするのは「適当ではない」との見解をまとめた。

 

 「新天皇に公布させるために先送りした」となれば、改元手続きで天皇に配慮したことになり、天皇の政治的関与を禁じる憲法に触れるおそれがあるためだ。

 

出典:読売新聞『新元号公表、4月中旬軸に…現天皇が署名し公布(2018年12月29日)

 

憲法

 

法の意味
法とは
 法は、社会心意において人類の利益の為に破るべからざるものとして認識せらるる社会生活上の意思の規律なり。(P1)

 

法の本来の概念とは一般に人類の生活に関して法なりとして如何なるものが観念せらるるかを明にするものなり。

 

 (一) 法は社会生活上の意思の規律なり。
 法は、社会生活を以てその存立の前提と為す。社会生活とは、多数の人が相互に精神的又は物質的な交渉を有する生活をいう。一人孤立して生存し、他人と生活上の交渉なきにおいては、その生活は絶対に自由にして、法の存すべき余地なし。(P2)

 

出典:美濃部達吉『憲法撮要』(有斐閣、一九二三)

 

憲法の概要

憲法の意味
 憲法という語は種々の意義に用いらる。第一にその実質的意義と形式的意義とを区別することを要す。(P73)

 

出典:美濃部達吉『憲法撮要』(有斐閣、一九二三)

 

実質的意味の憲法
 実質的の意義においては、憲法とは国家の組織及び作用に関する基礎法を意味す。詳言すれば国家の領土の範囲、国民たる資格要件、国家の統治組織の大綱、国家と国民との関係に関する基礎法則はこの意義における憲法に属す。この意義における憲法は如何なる国家といえども必ずこれを有す。国家成立してしかる後に憲法を制定するに非ず。国家の成立と共に必ず憲法あり、憲法なきものは無政府にして、未だ国家を成すものに非ず。しかれども近代の意義においての憲法はこの如き広き意義に用いらるるに非ず。専制政体の国に対して国民の参政権を認めその代表機関として代議制度を設くる国のみを立憲国といい、立憲国の基礎法のみを憲法を称するの慣例と為れり。(P73)

 実質の意義における憲法はその形式よりいえばすべての国法と同じく、あるいは成文法をもって定めらるるものあり。あるいは不文の慣習法又は理法として存するに止まるものあり。(P74)

 

出典:美濃部達吉『憲法撮要』(有斐閣、一九二三)

(二) 実質的意味 これは、ある特定の内容をもった法を憲法と呼ぶ場合である。成分であると不文であるとを問わない。実質的意味の憲法と呼ばれる。この実質的意味の憲法には二つのものがある。

 (1) 固有の意味 国家の統治の基本を定めた法としての憲法であり、通常「固有の意味の憲法」と呼ばれる。国家は、いかなる社会・経済構造をとる場合でも、必ず政治権力とそれを行使する機関が存在し(P4)なければならないが、この機関、権力の組織と作用および相互の関係を規律する規範が、固有の意味の憲法である。この意味の憲法はいかなる時代のいかなる国家にも存在する。
 (2) 立憲的意味 実質亭意味の憲法の第二は、自由主義に基づいて定められた国家の基礎法である。一般に「立憲的意味の憲法」あるいは「近代的意味の憲法」と言われる。一八世紀末の近代市民革命期に主張された、専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという立憲主義の思想に基づく憲法である。その趣旨は、「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない」と規定する有名な一七八九年フランス人権宣言一六条に示されている。この意味の憲法は、固有の意味の憲法とは異なり、歴史的な観念であり、その最も重要なねらいは、政治権力の組織化というよりも権力を制限して人権を保障することにある。(P5)

 

出典:芦部信喜『憲法第五版』(岩波書店、二〇一一)

 

形式的意味の憲法
第十八世紀の米国及び仏国の革命に至るまでは諸国の憲法は大部分は不文法より成るを普通と為したるに反して、米国及び仏国の革命後立憲制度が各国に普及するに従い、この趨勢はまったく一変して、各国は新に立憲制度を採ると共に何れも文書をもって国家の基礎法を定め、これをその国の憲法として公布し、これを普通の法律と区別するに至れり。この如く形式的に憲法として定められ、普通の法律と区別せらるるものを形式の意義における憲法又は成文憲法という。(P74)

 

出典:美濃部達吉『憲法撮要』(有斐閣、一九二三)

(一) 形式的意味 これは、憲法という名前で呼ばれる成分の法典(憲法典)を意味する場合である、形式的意味の憲法と呼ばれる。(P4)

 

出典:芦部信喜『憲法第五版』(岩波書店、二〇一一)

 

憲法学の対象範囲
 憲法学の対象とする憲法とは、近代に至って一定の政治的理念に基づいて制定された憲法であり、国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする憲法である。(P5)

 

出典:芦部信喜『憲法第五版』(岩波書店、二〇一一)

 

国際法

 
外国法令
中華人民共和国国防動員法
中華人民共和国主席令第二十五号

二〇一〇年二月二六日公布

 

目次
 第一章 総則
 第二章 組織指導機構及びその職権
 第三章 国防動員計画、実施準備計画及び潜在力統計調査
 第四章 国防と密接に関係する建設プロジェクト及び重要な生産品
 第五章 予備役要員の確保及び召集
 第六章 戦略物資の備蓄及び調達使用
 第七章 軍需品の科学技術研究、生産及び維持補修保障
 第八章 戦争災害の予防及び救助
 第九章 国防勤務
 第十章 民生用資源の徴用及び補償
 第十一章 宣伝教育
 第十二章 特別措置
 第十三章 法的責任
 第十四章 附則

 

第一章 総則

 

第一条 国防建設を強化し、国防動員制度を完全なものとし、国防動員業務の順調な進行を保障し、国家の主権、統一、領土の完全性及び安全を守るため、憲法に基づき、この法律を制定する。

 

第二条 この法律は国防動員の準備、実施及び関連する活動に適用する。

 

第三条 国は、国防動員構築を強化し、国防安全の必要に適応し、経済社会の発展と調和し及び突発性事件の応急システムと連携した国防動員体系を築き整備し、国防動員能力を増強する。

 

第四条 国防動員は、平時と戦時との結合、軍需と民需との結合及び寓軍於民という方針を堅持し、統一的指導、全国民の参加、長期的準備、重点的建設、全局を考慮した統一的計画及び秩序があり効率が高いことという原則に従う。
 訳者注:「寓軍於民」とは「軍工企業を国民経済に統合して競争原理のもとで民間の活力を導入することを目指す」ことである。(竹田純一「第七章中国の武器装備の開発と生産能力の将来像」

 

第五条 公民及び組織は、平時には法により国防動員準備業務を完遂しなければならない。国が国防動員の実施を決定した後には、所定の国防動員任務を完遂しなければならない。

 

第六条 国は、国防動員に必要な経費を保障する。国防動員の経費は職権区分の原則に基づき、それぞれ中央及び地方の財政予算に計上する。

 

第七条 国は、国防動員業務において著しい貢献をした公民及び組織を表彰し、及びこれに褒賞を与える。

 

第二章 組織指導機構及びその職権

 

第八条 国家の主権、統一、領土の完全性及び安全が脅かされたときには、全国人民代表大会常務委員会は、憲法及び関係する法律の規定に基づき、全国総動員又は部分動員を決定する。国家主席は、全国人民代表大会常務委員会の決定に基づき、動員令を公布する。

 

第九条 国務院及び中央軍事委員会は、共同で全国の国防動員業務を指導し、国防動員業務に関する方針、政策及び法規を制定し、全国人民代表大会常務委員会に対し全国総動員又は部分動員を実施する議案を提出し、全国人民代表大会常務委員会の決定及び国家主席が公布する動員令に基づき、国防動員の実施を組織する。
2 国家の主権、統一、領土の完全性及び安全が直接的な脅威を受け、直ちに対応措置をとらなければならないときには、国務院及び中央軍事委員会は、応急処置の必要に基づき、この法律が規定する必要な国防動員の措置をとり、同時に全国人民代表大会常務委員会に報告しなければならない。

 

第十条 地方人民政府は、国防動員業務の方針、政策及び法令を徹底し執行しなければならない。国が国防動員の実施を決定した後は、上級機関が下達する国防動員の任務に基づき、当該行政区域の国防動員の実施を組織しなければならない。
2 県級以上の地方人民政府は、法律が規定する権限により、当該行政区域の国防動員業務を管理する。

 

第十一条 県級以上の人民政府の関係部門及び軍隊の関係部門は、各職務の範囲内で、関連する国防動員業務について責任を負う。

 

第十二条 国家国防動員委員会は、国務院及び中央軍事委員会の指導の下で、全国の国防動員業務を組織化し、指導し及び調整する責任を負う。(国家国防動員委員会が)所定の権限及び手続により協議して決定した事項は、国務院及び中央軍事委員会の関係部門が、各自の職責に応じて準備を行い実施する。軍区国防動員委員会及び県級以上の地方各級国防動員委員会は、当該区域の国防動員業務の組織化、指導及び調整について責任を負う。

 

第十三条 国防動員委員会の事務機構は、当該級の国防動員委員会の日常業務を担当し、法に従い関連する国防動員の職務を遂行する。

 

第十四条 国家の主権、統一、領土の完全性及び安全を脅かす脅威が取り除かれた後には、国防動員の実施を決定した権限及び手続に基づいて、国防動員の実施措置を解除しなければならない。

 

第三章 国防動員計画、実施準備計画及び潜在力統計調査

 

第十五条 国は国防動員計画、国防動員実施準備計画及び国防動員潜在力統計調査の制度を実施する。

 

第十六条 国防動員計画及び国防動員実施準備計画は、国防動員の方針及び原則、国防動員の潜在力の状況並びに軍事上の必要性に基づき制定する。軍事上の必要性は、軍隊の関係する部門が所定の権限及び手続に基づき提示する。
2 国防動員実施準備計画及び突発性事件応急処置準備計画は、指揮、(動員された)力の使用、情報及び保障等の面で互いに連携しなければならない。

 

第十七条 各級国防動員計画及び国防動員実施準備計画の制定と審査許可は、国の関連規定により行う。

 

第十八条 県級以上の人民政府は、国防動員の関連する内容を「国民経済及び社会発展計画」に組み入れなければならない。軍隊の関係部門は、国防動員実施準備計画を軍備計画に組み入れなければならない。
2 県級以上の人民政府及びその関係部門並びに軍隊の関係部門は、職務に基づき、国防動員計画及び国防動員実施準備計画を実施しなければならない。

 

第十九条 県級以上の人民政府の統計機構及び関係部門は、国防動員の必要に基づき、当該各級の国防動員委員会の事務機構に対し、関係する正確な統計資料を遅滞なく提供しなければならない。提供する統計資料が需要を満たすことができないときには、国防動員委員会事務機構は、「中華人民共和国統計法」及び国家の関連規定に基づき、国防動員潜在力専項統計調査を準備し実施することができる。

 

第二十条 国は、国防動員計画及び国防動員実施準備計画の実施状況に対する評価検査制度を構築する。

 

第四章 国防と密接に関係する建設プロジェクト及び重要な生産品

 

第二十一条 国防動員の必要に基づき、国防と密接に関係する建設プロジェクト及び重要な生産品は国防要求を満たし国防の機能を備えなければならない。

 

第二十二条 国防と密接に関係する建設プロジェクト及び重要な生産品の目録は、国務院の経済発展総合管理部門が、国務院のその他の関係部門及び軍隊の関連部門と共同で作成し、国務院及び中央軍事委員会に報告し、その許可を得なければならない。
2 目録に記載された建設プロジェクト及び重要な生産品について、その軍事上の必要性は軍隊の関係部門が提示する。建設プロジェクトを審査し、及び許可し、並びに重要な生産品の設計図面を決定するときには、県級以上の人民政府の関係主管部門は、規定に基づき、軍隊の関係部門の意見を求めなければならない。

 

第二十三条 目録に記載された建設プロジェクト及び重要な生産品は、関連する法令及び国防の要求を満たす技術規範及び規格に基づき、設計、生産、施工、管理監督及び検収を行い、建設プロジェクト及び重要な生産品の品質を保証しなければならない。

 

第二十四条 企業・事業体が、目録に記載されている建設プロジェクトの建設又は重要な生産品の研究、開発及び製造に投資するとき又は投資に参加するときは、関連する法律、行政法規及び国家の関連規定に基づき、補助金又はその他の政策的優遇措置を受ける。

 

第二十五条 県級以上の人民政府は、目録に記載されている建設プロジェクト及び重要な生産品の国防要求を満たす業務に対し、指導及び政策の支援を行わなければならず、関係部門は職務に従い、関係する管理業務を遂行しなければならない。

 

第五章 予備役要員の確保及び召集

 

第二十六条 国は予備役要員の確保制度を実施する。
2 国は、国防動員の必要に基づき、規模が適正であり、構成が科学的であり及び配置が合理的であるという原則に従い、必要な予備役要員を確保する。
3 国務院及び中央軍事委員会は、国防動員の必要に基づき、予備役要員の確保の規模、種類及び方式を決定する。

 

第二十七条 予備役要員は、専門性と兵種が合致し、動員が容易であるという原則に従い、現役部隊への予備編入、予備役部隊への編入、民兵組織への編入又はその他の形式で確保する。
2 国は、国防動員の要求に基づき、予備役専門技術兵員確保区を構築する。
3 国は、予備役要員の訓練及び確保のために条件及び保障を提供する。予備役要員は法により、訓練に参加しなければならない。

 

第二十八条 県級以上の地方人民政府の兵役機関は、当該行政区域の予備役要員を確保する業務を準備し実施する。県級以上の地方人民政府の関係部門、予備役要員の所在郷(鎮)人民政府、街道事務所及び企業・事業体は、兵役機関の予備役要員確保に関する業務の遂行に協力しなければならない。

 

第二十九条 現役部隊に予備編入され、又は予備役部隊に編入された予備役要員及び召集予定の他の予備役要員は、予備役登録地を一ヵ月以上離れるときには、その予備役登録をした兵役機関に報告しなければならない。

 

第三十条 国が国防動員の実施を決定した後には、県級人民政府の兵役機関は、上級機関の命令に基づき、迅速に、召集される予備役要員に召集通知を伝達しなければならない。
2 召集通知を受けた予備役要員は、通知の要求に従い、指定された場所に出頭しなければならない。

 

第三十一条 召集された予備役要員が所属する組織は、兵役機関の予備役要員の召集業務の遂行に協力しなければならない。
2 交通運輸に従事する組織及び個人は、召集される予備役要員を優先的に輸送しなければならない。

 

第三十二条 国が国防動員の実施を決定した後は、召集予定の予備役要員でその予備役等登録地の県級人民政府の兵役機関の許可を得ていないものは、予備役登録地を離れてはならない。すでに予備役登録地を離れている者は、兵役機関からの通知を受けた後、直ちに戻り、又は指定された場所に出頭しなければならない。

 

第六章 戦略物資の備蓄及び調達使用

 

第三十三条 国は、国防動員の必要に応じた戦略物資の備蓄及び調達利用制度を実施する。
2 戦略物資の備蓄は国務院の関係主管部門が準備し実施する。

 

第三十四条 戦略物資の備蓄任務を担当する組織は、国の関連する規定及び基準に従い、備蓄物資の保管及び保護を行い、定期的に入れ替えの調整を行い、備蓄物資の使用上の機能と安全を保証しなければならない。
2 国は関係規定に従い、戦略物資の備蓄任務を担当する組織に対し、補助金を支給する。

 

第三十五条 戦略物資は、国の関連する規定に従い調達し使用する。国が国防動員の実施を決定した後は、戦略物資の調達使用は、国務院及び中央軍事委員会がこれを許可する。

 

第三十六条 国防動員が必要とするその他の物資の備蓄及び調達使用は、関係する法令の規定に基づき執行する。

 

第七章 軍需品の科学技術研究、生産及び維持補修保障

 

第三十七条 国は、軍需品の科学技術研究、生産及び維持補修保障の動員体系を構築し、戦時における軍隊の商品発注及び装備保障の必要に基づき、軍需品の科学技術研究、生産及び維持補修保障の能力を蓄えなければならない。
2 この法律で軍需品とは、軍事目的に用いる装備、物資、専用の生産設備、機材等をいう。

 

第三十八条 軍需品の科学技術研究、生産及び維持補修保障の能力の備蓄の種類、配置及び規模は、国務院の関係主管部門が軍隊の関係部門と共同で計画を提出し、国務院及び中央軍事委員会に報告し、許可を得た後に、準備し実施する。

 

第三十九条 生産品目の変更、軍需品の拡大生産及び維持補修保障の任務を担当する組織は、その担う国防動員の任務に基づき、必要な設備、材料、附属部品及び技術を蓄え、必要とされる専門技術の部隊を築き、準備計画及び措置を制定し、完全なものとしなければならない。
 訳者注:生産品目の変更とは、平時には民需用品の科学技術研究及び生産に従事する組織が、戦時に軍事上の需要に基づき、生産品目を軍需品に変更して生産活動を行うことである。

 

第四十条 各級人民政府は、生産品目の変更及び軍需品の拡大生産の任務を担う組織が先進的な軍民両用技術を開発し及び応用し、軍民に通用する技術規格を普及させ、軍需品の変更生産及び軍需品の拡大生産を行う総合保障能力を向上させることを支持し援助しなければならない。
2 国務院の関係主管部門は、地区又は業種にわたる生産品目の変更及び軍需品の拡大生産の重大な任務の実施に対し、調整を行い、かつ、支持を与えなければならない。

 

第四十一条 国が国防動員の実施を決定した後は、生産品目の変更、軍需品の拡大生産の任務を担当する組織は、国の軍需品発注契約並びに生産品目の変更及び拡大生産の要求に応じて、軍需品の科学技術研究及び生産の準備を行い、軍需品の品質を保証し、期日どおりに発注品を引き渡し、軍隊に協力して維持補修保障任務を完遂しなければならない。生産品目の変更及び軍需品の拡大生産のためにエネルギー、材料、設備及び附属部品を提供する組織は、優先的に生産品目の変更及び軍需品の拡大生産の必要を満たさなければならない。
2 国は、生産品目の変更及び軍需品の拡大生産の任務を担当したために直接的な経済損失を生じた組織に対し、補償を与えなければならない。

 

第八章 戦争災害の予防及び救助

 

第四十二条 国は、戦争災害を予防し及び救助する制度を実施し、人民の生命及び財産の安全を保護し、国防動員の潜在力及び動員を維持する能力を保障しなければならない。

 

第四十三条 国は、軍事目標、経済目標、社会目標及び首脳機関のクラス別防護制度を構築する。クラス別防護の基準は国務院及び中央軍事委員会が定める。
2 軍事目標、経済目標、社会目標及び首脳機関の防護業務は、県級以上の人民政府が、関連する軍事機関と共同で準備し実施する。

 

第四十四条 軍事目標、経済目標、社会目標及び首脳機関の防護任務を担当する組織は、防護計画及び応急修理準備計画を制定し、防護訓練を行い、防護措置を実施し、総合的な防護効果を向上させなければならない。

 

第四十五条 国は、平時と戦時とを結合した医療衛生救護体制を構築する。国が国防動員の実施を決定した後は、医療衛生要員を動員し、薬品、機材及び設備施設を調達使用し、戦時医療救護及び衛生防疫を保障しなければならない。

 

第四十六条 国が国防動員の実施を決定した後は、要員、物資の分散及び隠ぺいは、行政区域内で実施するものについては、当該人民政府が実施を決定し、かつ、準備を行い実施する。
2 以上の行政区域にわたって行うときには、関係する行政区域の一級上の人民政府が実施を決定し、かつ、準備を行い実施する。
3 要員、物資の分散及び隠ぺいの任務を担当する組織は、関係する人民政府の決定に従い、定められた時間内に分散及び隠ぺいの任務を完遂しなければならない。

 

第四十七条 戦争災害が発生したときには、当該地域の人民政府は応急救助のシステムを迅速に発動し、(動員された)力を組織して負傷者を救助し、被災民を避難させ、財産を保護し、戦争災害の結果をできるだけ早く除去し、正常な生産及び生活秩序を回復させなければならない。
2 戦争災害を受けた人及び組織は、遅滞なく自助互助の措置を採り、戦争災害がもたらす損失を軽減しなければならない。

 

第九章 国防勤務

 

第四十八条 国が国防動員の実施を決定した後には、県級以上の人民政府は、国防動員実施の必要に基づき、この法律の規定する条件に適合する公民及び組織を動員し、国防勤務を担わせることができる。
2 この法律で国防勤務とは、軍隊の作戦を支援し及び保障し、戦争災害を予防し及び救助し並びに社会秩序の維持に協力する任務をいう。

 

第四十九条 満十八歳から満六十歳までの男性公民及び満十八歳から満五十五歳までの女性公民は、国防勤務を担わなければならない。ただし、次のいずれかに該当するときには、国防勤務を免除する。
 一 託児所、幼稚園、孤児院、養老院、障害者リハビリテーション機関、救助ステーション等の社会福祉機関で管理及びサービス業務に従事している公民
 二 義務教育段階の学校で教育、管理及びサービス業務に従事している公民
 三 妊娠中又は授乳期間中の女性公民
 四 病気で国防勤務を担うことができない公民
 五 労働能力を喪失している公民
 六 国連等政府間国際組織に勤務する公民
 七 その他県級以上の人民政府が国防勤務の免除を決定した公民
2 特殊な専門的技術を有する専門技術者が特定の国防勤務を担うときには、前項で規定する年齢の制限を受けない。

 

第五十条 国防勤務を担うことが確定した要員は、指揮に従い、職務を履行し、規律を遵守し、秘密を守らなければならない。国防勤務を担う要員が所属する組織は、当該要員に支持及び協力を与えなければならない。

 

第五十一条 交通運輸、郵政、電信、医薬衛生、食品及び食糧の供給、プロジェクト建築、エネルギー化学工業、大型水利施設、民生用原子力施設、報道メディア、国防の科学研究・生産及び市政施設の保障等の組織は、法により国防勤務を担わなければならない。
2 前項に規定する組織は、平時は、専門性の要求に合致し、精鋭な要員を配置し及び緊急時の即応能力を備えるという原則に応じて、専門保障部隊を組織し、訓練及び教練を行い、国防勤務を完遂する能力を向上させなければならない。

 

第五十二条 公民及び組織の国防勤務は、県級以上の人民政府が責任を持って組織する。
2 戦争災害の予防及び救助を担い、社会秩序の維持業務に協力する公民及び専門保障部隊は、当該地域の人民政府が指揮し、かつ、その勤務及び生活の保障を行う。行政区域を越えて勤務を行うときは、関係する行政区域の県級以上の地方人民政府がそれらの保障を準備し実施する。
3 軍隊作戦の支援及び保障の業務を担う公民及び専門保障部隊は、軍事機関が指揮し、部隊に従い行動する者については、所属部隊がその業務及び生活の保障を行う。その他は、当該地域の人民政府が業務及び生活の保障を行う。

 

第五十三条 国防業務を担う要員が業務を執行している期間は、元の所属組織の賃金、手当及びその他の福利待遇を引き続き享受する。所属組織がない者には、当該地域の人民政府が、民兵の軍備業務執行時の手当の基準を参考にして手当を与える。国防業務の執行のために死傷した者には、当該地域の県級人民政府が「軍人補償優遇条例」等関係する規定に従い補償及び優遇措置を与える。

 

第十章 民生用資源の徴用及び補償

 

第五十四条 国が国防動員の実施を決定した後に、備蓄物資が動員の需要を遅滞なく満たすことができなくなったときには、県級以上の人民政府は、法により民生用資源を徴用することができる。
2 この法律で民生用資源とは、組織及び個人が所有し又は使用している、社会生産、サービス及び生活に用いる施設、設備及び場所その他物資をいう。

 

第五十五条 いかなる組織及び個人も、法による民生用資源の徴用を受忍する義務を有する。
2 民生用資源を使用する必要のある中国人民解放軍の現役部隊及び予備役部隊、中国人民武装警察部隊並びに民兵組織は、徴用の需要を提示しなければならず、県級以上の地方人民政府が統一的に徴用を行うものとする。県級以上の地方人民政府は、徴用される民生用資源の登録を行い、被徴用者に証書を発行しなければならない。

 

第五十六条 次に掲げる民生用資源は、徴用を免除する。
 一 個人及び家庭生活の必需品及び住居
 二 託児所、幼稚園、孤児院、養老院、障害者リハビリテーション機構、救助ステーション等の社会福祉機関が児童、老人、障害者及び救助対象者に保障する生活必需品及び住居
 三 法律及び行政法規が規定する、徴用を免除するその他の民生用資源

 

第五十七条 徴用される民生用資源が、軍事的要求に基づき改造されなければならない場合には、県級以上の地方人民政府は、軍事関係機構と共同して準備を行い実施する。
2 改造の任務を担当する組織は、使用組織が提出する軍事要求及び改造計画に基づき改造を行い、かつ、期日どおりに交付し、その用に供することを保証しなければならない。改造に必要な経費は、国が負担する。

 

第五十八条 徴用された民生用資源の使用が完了したときには、県級以上の地方人民政府は、遅滞なく準備し返却しなければならない。改造をした場合には、元来の使用機能を回復した後に返却しなければならない。修復できない場合若しくは滅失した場合、又は徴用により直接的経済損失を生じた場合には、国の関連規定に従い補償を与える。

 

第五十九条 中国人民解放軍の現役部隊及び予備役部隊、中国人民武装警察部隊並びに民兵組織が軍事演習及び訓練を行い、民生用資源を徴用し又は臨時に管制措置をとる必要がある場合には、国務院及び中央軍事委員会の関連規定に従い執行する。

 

第十一章 宣伝教育

 

第六十条 各級人民政府は、国防動員の宣伝教育の準備を行い実施し、公民の国防意識及び法に従い国防義務を履行するという意識を強化しなければならない。関連する軍事機関は、国防動員の宣伝教育業務の遂行に協力しなければならない。

 

第六十一条 国家機関、社会団体、企業・事業体及び末端の大衆自治組織は、構成員が、必要な国防知識及び技能を学習し習熟できるようにしなければならない。

 

第六十二条 各級人民政府は、各種の宣伝媒体及び宣伝手段を利用して、公民に対し愛国主義及び革命英雄主義の宣伝教育を行い、公民の愛国の熱意を呼び起こし、公民の積極的な参戦及び前線支援を鼓舞し、多様な方法により軍の支持、軍人の家族の優遇及び慰問活動を行い、国の関連する規定に従い、軍人の補償優遇業務を遂行しなければならない。
2 報道出版、ラジオ・映画・テレビ及びネットワークメディア等の組織は、国防動員の要求に基づき、宣伝教育及び関連業務を遂行しなければならない。

 

第十二章 特別措置

 

第六十三条 国が国防動員の実施を決定した後には、必要に基づき、法に従い、国防動員を実施する区域内で次に掲げる特別措置を採ることができる。
 一 金融、交通運輸、郵政、電信、報道・出版、ラジオ・映画・テレビ、情報ネットワーク、エネルギー及び水資源の供給、医薬衛生、食品及び食糧の供給、商業貿易等の業種に対し管制を敷くこと。
 二 人の活動する区域、時間及び方式並びに物資及び運送手段の出入する区域について、必要な制限を課すること。
 三 国家機関、社会団体及び企業・事業体において特殊な業務制度を行うこと。
 四 武装組織のために、優先的に各種の交通を保障すること。
 五 その他必要な特別措置

 

第六十四条 全国又は一部の省、自治区若しくは直轄市において特別措置を実施する場合には、国務院及び中央軍事委員会が決定し、かつ、準備を行い実施する。省、自治区及び直轄市の範囲内の一部の地区で特別措置を実施する場合には、国務院及び中央軍事委員会がこれを決定し、特別措置実施区域内の省、自治区及び直轄市の人民政府及びこれと同級の軍事機関が準備を行い実施する。

 

第六十五条 特別措置を準備し実施する機関は、所定の権限、区域及び期限の範囲内で特別措置を実施しなければならない。特別措置実施区域内の公民及び組織は、特別措置を準備し実施する機関の管理に従わなければならない。

 

第六十六条 特別措置の実施が必要でなくなったときには、遅滞なく中止しなければならない。

 

第六十七条 国が動員令を公布したために、訴訟、行政不服審査及び仲裁活動が正常に行われない場合には、関連する時効の停止及び手続中止の規定を適用する。ただし、法律に別段の定めがある場合を除く。

 

第十三章 法的責任

 

第六十八条 公民が次に掲げる行為のいずれかをした場合には、県級人民政府は、期限内に是正を命ずる。期限を過ぎても是正されない場合には、強制的に義務を履行させるものとする。
 一 現役部隊に予備編入され、又は予備役部隊に編入された予備役要員及び召集予定のその他の予備役要員が、予備役登録地を一ヵ月以上離れ、予備役登録した兵役機関に報告を行っていない場合
 二 国が国防動員の実施を決定した後に、召集予定の予備役要員が予備役登録をした兵役機関の許可を得ずに予備役登録地を離れた場合、兵役機関の要求に応じて遅滞なく戻らなかった場合、又は指定地点に出頭しなかった場合
 三 召集を拒絶し若しくは忌避し、又は国防勤務を拒絶し若しくは忌避した場合
 四 民生用資源の徴用を拒絶し若しくは遅らせ、又は徴用される民生用資源の改造を妨害した場合
 五 国防動員業務の秩序を妨害し、若しくは破壊し、又は国防動員業務に従事する要員が法に従い職務を履行するのを妨害した場合

 

第六十九条 企業・事業体が次に掲げる行為のいずれかをした場合には、関係する人民政府は、期限を決めて是正を命ずる。期限を過ぎても是正されない場合には、強制的に義務を履行させ、かつ、過料に処するものとする。
 一 建設を請け負った国防要求を満たす建設プロジェクトにおいて、国防要求、技術規範及び標準に従った設計、施工及び生産を行わなかった場合
 二 管理の瑕疵により戦略備蓄物資を紛失し、若しくは損壊し、又は戦力物資の徴用に従わない場合
 三 生産品目の変更、軍需品の拡大生産及び維持補修保障任務の要求に反し、軍需品の科学技術研究、生産及び維持補修保障の能力の整備を行わなかった場合、又は規定に反し専門の技術部隊を組織しなかった場合
 四 専門保障任務の執行を拒絶し、又は遅延させた場合
 五 軍からの商品の発注を拒絶し、又は故意に遅らせた場合
 六 民生用資源の徴用を拒絶し、若しくは遅らせ、又は徴用された民生用資源の改造を妨害した場合
 七 公民が召集に応じること及び国防勤務義務を担うことを妨害した場合

 

第七十条 次に掲げる行為のいずれかがあった場合には、直接責任を負う主管者その他の直接責任者を、法に従い処分する。
 一 上級機関から下された国防動員命令を執行しようとしない場合
 二 職権濫用又は職務怠慢により国防動員業務に重大な損失を与えた場合
 三 徴用される民生用資源に対し、登記及び証書の発行を行わなかった場合、規定に反する使用により重大な損壊を生じさせた場合又は規定に従い返還若しくは補償を行わなかった場合
 四 国防動員に関する秘密を漏えいした場合
 五 国防動員の経費及び物資を横領し、又は流用した場合
 六 職権を濫用し、公民又は組織の合法的な権益を侵害し、損なった場合

 

第七十一条 この法律の規定に違反し、治安管理に違反する行為を構成する場合には、法に従い、治安管理処罰を与える。犯罪を構成する場合には、法に従い刑事責任を追及する。
 訳者注:治安管理処罰とは、公安機関が「中華人民共和国治安管理処罰法」により、公共の秩序を乱し、安全を妨害し、人身の権利を侵害する等社会に対し危害をもたらす行為を行った者に対し科する処罰。刑法の規定によれば犯罪となるが、刑事処罰には至らない場合に科するとされる。

 

第十四章 附則

 

第七十二条 この法律は二〇一〇年七月一日から施行する。

 

出典:

宮尾恵美『中国国防動員法の制定』(国立国会図書館調査及び立法考査局『外国の立法』第246号、2020年12月)

 

反国家分裂法
二〇〇五年三月十四日公布

 

第一条 「台独」分裂勢力(「台湾独立」を目指す分裂勢力)が国家を分裂させるのに反対し、これを阻止し、祖国平和統一を促進し、台湾海峡地域の平和・安定を守り、国家の主権及び領土保全を守り、中華民族の根本的利益を守るため、憲法に基づいて、この法律を制定する。

 

第二条 世界に中国は一つしかなく、大陸と台湾は同じ一つの中国に属しており、中国の主権及び領土保全を分割することは許されない。国家の主権及び領土保全を守ることは、台湾同胞を含む全中国人民の共同の義務である。
 台湾は中国の一部である。国は「台独」分裂勢力がいかなる名目、いかなる方式で台湾を中国から切り離すことも絶対に許さない。

 

第三条 台湾問題は中国の内戦によって残された問題である。
 台湾問題を解決し、祖国の統一を実現することは、中国の内部問題であり、いかなる外国勢力の干渉も受けない。

 

第四条 祖国統一の大業を達成することは、台湾同胞を含む全中国人民の神聖な責務である。

 

第五条 一つの中国の原則を堅持することは、祖国平和統一実現の基礎である。
 祖国統一の平和的方式による実現は、台湾海峡両岸同胞の根本的利益に最も合致する。国は最大の誠意をもち、最大の努力を払って、平和統一を実現する。
 国家の平和統一後、台湾は大陸と異なる制度をとり、高度の自治を行うことが出来る。

 

第六条 国は次の各号に掲げる措置を講じて、台湾海峡地域の平和・安定を守り、両岸関係を発展させる。
1 両岸の人的往来を奨励、推進し、理解を増進し、相互信頼を強める。
2 両岸の経済交流と協力を奨励、推進し直接通信・通航・通商によって、両岸の経済関係を密接にし、相互利益・互恵をはかる。
3 両岸の教育、科学技術、文化、衛生、スポーツ交流を奨励、推進し、中華文化の優れた伝統を共同で発揚する。
4 両岸の犯罪共同取り締まりを奨励し、推進する。
5 台湾海峡地域の平和・安定の維持および両岸関係の発展に有益なその他の活動を奨励し、推進する。
 国は法によって台湾同胞の権利及び利益を保護する。

 

第七条 国は台湾海峡両岸の平等な話し合いと交渉によって、平和統一を実現することを主張する。話し合いと交渉はしかるべき段取りを追い、いくつかの段階に分けて行うことができ、方式は柔軟多様であってよい。
 台湾海峡両岸は次の各号に掲げる事項について話し合いと交渉を行うことが出来る。
1 両岸の敵対状態を正式に終結させること
2 両岸関係を発展させる計画
3 平和統一の段取りと進め方
4 台湾当局の政治的地位
5 その地位にふさわしい台湾地区の国際的な活動空間
6 平和統一に関連するその他のあらゆる問題

 

第八条 「台独」分裂勢力がいかなる名目、いかなる方式であれ台湾を中国から切り離す事実をつくり、台湾の中国からの分離をもたらしかねない重大な事変が発生し、または平和統一の可能性が完全に失われたとき、国は非平和的方式その他必要な措置を講じて、国家の主権と領土保全を守ることが出来る。
 前項の規定によって非平和的方式その他必要な措置を講じるときは、国務院、中央軍事委員会がそれを決定し、実施に移すとともに、遅滞なく全国人民代表大会常務委員会に報告する。

 

第九条 この法律の規定によって非平和的方式その他必要な措置を講じかつ実施に移す際、国は最大の可能性を尽くして台湾の民間人及び台湾にいる外国人の生命・財産その他の正当な権益を保護し、損失を減らすようにする。同時に、国は中国の他の地区における台湾同胞の権益と利益を法によって保護する。

 

第十条 この法律は公布の日から施行する。

 

出典:

中華人民共和国駐日本国大使館『反国家分裂法(全文)』

 

中国最高裁判所による『中華人民共和国民事訴訟法』の執行手続の適用に関する若干の問題についての解釈
二〇〇八年九月八日、最高裁判所の審判委員会第一四五二回会議で採択)法釈(二〇〇八)第一三号

二〇〇八年一一月三日に公布、二〇〇九年一月一日より実施

 

 有効な法律文書を法により適時的に執行し、当事者の合法的な権益を守るために、二〇〇七年一〇月改正の『中華人民共和国民事訴訟法(以下、「民事訴訟法」という)』及び裁判所の執行実務に基づき、執行手続における法律の適用に関する若干の問題に対し、以下の通りに解釈する。

 

第一条 執行申立人が被執行財産の所在地の裁判所に執行を申し立てる場合、当該裁判所の管轄区に財産執行があることを証明できる証拠を提出しなければならない。

 

第二条 二つ以上の裁判所が何れも管轄権を有する事件に対し、裁判所は立件する前に、管轄権を有するその他の裁判所が既に立件したことを知りえた場合は、重複立件をしてはならない。
2 立件した後、管轄権を有するその他の裁判所が既に立件したことを知りえた場合は、立件を取り消さなければならない。既に、執行措置を取った場合には、執行された財産を先に立件した裁判所に移送しなければならない。

 

第三条 裁判所が申立を受理した後、当事者が管轄権につき異議を有する場合には、執行通達書の受領日より十日以内に提出しなければならない。
2 裁判所は、当事者が申立てた異議に対し、審査を行わなければならない。異議申立が成立する場合には、事件執行を取り消し、且つ当事者に管轄権を有する裁判所に執行を申立てるよう告知すると共に、異議申立が成立しない場合には、却下裁定をする。当事者が裁定を不服とする場合には、上級裁判所に再審を請求することができる。
3 管轄権の異議申立に対する審査及び再審期間には、執行を停止しない。

 

第四条 裁判所が財産保全措置を取る事件に対し、執行申立人が財産保全措置を取る裁判所以外の、管轄権を有するその他の裁判所に執行を申立てた場合、財産保全措置を取る裁判所は、保全する財産を執行裁判所に移送して処理する。

 

第五条 執行過程において、当事者又は利害関係者は、執行裁判所の執行行為が法律規定に違反すると認めた場合、民事訴訟法第二百二条の規定に基づき、異議を申立てることができる。
2 執行裁判所は、執行異議申立を審査、処理する場合、書面による異議申立を受け取った後十五日以内に裁定を行なわなければならない。

 

第六条 当事者又は利害関係者が民事訴訟法第二百二条の規定に基づき再審を請求する場合、書面による形式を取らなければならない。

 

第七条 当事者又は利害関係者の再審を請求する書面資料は、執行裁判所を通して提出ことができ、直接執行裁判所の上級裁判所に提出することもできる。
2 執行裁判所は、再審請求を受け取った後五日以内に再審に必要な事件書類を上級裁判所に提出しなければならない。上級裁判所は、再審請求を受け取った後、執行裁判所に五日以内に再審に必要な書類を提出するよう通達しなければならない。

 

第八条 上級裁判所は、当事者又は利害関係者の再審請求に対し、合議体を構成し、審査を行なわなければならない。

 

第九条 当事者又は利害関係者が民事訴訟法第二百二条の規定に基づいて再審を申立てた場合、上級裁判所は、再審請求を受け取った日より三十日以内に審査を終了し、且つ裁定を下さなければならない。特別な理由により延長する必要がある場合、本裁判所官長の許可を経て延長することができるが、延長期間は三十日を越えてはならない。

 

第十条 執行異議申立の審査及び再審期間には、執行を停止しない。
2 被執行人又は利害関係者が関連処分措置の停止を請求するために、十分で且つ有効な担保を提供した場合、裁判所は許可することができるが、執行申立人が十分で且つ有効な担保を提出し、引き続き執行を請求する場合には、引き続き執行しなければならない。

 

第十一条 民事訴訟法第二百三条の規定に基づき、下記状況のいずれかに当たる場合、上級裁判所は、執行申立人の申立に基づき、執行裁判所に指定期限内の執行、又は執行裁判所の変更を命じなければならない。
 一 債権者の執行申立時において、被執行人が執行できる財産を有する場合、執行裁判所が執行申立書を受け取った日より六ヵ月を越えても、当該財産に対する執行を完了していない。
 二 執行過程において、被執行人の執行できる財産を見つけたが、執行裁判所が同財産の発見日より六ヵ月を越えても、同財産に対し執行を完了していない。
 三 法律文書に定められる行為義務の執行に対し、執行裁判所が執行申立書を受け取った日より六ヵ月を越えても、法による対応執行措置を取っていない。
 四 その他の執行条件を備えるのに、六ヵ月を越えても執行していない。

 

第十二条 上級裁判所が民事訴訟法第二百三条の規定に基づき、執行裁判所に指定期限内での執行を命じる場合、督促執行命令を発し、且つ関連情報を執行申立人に書面による方式で通達しなければならない。
2 上級裁判所が自ら執行する、又は本管轄区のその他の裁判所に命じて執行する場合、裁定を下し、当事者に送達し、且つ関連裁判所に通達しなければならない。

 

第十三条 上級裁判所が執行裁判所に指定期限内に執行するよう命じる場合、執行裁判所が指定期限内に正当な理由もなく依然として執行を完了しない場合、上級裁判所は自ら裁定を下すか、又は本管轄区のその他裁判所が執行するよう裁定しなければならない。

 

第十四条 民事訴訟法の第二百三条に定められた六ヵ月の期間には、執行中の公告期間、鑑定評価期間、管轄争議処理期間、執行争議調停期間、暫定執行猶予期間及び執行中止期間を算入してはならない。

 

第十五条 非当事者(事件当事者以外の者)が執行標的に対し所有権を主張したり、又は執行標的の譲渡、交付を十分に阻止できる実体権利を有する場合、民事訴訟法第二百四条の規定に基づき、執行裁判所に執行異議を申立てることができる。

 

第十六条 非当事者の異議に対する審査期間において、裁判所は執行標的を処理することができない。
2 非当事者が裁判所に十分で且つ有効な担保を提供し、異議標的に対する封印、差押、凍結等の解除を請求する場合、裁判所は許可することができる。執行申立人が十分で且つ有効な担保を提供し、引き続き執行を請求する場合、引き続き執行しなければならない。
3 非当事者が担保を提供して、封印、差押、凍結を解除したことが誤りであって、当該標的を執行できない場合、裁判所は直接担保財産を執行することができる。執行申立人が担保を提供して、引き続き執行を請求することが誤りであって、相手側に損失をもたらした場合、賠償しなければならない。

 

第十七条 非当事者は、民事訴訟法の第二百四条の規定に基づいて訴訟を提起し、執行標的に対し実体権利を主張し、且つ標的に対し執行停止を請求した場合、執行申立人を被告と見なさなければならず、被執行人が非当事者の執行目標物に対する実体権利の主張に反対する場合、執行申立人及び被執行人を共同被告とする。

 

第十八条 非当事者が民事訴訟法第二百四条の規定に基づき、訴訟を提起する場合、執行裁判所が管轄する。

 

第十九条 非当事者が民事訴訟法第二百四条の規定に基づき、訴訟を提起する場合、執行裁判所は訴訟手続きに基づき審理を行う。審理を経て、理由が成立しない場合、その訴訟請求を却下する判決を下すが、理由が成立する場合には、非当事者の訴訟請求に基づき相応する判決を下す。

 

第二十条 非当事者が民事訴訟法第二百四条の規定に基づき、訴訟を提起する場合、訴訟期間には執行を停止しない。
2 非当事者の訴訟請求が明らかな理由を有し、又は十分で且つ有効な担保を提供して執行停止を請求する場合、執行標的に対する処分を停止することができる。申立人が十分で且つ有効な担保を提供し、引き続き執行を請求する場合、引き続き執行しなければならない。
3 非当事者が執行停止、封印、差押、凍結を請求したこと、又は執行申立人が引き続き執行を請求したことが誤りであって、非当事者に損失をもたらした場合、賠償しなければならない。

 

第二十一条 執行申立人が民事訴訟法第二百四条の規定に基づき、訴訟を提起し、執行標的に対する執行許可を請求する場合、非当事者を被告としなければならない。被執行人が執行申立人の請求に異議がある場合、非当事者及び被執行人を共同被告としなければならない。

 

第二十二条 申立人が民事訴訟法第二百四条の規定に基づき訴訟を提起する場合、執行裁判所が管轄する。

 

第二十三条 裁判所が民事訴訟法第二百四条の規定に基づき、異議標的の執行を中止した後、申立者が裁定の送達日より十五日以内に提訴しない場合、裁判所は既に取った執行措置への解除裁定を下さなければならない。

 

第二十四条 執行申立人が民事訴訟法第二百四条の規定に基づき訴訟を提起した場合、執行裁判所は訴訟手続きに基づき審理を行なわなければならない。審理を経て、理由が成立しない場合、その訴訟請求を却下する判決を下すが、理由が成立する場合には、執行申立人の訴訟請求に基づき相応する裁判を下す。

 

第二十五条 複数の債権者が同一被執行人に対し執行を申立てたり、又は執行財産に対する分配への参加を申立てた場合、執行裁判所は財産分配方案を作成し、各債権人及び被執行人に送達しなければならない。債権者又は被執行人は分配方案に対し異議を申し立てる場合、当該分配方案の受領日より十五日以内に執行裁判所に書面による異議を提出しなければならない。

 

第二十六条 債権者又は被執行人が分配方案に対し書面による異議を申立てた場合、執行裁判所は異議を申立てていない債権者又は被執行人に通達しなければならない。
2 異議を申立てていない債権者、被執行人が通達を受け取った日より十五日以内に反対意見を提出しない場合、執行裁判所は異議申立人の意見に基づき、当該分配方案を審査、修正した上で分配する。反対意見を提出した場合、異議申立人に通達しなければならない。異議申立人は、通達の受領日より十五日以内に反対意見を提出した債権者、被執行人を被告として、執行裁判所に訴訟を提起することができる。異議申立人が期限を過ぎても訴訟を提起しない場合、執行裁判所は元の分配方案に基づき分配を行う。
3 訴訟期間において分配した場合、執行裁判所は争議債権金額に相当する金銭を供託しなければならない。

 

第二十七条 執行申立の時効期間の最後の六ヵ月以内に不可抗力又は其の他の障碍により請求権を行使できない場合、執行申立時効期間が停止する。時効中止の事由が解消された日より執行申立の時効期間は継続して計算される。

 

第二十八条 執行申立時効が執行申立、当事者双方が和解協議に達したこと、当事者の一方が履行要求を提出すること、又は履行義務に同意したことにより中断された場合、中断された時点より執行申立の時効期間が改めて起算される。

 

第二十九条 有効な法律文書の規定に基づき、債務者が不作為義務を負う場合、執行申立の時効期間は、債務者が不作為義務に違反した日より起算する。

 

第三十条 執行人が民事訴訟法第二百十六条の規定に基づき、直ちに強制執行措置を取った場合、同時に又は強制執行措置を取った日より三日以内に執行通達書を発行しなければならない。

 

第三十一条 裁判所が民事訴訟法第二百十七条の規定に基づき、被執行人に財産状況に関する報告を命じる場合、財産報告命令を発しなければならない。財産報告命令には、財産報告の範囲、財産報告期間、報告拒否又は虚偽報告による法的結果などを記入しなければならない。

 

第三十二条 被執行者は、民事訴訟法第二百十七条の規定に基づき、書面により下記の財産状況を報告しなければならない。
 一 収入、銀行貯金、現金、有価証券
 二 土地使用権、家屋などの不動産
 三 交通運輸工具、機械設備、製品、原材料などの動産
 四 債権、株主の権利、投資権益、基金、知的財産権などの財産化した権利
 五 その他の報告すべき財産
2 執行通達の受領日の一年前よりその時点までの間に、被執行人の財産状況に変動が発生した場合、変動状況について報告しなければならない。被執行人が財産報告期間に全部の債務を履行した場合、裁判所は報告手続きの終結を裁定しなければならない。

 

第三十三条 被執行者が財産状況を報告したあと、その財産状況に変動が生じて、執行申立人の債権履行に影響を与える場合、財産状況の変動日より十日以内に裁判所に補充報告しなければならない。

 

第三十四条 被執行人の報告した財産状況に対し、執行申立人が問合せ請求をした場合、裁判所は許可しなければならない。執行申立人は、問い合わせた被執行人の財産状況に対し秘密保持しなければならない。

 

第三十五条 被執行人が報告した財産状況に対し、執行裁判所は執行申立人の申立て、又は職権により調査・実証することができる。

 

第三十六条 民事訴訟法第二百三十一条の規定に基づき、被執行人に対し出国を制限する場合、執行申立人が執行裁判所に書面による申請書を提出しなければならない。執行裁判所は必要に応じて職権により決定することができる。

 

第三十七条 被執行人が法人である場合、その法定代表者、主要責任者又は債務履行に影響を与える直接責任者に対し出国を制限するすることができる。
2 被執行人が民事行為能力を有しない人、又は民事行為能力を制限された人である場合、その法定代表者に対し出国を制限することができる。

 

第三十八条 出国制限期間において、被執行人が法律文書に定められた全債務を履行した場合、執行裁判所は直ちに出国制限措置を解除しなければならない。被執行人が十分で且つ有効な担保を提供したり、又は執行申立人の同意を得た場合、出国制限措置を解除することができる。

 

第三十九条 民事訴訟法第二百三十一条の規定に基づき、執行裁判所は職権又は執行申立人の申立により、被執行人が法律文書に定められた義務を履行していない情報を新聞、放送、テレビ、インターネットなどのメディアを通して公布することができる。
2 メディアに公布する費用は、被執行人が負担する。執行申立人はメディアにおける公布を申請する場合、関連費用を立て替えなえればならない。

 

第四十条 本解釈実施前に本院の公布した司法解釈が本解釈と一致しない場合、本解釈を基準とする。

 

出典:北京林達劉知識産権代理事務所『中国最高裁判所による『中華人民共和国民事訴訟法』の執行手続の適用に関する 若干の問題についての解釈』(2018年11月10日)

 

日本史

世界史

政治

 
青木幹雄氏の影響
 そんな茂木氏にも「悩みのタネ」があるという。会長を務める自分の派閥(平成研)をまとめ切れていないのだ。

 「いまだ平成研に隠然たる影響力を誇る青木幹雄元官房長官(88歳)が茂木氏をまったく認めてないんです。茂木氏からの面会要請も青木氏サイドが断り続けていると聞いています」(前出・記者)
 青木氏としては、目をかけてきた加藤勝信前官房長官(66歳)や小渕優子元経産相(48歳)に派閥を託したいのだという。
 「当の茂木氏は安倍、麻生の両氏が次期総裁として推してくれるなら平成研に頼る必要はないと開き直っているようです。参院選後に青木氏のシンパを切り捨てて平成研を割って出て、さらに安倍派か麻生派に合流することもありえますよ」(自民党中堅議員)

 

出典:

週刊現代『安倍と麻生にお追従 我が世の春を謳歌する茂木幹事長の「悩み」』(2022年6月11日)

 

自由民主党三多摩支部連合会青年部
部長 幹事長 在職期間
初代 井口 秀男 三田 敏哉 昭和44年6月1日〜昭和51年9月4日
2代 三田 敏哉 佐藤 光平 昭和51年9月4日〜昭和53年11月25日
3代 福島 佐一 佐藤 光平 昭和53年11月25日〜昭和55年2月2日
4代 佐藤 光平 宮ア 章 昭和55年2月2日〜昭和55年12月21日
5代 黒須 隆一 小町 國市 昭和55年12月21日〜昭和57年12月18日
6代 小町 國市 寺本 亮洞 昭和57年12月18日〜昭和59年2月8日
7代 清水 庄平 馬場 弘融 昭和59年2月8日〜昭和60年11月22日
8代 山田 忠昭 古賀 俊昭 昭和60年11月22日〜昭和62年12月12日
9代 小礒 明 小川 春男

荒井 秀敏

昭和62年12月12日〜平成2年3月10日
10代 高橋 徹 小峰 和美 平成2年3月10日〜平成4年2月29日
11代 吉野 和之 村木 英幸 平成4年2月29日〜平成6年3月5日
12代 1村木 英幸 青木 健 平成6年3月5日〜平成8年4月27日
13代 青木 健 渡部 尚 平成8年4月27日〜平成10年3月14日
14代 萩生田 光一 東 亨 平成10年3月14日〜平成12年3月11日
15代 東 亨 栗山 欽行 平成12年3月11日〜平成14年3月16日
16代 小美濃 安弘 清水 孝治 平成14年3月16日〜平成16年4月3日
17代 清水 孝治 滝沢 景一 平成16年4月3日〜平成18年3月4日
18代 島崎 義司 伊藤 祥広 平成18年3月4日〜平成20年3月1日
19代 伊藤 祥広 並木 克巳 平成20年3月1日〜平成22年3月13日
20代 並木 克巳 松嶋 寿延

山ア 勝

平成22年3月13日〜平成24年3月9日
21代 山ア 勝 木原 宏 平成24年3月9日〜平成26年3月1日
22代 木原 宏 鈴木 玲央 平成26年3月1日〜平成28年3月5日
23代 鈴木 玲央 古賀 壮志 平成28年3月5日〜平成30年3月3日
24代 古賀 壮志 馬場 貴大 平成30年3月3日〜令和2年3月7日
25代 馬場 貴大 本橋 巧 令和2年3月7日〜令和4年3月5日
26代 本橋 巧 令和4年3月5日〜 現在
 

官僚

 

財務省

田中 一穂氏経歴
役職
昭和54(1979)年 東京大学法学部卒業

大蔵省(現財務省)入省

平成18(2006)年 内閣総理大臣秘書官(第1次安倍内閣)
平成22(2010)年 国税庁次長
平成23(2011)年 財務省理財局長
平成24(2012)年 財務省主税局長
平成26(2014)年 財務省主計局長
平成27(2015)年 財務省財務事務次官
平成28(2016)年 退官
 

経済

経営

 
グローバルリスク
「グローバルリスク」は、発生した場合、今後10年以内に国もしくは産業に重大な悪影響を及ぼす可能性がある、不確定の事象もしくは条件(因子)と定義されている。

 

・経済
主要経済国の資産バブルの崩壊
 実体経済から大きく乖離した主要経済国の住宅、投資ファンド、株式およびその他の資産価格の崩落
国際的に重要な産業や企業の崩壊
 世界経済や金融市場、社会に対して影響のある国際的に重要な産業もしくは企業の崩壊
主要経済国の累積債務危機
 主要経済国の債務の累積や債務返済により企業財務もしくは政府財政またはその両方が課題となり、その結果としての大規模な破産、債務不履行、債務超過、流動性危機もしくは公的債務危機
物価の不安定化
 経済およびサービスにおける価格水準の管理困難な上昇(インフレ)もしくは下落(デフレ)
不法な取引や経済活動の蔓延
 偽造、違法な資金移動、違法取引、脱税、人身売買、組織犯罪など、経済の進展および成長を損なう非公式もしくは違法な活動の国際的な拡大
長期化する経済停滞
 長年にわたる、ゼロに近いもしくは低水準の世界成長
極端なコモディティ・ショック
 化学物質、排出物、エネルギー、食糧、金属、鉱物などの、企業や公的機関、家庭の予算を損なうシステム上の重要なコモディティの需給に対する世界規模での影響環

 

・環境
生物多様性の喪失や生態系の崩壊
 種の絶滅や減少の結果としての環境、人類および経済活動に関する不可逆的な影響や自然資本の恒久的な破壊
気候変動への適応(あるいは対応)の失敗
 政府や企業が効果的な気候変動適応および緩和策の実行、立法化もしくは投資、生態系の保護、国民の保護、カーボンニュートラルな経済への移行を行えない状況
異常気象
 極端な寒波、熱波、台風、自然火災、洪水、などの異常気象による世界規模での人命喪失、生態系被害、住居破壊、経済的損失など
人為的な環境被害や災害
 人間の活動の結果としての人命喪失や経済的損失、動物生態系との共存の失敗(保護区の規制緩和)、産業事故、石油流出、放射能汚染、野生生物の取引など
大規模な地球物理学的災害
 地震、地滑り、磁気嵐、津波、火山活動などの地球物理学的災害による人命喪失や経済的損失、生態系の被害
天然資源危機
 重要な天然資源に対する人間の乱開発や管理の失敗によって起こる世界規模での化学製品、食料、鉱物、水もしくはその他の天然資源の危機(P100)

 

・地政学
国際機関の崩壊
 国境紛争、環境へのコミットメント、移民危機、健康危機、貿易紛争などの地域的もしくは世界的影響を及ぼす経済、環境、地政学、人道主義の危機を解決するために設立された国際機関の崩壊や解体
国家間の関係悪化または破砕
 経済や政治、テクノロジーの対立による二国間関係の断絶や緊張の悪化
戦略資源の政治利用
 地政学的な優位性を高めるために、人類の発展に重要な財、知識、サービスもしくはテクノロジーを国家などに集中させ、搾取や移動の制限をすること
国家間の紛争
 生物的・化学的・物理的な攻撃、サイバー攻撃、軍事介入、代理戦争など国際的に影響のある二国間もしくは多国間の攻撃的な紛争
国家の崩壊
 地政学上重要な国家の崩壊。国内紛争、法の支配の崩壊、組織の腐敗、軍事クーデター、地域的、国際的な不安定化
テロ攻撃
 イデオロギー、政治または宗教上の目的を持つ個人もしくは非国家グループによる大規模、散発的あるいは単独のテロ攻撃において生命の喪失や重傷、重大な物的損害をもたらすもの
大量破壊兵器
 生物兵器、化学兵器、サイバー兵器、核兵器および放射性物質兵器の配備による生命の喪失や破壊、国際的な危機

 

・社会
社会保障制度の崩壊もしくは欠如
 障碍給付、高齢者給付、福利厚生、傷害給付、出産給付、医療給付、疾病手当、遺族給付、失業給付などの社会保障制度の不在または広範な破綻、社会保障給付の減額
雇用および生活破綻(生活苦)の危機
 失業、不完全雇用、賃下げ、不安定な契約、労働者の権利の悪化などの、仕事の見通しや生産年齢人口の水準の構造的悪化
社会的結束の侵食
 社会の安定、個人の幸福や経済的生産性に悪影響を与える社会資本の喪失、および社会ネットワークの亀裂による国民の怒り、不信、不和、共感の欠如、少数派の無視、政治的二極化など
公的インフラ計画の失敗
 都市開発の誤った管理や不十分な計画立案、投資不足による不公平もしくは不十分な公的インフラおよびサービスが、経済の進展、教育、家庭、公衆衛生、社会的包摂性および環境に悪影響を与える
感染症の広がり
 ウィルス、寄生体、菌類またはバクテリアの大規模で急速な蔓延で、感染病の広がりを抑制できず、生命の喪失や経済的な混乱を伴うエピデミックもしくはパンデミック
大規模な非自発的移住
 気候変動、差別、経済的な進歩の欠如、迫害、自然災害、人為的災害、暴力的な紛争などに誘発された大規模な非自発的移住
科学への反発の広がり
 地球規模での科学的証拠や科学界に対する非難や否認、懐疑により起こる、気候変動対策や人類の健康、技術革新の後退もしくは停滞
著しいメンタルヘルスの悪化
 幸福、社会の結束および生産性に悪影響を及ぼす、不安神経症、認知症、鬱病、孤独、ストレスなどの世界的な複数の年齢層にわたるメンタルの病気や障害の蔓延
広がる若者の幻滅感・虚脱感
 社会の安定や個人の幸福、経済的生産性に悪影響を与える若者の自信の低下や欠如、既存の世界経済、政治および社会構造への信頼の喪失(P111)

 

・テクノロジー
テクノロジー進歩による悪影響
 AI、ブレイン・コンピュータ・インターフェース、バイオテクノロジー、地球工学、量子計算など、技術の進歩により、意図してまたは意図せずして与えられる個人、企業、生態系、経済への悪影響
重要情報インフラとネットワークの機能停止
 サイバーネットワークやテクノロジーへの体系的な依存の結果として起こる、AI重視のシステム、インターネット、携帯端末、公的サービス、衛星などの重要な物理的およびデジタルのインフラやサービスの悪化、飽和もしくは機能停止
デジタル格差
 不平等な投資力、デジタルスキルの欠如、政府の規制や、購買力の不足、文化の違いなどにより重要なデジタルネットワークや技術へのアクセスが、国の内外で分断されることで生じる不平等
デジタルパワーの集中
 裁量的な価格設定や公平な監視の欠如、不平等な私的・公的アクセスなどによって、重要なデジタル資産、能力、知識が少数の個人、企業、または国家に偏る
サイバーセキュリティ対策の失敗
 企業、政府および家庭のサイバーセキュリティ・インフラもしくはサイバーセキュリティ措置が、非常に高度で頻繁なサイバー犯罪に対する対策の遅れによって起こる経済的な混乱、経済的な喪失、地政学的な緊張もしくは社会の不安定
テクノロジー統治の失敗
 異なる国もしくは政府間で互換性のないデジタル・インフラやプロトコル、基準を採用した結果として起こる、重要なデジタルネットワークおよびテクノロジーの利用に関する国際的な枠組み、制度、規制の崩壊

 

出典:世界経済フォーラム『第16回グローバルリスク報告書2021年版(2021年1月19日)

 

イノベーションとは
 日本人にはイノベーションに対する5つの誤解があります。第一に、イノベーションを外発的なものとしていること。第二に、シュンペーターの説く「新結合」を新しいもの同士の結合と捉えていること。第三に、技術革新と思い込んでいること。第四に、イノベーションの起こす方法として「両利きの経営」を盲信していること。第五に、無から有を生み出す、つまり「0→1」だけをイノベーションと考えている、ことです。

 

出典:ダイヤモンド社『日本企業を救うシュンペーター理論、イノベーションの本質は「スケール」にある』(2022年7月26日)

 イノベーションはMake(新規)でもRemake(模倣)でもなく、Remix(編集)によって起きます。

 

 多くの企業が、ないものねだりのアイデア出しに一生懸命になっていますが、今あるものの組み合わせで良いのです。新しいアイデアなどよりも、むしろ、企業の中で培われてきた強みの方がはるかに良い。順列・組み合わせの方程式に当てはめれば、その組み合わせはいくらでもあるし、そこにデジタルを加えれば無数に増えます。

 

出典:ダイヤモンド社『日本企業を救うシュンペーター理論、イノベーションの本質は「スケール」にある』(2022年7月26日)

 

マズローの5段階説がアメリカ人向けに作られた
お金以外の動機付けを社長に説明するための作図

 ある文化の中では、地位は自己実現より重要です。一方、多くの文化では、愛情や、所属することそのものが地位や自己実現より重要です。マズローの5段階ピラミッドは彼が作ったのではなく、他の人がその理論をピラミッドにしたものですが、これは60年代の米国企業に対する特定の見方を象徴していただけなのです。

 

 米国では当時、組織がこのように形成されていました。一番上にいるのは自己実現した上司です、その下にピラミッドがあります。しかし今では、多くの組織がその形態から脱却しようとしており、指揮命令系統のピラミッド階層をむしろ持たないようにしています。

 

出典:日経ビジネス『テイラー、マズロー… 米国発経営学の「常識」を疑う』(2022年7月25日)

 

北尾吉孝氏
孫正義氏の「在日韓国人の意識」
北尾は、ソフトバンクに入社してからすぐに孫から言われた。

 

「住友銀行だけは、付き合わないでください」

 

北尾が、その理由を訊ねると、意外な答えが返ってきた。

 

「ある支店の支店長に、それも2代にわたって、『在日の韓国人とは付き合えない』と言われたことがある。そのようなことをいう企業は、企業風土としておかしい」

 

孫にしては、めずらしく感情的な答えであった。

 

北尾は言った。

 

「何を言っているんですか。僕は、日本の銀行でも、最も住友銀行を評価しています。たった1人や2人の支店長がそう言ったからといって、すべてを否定するのはおかしいですよ。そういうところと付き合えないのなら、日本一だとか、世界一になるなんて言うのは、やめたほうがいいですよ」

 

北尾には意外だった。

 

〈孫さんが、これほど強く自分が在日だと意識しているとは思わなかった〉

 

その翌日、孫が北尾に言った。

 

「北やん、住友銀行のしかるべき人に会いたい」

 

意固地にならず、考え直したのだ。これは孫の長所だった。

 

北尾は答えた。

 

「ああ、お安いご用ですよ」

 

その生い立ちが、孫正義という人物の強さにつながっていることは北尾も理解していた。しかし、あまりにもそのことに囚われ過ぎると、未来がなくなってしまうと思ったからである。そのことを、孫も理解してくれたにちがいない。

 

北尾はすぐ当時住友銀行の営業部門のトップであった専務に電話してソフトバンクまで来てもらう手はずを整えた。

 

それからソフトバンクと住友銀行の付き合いが始まった。担当部店はソフトバンク本社から最寄りの人形町支店で、支店長は役員であったという。

 

出典:ZUU online『孫正義との運命の出会いから、ソフトバンクで頭角を現すまで。北尾吉孝、決断の日。』(2022年7月15日)

 

北尾吉孝氏の構想
北尾は、証券だけでなく、金融のあらゆる分野で、トップクラスの会社を傘下に有する金融コングロマリットを創り上げたいと考えていた。そのためには、ネットを通じた金融業は、証券業だけでなく、銀行業、保険業にも進出しない限り、事業として完結しない。

 

北尾は、自分が進出した事業が成功すればするほど、そうした思いが強くなっていった。ソフトバンク・ファイナンスの傘下で、ベンチャー投資、運用、証券業などを営む公開企業をいくつもかかえた総合金融グループを志向し成長するからには、時として、本体であるソフトバンクの意向にそえないこともある。

 

出典:ZUU online『窮地に追い込まれたフジテレビを救う! ホワイトナイトとしてホリエモンに挑む』(2022年7月16日)

 

SBIホールディングス株の売却と独立
SBIホールディングスが独立した経緯について、孫が今回あらためて語る。

 

「当時は、ネットバブルが弾けたあとに、平成13年(2001年)からYahoo!BBを始めて、数年は大赤字が続き、我々も会社としての体力、財力が一番衰えていた時でした。日本で一番大きな会社に戦いを挑むということは本当に無謀なことでしたから。でも、僕は日本の情報革命のためにはやるべきだと決断しました。自分の会社のためという次元を超えて、決めたわけです。ですが、その決断は、本来経営者として考えた場合、一番やってはいけないことなんです。経営者は何よりも会社を守らないといけません。

 

でも僕は、何十年に1回か、日本のため、そして、自分の生き様のために、そういう決断をしなきゃいけないこともあるんだと正当化して、挑戦しました。『Yahoo!BB』に挑戦してからは4年間も1,000億規模の赤字を続けました。苦しい戦いではありますが、僕なりに充実はしていました」

 

一方で、当時の北尾は、多くの投資家の資産を預かり、運用し、彼らの利益を守っていく立場であった。

 

「どれだけSBI証券が頑張っても、親会社の本体が大赤字だったわけですから。分離独立して事業と顧客を守らないといけないと考えて、北やん自身、苦しい選択を迫られたわけです。一番どん底の時は、ソフトバンクの時価総額が20兆円から2,000億円まで落ちました。1年間で、100分の1です。時価総額2,000億円の会社が年間1,000億円規模の赤字を出していたわけですから、よく生き延びたなと思います。そういう時期の話ですから、北やんから独立の話があった時には、僕は迷わずに『顧客を守ることを優先しないといけない』ということで、納得して受け入れました」

 

孫は、その代わり、1つだけ条件を出してきた。

 

「北やん、1カ月に1回、必ず一緒にメシを食ってくれないか。それで、おれの相談に乗ってくれないか」

 

出典:ZUU online『SBI、ソフトバンクから完全に独立した日。孫正義の意外な言葉とは』(2022年7月17日)

 

北尾氏と孫氏の投資スタンス
SBIグループでもAI分野にかなり投資しており、グループの事業に使えそうなものはどんどん取り入れている。当然、北尾と孫が同じAI関連企業に注目し、投資することもある。その場合はSBIが最初に投資し、孫が後から巨額を投じるパターンとなる。北尾はまだ十分に育っていないアーリーからミドルステージのベンチャー企業を中心に投資する。

 

一方、孫の場合は、もう少しで株式上場というステージ的にはかなり遅い時期を狙う。投資額が大きいので、成功確率が高いレイターステージを狙うのである。そして株式を公開して値段が上がったところで売りに出す。孫には一企業をじっくり育てていく時間がないため、売り時を見極めてパッと手放す。

 

出典:ZUU online『バブルは必ず弾ける 孫正義が予測する、AI革命の未来とは』(2022年7月18日)

 

北尾吉孝氏のSBIホールディングスの未来
北尾は、SBIホールディングスの今後についても考える。

 

「コンツェルンではないが、1つの生態系としては繁栄していければいいと思う。それは僕という人間がいてもいなくても、機能するような形をつくっていければ可能だと思っていて、それがこれからの課題です。組織というものは国であれ、企業であれ、ずっと続いていくことは難しい。どうやって1日でも長く存続していくのか。自己否定、自己変革、自己進化……。立ち止まることなく、この原則を繰り返していく以外にないと僕は言い続けています」

 

北尾はさらに語る。

 

「300年続く企業はなかなかありませんから、組織として中心となる基礎の考えは絶対に必要なんです。自己否定、自己変革、自己進化と常にアントレプレナーシップ(起業家精神)を持つこと。そして、それを持ち続けて、技術に対する信奉を忘れなければ、やっていけます。

 

僕は、そのための経営理念、思想を創り上げて、それをSBIホールディングスの遺伝子として次の世代に普遍的なものとして継承し続けていくことが重要だと思っています。自己否定、自己変革、自己進化、技術への徹底的な信奉も、普遍的なものと言えるでしょう。そういうものを考えて企業生態系という仕組みをつくってきたことが僕の創業者としての役割だったと言えるのではないでしょうか」

 

出典:ZUU online『SBI証券、口座数で野村證券を逆転……崩れる証券業界のガリバー』(2022年7月19日)

 

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