『雨宮氏か中曽氏か、次期日銀総裁に前倒し就任説』令和4(2022)年9月6日 日本経済新聞要点令和5(2023)年の金融政策決定会合の日程から次の日銀総裁は4月から前倒しされて3月に就任する説が流れている。現在の日銀正副総裁の任期満了時期にはズレが生じており、その理由が平成20(2008)年の国会同意人事が混乱したためである。黒田総裁の退任を早めて、日銀正副総裁の就任時期を揃えるために金融政策決定会合の時期を早めたと読める。日銀OBの予想によると「雨宮現副総裁の可能性が50%、中曽前副総裁が30%、その他が20%」。ただし確率に関しては異なる見方もある。岸田首相は7月の日銀審議委員人事においてリフレ派の片岡剛士氏の後任に非リフレ派と目される岡三証券の高田創氏を起用したため、次の総裁もリフレ派の起用は考えにくい。雨宮氏は昭和54(1979)年に日銀に入行した日本を代表する金融政策のアーキテクト(設計者)として、量的金融緩和(01年)、包括緩和(10年)、異次元緩和(13年)、マイナス金利(16年)、長短金利操作(16年)などの金融政策のイノベーションに関わった。政官界に太いパイプを持っていることから、国内人脈が豊富。中曽氏は昭和53(1978)年に日銀に入行し、課長時代が金融システム安定策の担当や、リーマンショック対応などで実績を積んだ危機管理の専門家である。国際決済銀行(BIS)市場委員会議長などの経験から、海外人脈が豊富。2人の人脈から財務省OBの起用が予想される副総裁人事にも影響し、雨宮氏が総裁なら、国際派である財務官経験者、中曽氏であれば、国内派である財務次官経験者の方がバランスが良い。日考塾の意見これまでの日銀総裁人事は、改正日本銀行法が施行された平成10(1998)年4月1日以前であれば、日銀出身者と旧大蔵省出身者が交互に総裁に就任する、いわゆる「たすき掛け人事」を行っていました。戦後になって14名が日銀総裁に就任しており、その内8名が日銀出身者、5名が財務省(旧大蔵省)出身者、1名がどちらの出身者でもありません。日銀出身者の場合、日銀に入行し、日銀理事まで経験した人が副総裁を経て総裁になります。とくに日銀企画局(総務局)が花形であり、金融政策に関する部署です。企画局の主軸ラインが、政策企画課長、企画局長、企画局担当理事となります。歴代日銀総裁の中で企画担当理事を担当した年数は、三重野康氏が4年、福井俊彦氏が5年、白川方明氏が4年と、通例1~2年から考えるとその倍以上は担当しています。今回の候補者である2名は、中曽宏氏が2年8ヶ月、雨宮正佳氏が通算7年です。財務省出身者は、財務事務次官経験者であり、その中でも「大物次官」とされる人が就任しています。大物次官とは、通例1年任期を2年以上の任期で担当した人のことです。ただし日銀総裁人事における例外が現在の黒田東彦氏であり、財務事務次官ではなく財務官経験者となります。日銀総裁人事は、「大蔵元老院」と呼ばれる財務省OBや、現役の財務事務次官などが関わるため、異例だった財務官経験者が日銀総裁になる可能性は狭まるといえるでしょう。副総裁になる可能性がある「大物次官」経験者は、細川興一氏、勝栄二郎氏、岡本薫明氏であり、1年任期ではあるものの消費税8%増税を実現させた木下康司氏も加わった4名です。この内、細川興一氏と勝栄二郎氏は5年任期を全うした後の日銀総裁が高齢になることから外れる可能性があります。その場合、岡本薫明氏と木下康司氏に絞られます。なお可能性は低い財務官経験者であれば、黒田東彦氏の流れを汲んだ人物として、アジア開発銀行総裁に就任した中尾武彦氏と現在の総裁である浅川雅嗣氏になるでしょう。どちらにせよ、令和5(2023)年3月は日銀の金融政策が転換するターニングポイントになる可能性が高く、岸田内閣が本当に日本の経済を回復させたいと望むか望まないかの試金石になるのが、日銀正副総裁人事になります。出典はこちら令和5(2023)年1月1日公開